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2010年3月

2010年3月31日 (水)

西陣の大恩人

春の京都。
みやこおどりの頃、一年中美しい町並みに更に色とりどりの花々が加わる。冬の京都も美しいが、春の京都はやはり格別だ。

私は会社勤めの頃はバイヤーとして京都には週に1回は訪れていた。あくまでも仕事であったため、問屋やメーカーの場所は目をつぶってでも行けたが、いわゆる観光スポットといわれる所はほとんど解らない。だから清水寺はどういけばいいのかと聞かれても答えられないのだ。今思えば何とも勿体ないことである。

そんな私でも堀川通りを上へあがる途中の二条城の桜だけは毎年観ることが出来た。もちろんタクシーの窓越しではあるが。その二条城を過ぎると丸太町通があり、この通りを境に上と下にわかれる。丸太町通は京都御所の正面の通りであり京都御所より南が下、北が上と表現され、それは今でも変わらない。

丸太町通を過ぎれば住所も「上京区」いわゆる「西陣」だ。ただし西陣という住所はない。応仁の乱の時に、西軍の総大将である山名宗全が堀川より西に陣を敷いたことから西陣と呼ばれるようなったのである。観光客が西陣を知るのなら西陣織会館が良いだろう。西陣の歴史から、「帯」「ネクタイ」「西陣お召し」「テキスタイル」などたくさんの織物見本や各製品の製作工程などが詳しく知ることが出来る。着物に関心があって京都旅行に来た際は是非来館するといい。

私はバイヤーになりたての時に帯担当の見習いとして始まった。帯の世界も染物と同様難しい世界であり、特にオリジナル商品製作が主としていたため素材から帯が出来るまでの仕組み、帯の見方、機の仕組み、流通構造など全てを知る必要があった。もちろん帯には丸帯から袋帯、名古屋帯、袋名古屋帯、半幅帯などの種類があり、その組織も錦、つづれ、紋綴れ、糸錦、唐織、ふくれ、などその他も多種多様な組織が存在する。オリジナルを作る場合、合わせる着物の種類、色、柄、ターゲット、販売価格などを深く考えてどういう素材にするか、組織はどうするか、意匠は?見え方は?と細部に至るまでメーカーと詰めに詰める。これは通常のバイヤーとは全く違う点だ。


西陣はとても暖かい人達が多いが、その反面その人物をきっちりとみられる雰囲気がある。信用されない限りは仕事としてやっていけない。特にオリジナル製作はそれほど相互の信頼関係が必要だ。当時まだ見習いの自分は西陣の神様と称される大先輩に付き、各メーカーを回っていたが、ひと言もしゃべれなかった。躾も厳しく、バイヤーたるもの取引先には常に謙虚で礼節を重んじなくては行けないと言われていた。

メーカーについたらキチンと頭を下げて挨拶し、靴をキチンと揃え、売場についたらまず正座をして深々と頭を下げて「いつもお世話になっております」と挨拶することが義務であった。見習いの私は座布団には座れない。出されても足には敷かないで正座をしていた。ちょっとでも知った口を叩けばその先輩から「おまえは黙ってろ!」と怒鳴られたものだ。それだけまずは基礎を叩き込まないとメーカーと一緒にモノ作りは出来ないのである。

そんな私をいつもフォローしてくれ、帯の何たるかを教えてくれたあるメーカーの社長がいる。私の約8つ年上で自分の兄と同い年。しかもそのメーカーは西陣織証紙番号もひと桁台の老舗で、過去には尾形光琳の紅白梅図を3連という3本の帯を横に並べると柄が繋がっているという素晴らしい帯や美しい束ね熨斗の引き箔の帯を製作したメーカーでもある。それ以上にその社長はリヨンやイタリア、インドなどにも出かけ、モノ作りの勉強を今でもなさっており、そのセンスも超一流だ。この3月まで西陣織工業組合の理事も務められた。

社長は、糸染め屋、綜こう屋、箔屋、紋紙屋などに私を連れて行ってくれて、各工程がどのような形で形成されているのかなどを時間をかけてじっくり教えてくれた。また図案の作成の仕方も織物の特性やジャガード織機の特性から考えてこうしたらいい、ああしたらいいなど本当に惜しげもなく指導してくれた。お陰でほとんどの帯の組織や作り方はマスター出来た。

