« 小売業にとって最も重要で難関の店頭集客 | トップページ | 加賀友禅と小松の魔法使い »

2010年2月27日 (土)

買える巾をつくる

きものにチャレンジしてみたい!興味があるんだけど高くて手が出ない!いつかは絹物が欲しいけど今は買える範囲で楽しみたい!呉服屋さんは高いものばかりで入るのが怖い!etc…
これらは京都織物卸商業組合の経営委員会が全国の10代から70代の男女約2000人強を対象にしたアンケートできものの購買に対して多かった意見だ。
同様に以前全日本きもの振興会が高校生を対象にきものについて調べた結果、なんと7割以上がきものを着たい、きものに関心があるとのことだ。これだけを見たらどれだけ将来に希望が持てることか。あとは我々呉服業界全体がどう応えるかである。しかもこれは小売だけでなく卸業も生産者も含めての話だ。
今日の私のテーマは「買える巾とは何か?」である。これは私の持論ではなく私が呉服業界で最も尊敬する(株)やまと矢嶋孝敏社長の考え方だ。大手チェーンの社長というときもの愛好家は嫌悪感を持つかもしれないが、矢嶋社長は最も消費者のことを考えている悪い言い方をすればクソマジメな方である。
21年前にそれまで白か紺が当たり前とされていた浴衣を普及すべく初めてカラー浴衣を出し浴衣人口を飛躍的に押し上げた。またバブル絶頂期にあえて買いやすい価格として他社が高い価格を付ける中、適正かつ低価格を提案して、きもの自体の敷居と間口を広げた現代呉服ビジネスの最大の功労者である。紹介はここまでにして、その矢嶋社長が提言する「買える巾をつくる」に私の持論と検証をリンクして紹介しようと思う。矢嶋社長には怒られるかもしれないが…

1、 買える巾の必要性
従来呉服業界はきものをよく知っている或は上お得意様のようなお客様を中心にした品揃えをしてきた傾向がある。大型チェーンにおいては売りやすいお客様に売りやすい商品を売ってきた。これは商業的には都合がよく収益も効率的であるため業界的には一般的だ。しかしこれは売る側都合の論理であってお客様都合ではない。

きものについての様々な調査を総合すると、きものが欲しいという人は全体の20%、きものは要らないという人も20%、残りの60%は関心はあるがどちらでもない、だそうだ。この60%を少しでも「欲しい」に引き寄せることがきものマーケットの拡大に繋がる。そのためにどうするか?がこの買える巾の商品構成と考えて頂いて良い。これからきものマーケットを拡大するには今までの「客単価主義」から「客数主義」への転換が絶対条件である。それでは売上や収益率が下がると小売や卸、メーカーは危惧するかもしれないが、客数主義はきもの新規客数を増やすことに直結し、それがきもの市場の裾野を広げる手段にもなるのである。もっと直接的にいえば将来の絹物購入客の絶対数を増やすことになる。

2、 買える商品構成
この仮説を検証すべく、最近専門店、チェーン店合わせて30店舗ほどを回ってMRを実施した。リサーチしたのはきものの価格構成だ。あくまでも集計した平均であるが5万未満が25%、5〜15万未満が10%、15万〜20万未満が35%、20万以上が30%であった。調査した30店舗のうち6割が専門店ということもあるかもしれないが、15万円以上の商品の割合が実に65%を占める。しかもこの価格はきもの単品価格でありしかもふりそで、留袖、喪服などの式服を除いている。これに帯や長襦袢、小物をコーディネイトしたらいくらになるのかは業界の人間なら想像はつく。客数主義の観点からいえば集客づくりときもの購入客づくりは現実的になかなかうまくいかない。

また非常に多かったのが店入口にポリエステルの反物または仕立上がりが置いてあるケースだ。確かに最近のポリ着物は素材が飛躍的に進歩し色柄も年代に応じて多彩だ。きものの入門として手軽に楽しむには適している。ただし販売として単品で1万円前後のポリ着物からいきなり15万の着物にはいけない。それこそ価格構成の超二極化となりお客様からしたら買える商品構成ではない。要はその隙間に入る商品が絶対的に少ないのである。お客様はどうせ買うならちょっとだけ背伸びしていいものをという気持ちは必ず持っている。その「ちょっとだけ背伸び」にあたる価格の商品を何にするのか?がポイントになる。

今人気が高まっている木綿きものでもいい。5万円前後のおしゃれでかわいいモノも沢山ある。逆に本格派志向であるなら、地織といわれる産地ブランドでもいい。特に片貝木綿は年代を問わず人気だ。久留米でも手軽なものはある。琉球がすりでも良い。何も木綿でなくても良い。その隙間に入る価格帯であれば絹物でもよい。大切なのはこれから着物にアプローチしようとしている消費者が安心して選択出来る商品構成が必要であり、それによって新規客が増えてその中から更なる高みを目指すお客様が増えていくのである。そしてこの買える商品構成のためには卸業や産地の協力は絶対に欠かせないのである。業界全体がこれらを意識するか否かでこれからのきもの市場は変わってくるのかもしれない。

3、 コーディネイトの巾を広げる
これはきものを着る上で最も楽しいことであり気を遣う部分でもある。しかしながら意外にこのコーディネイトの巾があまり広くない。例えば帯でいえばポリ着物用、絹物用として明確に分かれすぎている。消費者のコーディネイトの選択幅は残念ながら狭い。しかし、この頃街で多く見かけるようになった着物姿のコーディネイトは実におしゃれで、それぞれの個性と工夫がつまっている。

先日東京ミッドタウンでみかけた30代の男性は白のお召しに何とデニムの角帯、濃グレーの紬羽織に同じ色のハンチング、足袋は柄足袋に長めのウールかカシミアのマフラー。間違いなくスタイリストは自分自身だ。また、女性達も同様に銘仙に綿の可愛らしい半幅帯、おそらくリサイクルの羽織など素材に関わらず自由な発想のスタイリングだ。こういう人達が楽しめるスタイリング商品を素材や形式に捕われず品揃えすることできものファンもしくはそのお店のファンが確実に増えるのである。

お客様が価格の選択が自由に出来、その上で自分好みの組み合せを楽しむことが出来たらきっときものの魅力の虜になるだろう。そして我々はお客様がわからないことや迷うことに対してそっと手を差し伸べるような接客と販売が必要なのである。そして卸業、メーカー、生産者の方々も今までにプラスαした品揃えの協力を少ししてもらうだけで、着物をいつか着てみたいというお客様の夢を叶えられるのだ。

本日のまとめ
1、 買える巾の必要性
2、 買える商品構成
3、 コーディネイトの巾を広げる

矢嶋社長が提言する「買える巾」はもっともっと奥深い。なおかつこれを3年以上前からすでに実行している。だからこれはほんの一部なのだ。しかしながらこの考え方を持つことで確実に新規客数が増加することは確かだ。当然私はビジネスとしての観点で申し上げているが、その結果着物と出会うキッカケとなり、着物の楽しさを実感出来るのであればこれ以上のことはない。
今日は完全に受け売りとなったが、呉服業界にプラスになるなら幾らでもこれから受け売りしていこうと思う。もちろん持論と検証も加えてだが。

人気ブログランキングへ

|

« 小売業にとって最も重要で難関の店頭集客 | トップページ | 加賀友禅と小松の魔法使い »

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 買える巾をつくる:

« 小売業にとって最も重要で難関の店頭集客 | トップページ | 加賀友禅と小松の魔法使い »