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2010年2月25日 (木)

2010年きもの人財教育元年

きもの業界ほど「人材」を「人財」と考えなければいけない業種はないのではと思っている。厳しい市場の中で懸命に働く事で業界を護っている。
戦後のきもの業界は生き残るための手段として「フォーマルとしてのきもの」をビジネスモデルとして構築した。これは決して間違いではなく高度成長によって国民全体の所得が上がっていくなかで、日本独特のしきたりや儀式などからくる格調や品格などが再度見直されていくことからフォーマルきものというキーワードは間違いなく受け入れられた。これは当時の正しいマーケティング戦略である。「誰に」「何を」「どのように」がすべて当てはまっていた。まさに消費の変化への対応だ。しかしそれが今の今まで続いてしまった。バブル景気、過量販売などの甘い汁が存在し、変わる事が出来なかった。そして気がつくと売上もビジネス構造も壊れはて、次に繋ぐ人財が育ってないことに今気づいたのである。
1、呉服業界は人財教育こそ業績回復のカギと認識すべき
高度成長期におけるビジネスモデルを構築した先人達は今徐々に引退、または勇退をしつつある。今までの呉服業界を支えてきた功労者達だ。しかし、これから新しいビジネスモデルを構築するための人財が育てられていない。そもそも育てる場がないのだ。業界団体としては「日本きもの学会」と「全日本きもの振興会」がきもの教育の推進を行っている。内容としては各方面の専門家が講師を務める「きもの学」というカリキュラム。そしてきものの知識や文化を深める「きもの文化検定」。これらには全国のきものファンや学生がこぞって参加した。業界の各業種の人達も同じくだ。しかしきものというものの文化や知識を深めるには非常に良い機会である事は間違いないが、ビジネスとしてのきもの業界を学ぶにはあまりに足りない。きもの学の中でビジネスとして学べるものは約15科目ある中の1つか2つ。決してきもの学自体を批判する訳ではないが、本当の人財育成にはならない。
先人達が引退していくなかで次世代のビジネスモデルを生み出す人財教育は今年である2010年を元年とし、この10年間で多くの有望な人財を呉服業界に送り込む必要があると強く考える。

2、きもの学院や専門学校は就職率以上に定着率を目指せ。
世の中は不況によって失業者があぶれ、学生の就職活動は困難を極めている。まさに茨の道だ。ところが、意外にも呉服業界の就職率はその中では良い部類に入る。着付けが出来る、和裁士3〜4級の資格をもっている。きものコンサルタントの資格を持っている、など技能を持っていると小売や和裁関連、卸業などは歓迎してくれるのである。そしてもう1つの理由。「定着率の低さ」である。毎年きものが大好きできものを勉強したり、着付けを習得したり、和裁を習得したりした人達が小売や卸に入社して来る。その人達にとっては大好きなものに囲まれて幸せのはずが、商売という現実に遭遇する。小売で言えば売上目標、催事動員、場合によっては持ち回り。卸業は取引先営業、催事販売支援などなど。企業にとっては当たり前であるが、新入社員にとっては大好きなきもの、習得した着付や和裁に利潤追求組織の定説はすぐに結びつけられない。
もっと単純にいえば「大好きなきものを商材として見れない」のである。そして自分の目的と企業の目的とが一致しなくなる。これが低定着率の最大の要因である。
ツイッターで知り合ったきものを学ぶ学生は「就活中の生徒は自分に着物業界の知識がないことにとても焦りを感じています。自分が今後着物業界にどんな流れを期待しているのか…どんな勉強をすればいいのか、そういったことを教えていただきたいと思っている」とつぶやいた。
全国に多数あるきもの学院またはきもの専門学校の中で、業界への就職を目指すカリキュラムの中に「きものビジネス」や「マーケティング」が入っている学校は私の知る限り2校しか見当たらない。そのほとんどが着付けや和裁、きもの制作などの技能なのである。一方でアパレル関連の学校はそのほとんどにファッションビジネス論やマーケティング、VMDや生産管理、販売ロールプレイイングなどの社会に出てそのまま使えることをキチンと教えている。同じファッション教育でもここまで呉服とアパレルの教育に差があるのが現状だ。学校や学院、または高校などの服飾科などはきちんとしたきものビジネスやマーケティングを教育するカリキュラムを組み、就職率以上に定着率を目指すことで学校のロイヤルティを上げるべきである。

3、学生は呉服ビジネスと技能という2つの武器で次世代ビジネスの構築を!
今きものを学んでいる学生は着付、和裁、きものデザインなどの技能習得を全力で身につけることがまずは重要であり、学校にビジネスの科目がないのであれば、様々な情報収集をするべきである。各関連企業のHP、上場企業であればIR情報といった市場動向と会社業績を知る事が出来る。生の声を聞きたいならツイッターという場でその業界の人と140字のやりとりをすればいい。またはそういうブログを閲覧したりすることである程度の情報が得られる。その時に大切な事は考え方を偏らせないことだ。様々な意見をまとめた上での観点を持つ事が重要で、今の段階からこうでなくてはいけないと思い込まない事だ。
そして最も期待する事は、着付けができるなら新しい着方の可能性や和裁なら新しい縫製の可能性、デザインならこれからのきものというプロダクトのあり方などを市場分析や流通構造を深く理解する事で次世代型ビジネスモデルを構築できるはずである。それは誰もが出来る可能性があると断言出来る。だからこそ今学んでいる技能と呉服ビジネスやマーケティングという2つの武器を兼ね備えて欲しい。

本日のまとめ
1、 呉服業界は人財教育こそ業績回復のカギと認識すべき
2、 きもの学院や専門学校は就職率以上に定着率を目指せ
3、 学生は呉服ビジネスと技能という2つの武器で次世代ビジネスの構築を

フィンランドにおける税収改善のための国策は教育改革だった。教育のレベルアップは、労働意識の高まりを生み、企業の業績が上がる事で税収が増えるという長期計画であった。誰もが最初はあざ笑ったが見事税収は改善しつつありしかもフィンランドの教育レベルは世界トップクラスだ。
大不況による呉服市場の落ち込みは待った無しと言う方が大半だとは思うが、だからこそ各企業、団体、学校は次世代の人財の教育に力を入れ、夢の持てる呉服業界を作って欲しい。また私自身はそれをライフワークとし全力を注いでいきたいと強く思う。

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