そして2年近く経った頃、先輩から社長とのモノ作りを任された。大島紬に合わせるオリジナルのおしゃれ袋帯だ。おしゃれ袋帯はヒット商品が出ず苦しんでいた。なんとかおしゃれで締め易く、そして他にはない価値あるものをという意欲で考えた。そして当時紗素材を利用した袷の訪問着をどこかで見たことがあり、それを利用して透かし絵のようなおしゃれな帯が出来ないかどうかを社長に提案し、そこからスタートした。

ある程度の紋ができると試しに紋丈分だけ試織して確認する。この試織した布を「目だし」というが、その目だしの段階で色々改善を図った。そして時間をかけて出来上がったのが紗ベースで織が三重組織のしっかりとした帯で、紗の透けた部分を残し、その透けた部分の下から室町時代に使われたウサギの跳ねる様の柄が見えるという凝ったものだった。

結果、大ヒットし「美しいきもの」と「きものサロン」の裏表紙になった。やはりこれは社長のセンスと二人で試行錯誤した消費者が喜んでくれるモノ作りが結果となったと言える。そのネーミングも「透影織」と名付けた。


今、西陣は室町同様、呉服売上の低迷でモノ作りがし難く苦しんでいる。しかしながら、あの時のようなモノ作りをすれば必ずや活路が見出せると思うのは私の成功体験ゆえの甘さだろうか。しかし、あの時でさえ、あんなに手間をかけて作った帯でさえ売価98000円仕立付で出来たのだから今でも十分可能性はあるはずと思う。もちろん中々仕入れにならないなどの条件面でメーカーだけがリスク追うことは非常に厳しいが、やっぱりいいものは売れる。これは間違いない。


私はこの社長のお陰で道が開けた。何故なら、会社を退社した時に直ぐに連絡をくれたのも社長であったからだ。私にとっては大恩人だ。いまでも京都に出張に出た時はほんの少しの時間でも挨拶に伺うようにしている。そしてきものビジネスコンサルタントになった私に対しても様々な指導をしてくれる。こういう人がいる限りは今は厳しくても西陣は大丈夫だ。

京都の春のように1つ1つ花を咲かせて、彩りのある西陣を夢に見たい。


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2010年3月30日 (火)

問屋は現場力

「事件は会議室で起きてるんじゃない!現場で起きてるんだ!」
「どうして現場に血が流れるんだ!」

ご存知映画「踊る大捜査線」のパート1、2の名台詞だ。

この映画は青島刑事がいる現場主義の所轄と室井警視がいる本庁との関係を背景に管理組織と現場組織の葛藤を面白おかしく描いた最高のエンターテイメントムービーである。

一流は現場を大切にする。私の尊敬する㈱やまとの矢嶋社長も1年のほとんどを現場で過ごす。口癖は「現場・現物・現実」だ。同じく尊敬する東京山喜の中村社長も現場を大事にする。特にたんす屋のセール時には必ず一日中売場に張り付いている。驚くのはお客様の顔まで憶えている。
有名な京都の伊右衛門サロンをプロデュースした㈱クリップの島田昭彦社長の口癖も現場100回である。

今、私が問屋をコンサルティングする上で徹底して拘っているのが、問屋の営業担当者の現場力である。今までの問屋は、小売の要望を聞き、商品を供給するといったスタイルだ。また催事においても、企画をいくつか設定し、小売店に選んでもらう。そして売場で販売の手伝いをするといった内容だ。決して間違いではないが、消費の変化によって現場の状況が変わってきたのだからそれでは確実に良くはならない。むしろより衰退の道を辿るだけだ。

以前にも取り上げたが、問屋は夢の商売だと確信している。豊富な商品量と圧倒的な販路、営業担当者の数。どれをとっても業界一の資源を有している。世間では問屋の存在に対して風当たりは強いが、そもそも小売が以前より売れなくなり、仕入れが出来なくなり委託中心の取引になっているのだから、小売から買ってもらえない問屋がメーカーから仕入れられなくなるのも、残念ながら現状では自然な流れだ。

ただし、キツいキツいと言っているだけでは何も変わらないし、余計にキツくなるだけである。

私が拘る問屋の現場力とは、まず営業担当者が徹底的に小売の現場介入することだ。消費者がなにを望み、何が売れているのか、小売の販売員が店頭で何に苦しんでいるのか?催事動員で支障となっているのは何か?どのようにして集客をしているのか?などを営業担当者自らが、販売員と一緒に体験することで肌でわかるようになる。

私の問屋営業のコンサルティングスタイルは、問屋の営業担当者全員に徹底的に現場を知る大切さをわかってもらうミーティングから始まる。全体でやったあとに個別でもミーティングをし「そうはいっても」というネガティブ発想を排除する。そして現場で販売や、電話などのロールプレイイングもいっしょに実施する。そして現場の責任者(店長)の指示に従ってもらう。それによって様々なことが見えてくるのだ。

それが出来た上で営業担当者には担当小売店への年間の店頭と催事商品提案を企画してもらう。小売からの要望を待つのではなく、営業担当者が組み立てて逆に提案していくのだ。その年間提案も現実的なその店の現状やデータ分析を全て把握した上での「貴店は〜だからこれを提案します」という根拠ある提案だ。もちろんこれは大手チェーンなどでは向かないし受け入れてくれない。また年間計画が細部にわたるまでキチンと計画されている専門店さんにも不要だ。
ただそうでないところが圧倒的に多いからこそ必要なのである。そしてその圧倒的に多いところが自社の売上を支えているのであるから尚更だ。

これを実施すると、変われる人と変われない人が一目瞭然にわかってくる。そして事前ミーティングなどで徹底的に言っても変われない人を深追いはしないようにしている。何故なら明らかに変われる人との差がどんどん大きくなるからだ。これだけは絶対に間違いない。そこで変われなかった人がその差に気付き変われたならそれは自助努力によって大きく今までと数字面が変わってくるだろう。それでも尚かつ変われなかった人はいずれ淘汰されるだろう。

小売の現場で着物という商品がどんな人にどのようなものがどんな風に売れていくのか?を営業担当者が実地で体験し理解することで、本当の意味での小売店への貢献が出来る。小売店が売れることで商品を供給している問屋もうれることになる。問屋が売れることで商品を産地から補充することが出来る。この回転が川の流れを少しでも良くすることが出来るのである。もちろん1つの問屋だけが良くなるだけでは業界は向上しない。同じような考え方で数多くの問屋業が動くことで大きな新しい風が業界全体を動かすのである。

だからこそ営業担当者一人一人の現場力が必要なのだ。
今やっているような催事に特化したような供給は川の流れを増々細くさせるだけでなく、水さえも流れなくなるかもしれない。

もう目の前の売上だけを追うのはやめにしよう。商品を供給している小売業者が新しいお客様を増やせるような地道なフォローをしていこう。もちろん催事も必要だ。だがそれが全てではない。正しい道はきものファンという裾野を広げるフォローをすることだ。

これからの問屋としての新しいビジネスモデルは「小売との協業」なのだ。
そのために「小売という現場」をしっかりと体で感じることが絶対にひつようなのである。


「売上は机の上で出来ているんじゃない!小売という現場で出来ているのだ!」


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2010年3月28日 (日)

本場奄美大島紬のおはなし

昨日は横浜の山本きもの工房にお邪魔した。山本きもの工房は本場奄美大島紬協同組合からアンテナショップとしての認定を受け、現在本場奄美大島紬展を開催中だ。沢山の素晴らしい奄美大島紬の数々と染色家仁平幸春氏の染め帯、染織家西川晴恵氏のアロー、ヘンプといった天然繊維を使った手織りの帯、その他沢山の染織家たちの作品が大島紬にコーディネイトされる形で出品されている。どんな一流の呉服店でもギャラリーでもこの質の高い内容は絶対に見られない。きものファンなら絶対に必見だ。

山本きもの工房の主宰者である山本秀司氏のことは少しきものに詳しい方なら名前だけでも聞いたことがあるだろう。和裁士としては特に著名で、季刊きものでの連載でおなじみである。和裁技術コンクールで男性として初めて内閣総理大臣賞を受賞し、全国各地から山本氏に仕立てに憧れ、依頼が集まる。また和裁教室も大人気で受講生の数はなんと90人以上という。もちろん国家認定の一級和裁士という和裁士の最高峰である。しかもご夫婦揃ってだ。

山本氏の拘りは「着る人のための仕立て」だ。
どんなに腕の良い和裁士でも着る人との接点は寸法でしかない。もちろんその寸法に忠実に仕立てることは当然のことなのだが、山本氏はその寸法から全てを感じ取り、どうすればより着易いのか?どうすればその人の着姿の良さをより引き出すことができるのか?という全ての五感と想像力を働かせ、それを技術に乗せて仕立てていく。それが一流でなく「超一流」である証だ。そんな超一流の技術で本場奄美大島紬を仕立てたら、間違いなく家宝になるだろう。


本場大島紬の魅力は着姿の美しさにある。友禅や泊使いの華やかな美しさとはまた違う「絣」が醸し出す内なる美しさである。独特の光沢と精巧な絣の美しさは普段着でありながら、着る人そのものの美しさを引き出す。華やかな染物は「着飾る」美しさにたいして、紬は「着こなす」美しさである。とりわけ大島紬は群を抜いているといっていい。だから未だに女性の憧れのきものNo.1といわれているのだろう。


その憧れの大島紬を作り出す為には恐ろしく手間のかかる工程ばかりだ。
図案→絣設計図作成→糸の糊付→締め機→絣むしろ→テーチ木染め→泥染→絣摺り込み→機織→組合検査と大まかに書くとこんな感じだが、最低でも18工程くらいある。この中で特徴的なのは「締め機」「泥染」である。

「大島紬は二度織るきもの」といわれている。その理由はあの精巧な絣作りにある。大島紬の精巧な絣は「締め機」という絣作りのためだけに開発された織機を使って絣糸を作り上げる。大島紬の絣糸はその設計図に従って、生糸を綿糸で挟み込むようにして防染することにより作られる。あとで柄となるための小さな点を綿糸で締めることによって作るのだ。その柄となる「点」は総柄となると数十万カ所になる。

綿は水分を含むと締まり、絹糸は膨らむ。この素材特性を利用して防染するのだが、「締め機」によって図案通りのパターンを「絣むしろ」というむしろ状のものにして織り上げるのだ。その絣むしろも経糸絣用と緯糸絣ように分かれるため膨大な時間を費やす。そしてこの機は非常に力が必要なため「男の仕事」なのだ。

この絣むしろを染めていくのだが、これも非常に大変な作業だ。
まずはテーチ木染を下染めとして施す。このテーチ木の染液は奄美大島に自生するテーチ木というバラ科の樹木を20時間前後煮ることで作られる。この染液の成分は強酸性のタンニン酸である。色は茶褐色。この中にある程度の温度を保ちながら絣むしろを入れ、もみ込むように染めていく。そして温度も冷め易いので1度の染めで20回位染液を入れ替えるのだ。

このテーチ木染は容赦なく職人の手を攻撃する。
強酸性のタンニン酸は肌を痛め、ヒドイ手荒れを起こす。人によっては爪に針を刺したような痛みを感じる場合もあるという。手袋をしたいところだが、温度の変化を感じとらなければいけないので、どうしても素手になるのだ。職人にとっては手間に加えて辛い作業となる。

そしてそのあと泥の田んぼに向かい泥染となる。奄美の泥は珊瑚の死骸が堆積したもので粒子の角が丸く糸を傷つけないという利点がある。鹿児島の泥は桜島のガラス質も混じり角があり糸を傷つけてしまうので、本場鹿児島大島紬も泥は奄美の泥をつかう。また泥染めをすることで泥の鉄分とテーチ木染液のタンニン酸が反応し染め定着するのだ。しっかりと染まるまでなんとテーチ木染め20回と泥染め1回のペースを3セットも繰り返ししないとあの色は出ない。気が遠くなるような作業だ。また奄美は猛毒のハブが島民の数の以上に生息している。夜行性のハブは夕方になると出てくる。いまは血清のお陰で命を落とすことは無いが、噛まれたら大変なことになる。

本場大島紬の染めは「痛み」と「危険」に囲まれながら行う大変な作業であることを憶えておいて欲しい。

そして1ヶ月から細かい絣のもので3ヶ月くらいの機織りの期間を経てあの美しい本場大島紬が完成するのだ。

この素晴らしい本場大島紬はフランスのゴブラン織、イランのペルシャ織と並んで世界三大織物と言われている。

ところが今、本場大島紬は過去に無い危機を迎えている。
20年前まではその生産反数25万反あるといわれていたが、年々生産減が続き、それにも増して減反の拍車は止まらず2008年の大島紬生産反数は前年比22%ダウンの1万4144反と遂に1万5000反を割り込んでしまった。

大島紬の生産で生活をしてきた人々は今廃業を余儀なくされている。なぜなら生活をする為には大島紬を織らなくてはいけない。ところが、きもの自体が売れず、大島紬を織っても問屋にせよ、小売にせよ買い手がつかない。
作っても生活出来ない、作らないと生活出来ない。結局どうすることも出来ず、高い技術をもった織娘さんたちや大島紬に関わる職人が廃業していっているのである。このままの状態が続けば本当に幻の織物になりかねない。

消費者にとっては本場大島紬も他のきもの同様、価格の問題もあり確かに簡単に購入出来る金額ではないかもしれない。今多くの呉服店やインターネットショッピング等で価格面の見直しを努力しているもののそれでも気軽ではないかもしれない。ただ、是非とも日本が世界に誇る織物を手にとって触れ、その素晴らしさを再認識して欲しい。

本場大島紬の着姿の美しさ、着こなす楽しさ、いつまでも永く受け継ぐことが出来る耐久性。少しでも多くのきものファンに伝えられたらと感じる。

そして本場奄美大島紬協同組合の公認アンテナショップとなった山本きもの工房でその素晴らしい作品の数々を手にとり、肌で感じることができる。通常の呉服店ではないので本当に気軽に見ることが出来ると思う。


今後、私としてもこの本場大島紬の素晴らしさというものを様々な形でPRしていきたいと思う。他の産地の貴重な紬も同様にだ。
日本の素晴らしい伝統工芸をなくさない為にも注力していく。

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2010年3月27日 (土)

富士の裾野

今日は久々の京都出張。以前は週に1回は京都に通っていたが、久しぶりに京都に来てみると改めて新鮮だ。また新幹線も久しぶりだ。いつも車窓から見る富士を見るのが好きだったが今日は曇りで見えずじまい。残念だ。

実は私は富士山に登ったことがない。正確にいえば途中棄権を何回もしている。情けない話だ。最高に登っても7合目。坂道は大の苦手なのだ。しかし遠くから眺めるのは大好きだ。それならいくらでも見ていられる。富士山をよく見ると改めてその裾野の広さに感動さえ覚える。富士山の天にも届きそうなあの頂きはこの裾野に支えられているのだ。

今の呉服販売は催事偏重型販売と言っていい。専門店の数は大手、ローカルチェーンの全店舗を足しても全く届かないほど全国では膨大な数になる。そう考えると1店当の年間売上は小さくてもいまの呉服小売売上を支えているのはこの専門店であることは間違いない。ところがその専門店のほとんどが、催事に頼っている。せっかく店を構えているのにと単純に思うところだが、当事者にしてみれば死活問題なのだ。集客ができない、店頭売上だけでは店が維持できない。この悩みはどこも共通しており深刻だ。

しかし催事は麻薬である。一度使うと効果は絶大。大きな売上をたたき出す。しかし店頭でも頑張らねばと店頭売上に注力してみるがやはり売れない。お客様も増えない。このままでは維持できない。また麻薬を使う。ある一定の効果は出るが、前回ほどではない。すでに2回使ったからしばらく使うのを止めると心に決める。店頭で頑張ろうとするが結果が出ない。仕方がないこれが最後と言い聞かせて麻薬を再度使用する。今度は麻薬が効かない!気がつくと重ね買いをしているお客様が多くなり、なかなか買上げには結びつかない。そして新規客数アップどころかお得意様までが疲弊し、終焉を迎える。

ここで催事という麻薬の錯覚に惑わされないようにしっかりと認識しておきたいのは、「店頭は催事の母である」ということだ。この考え方を絶対に忘れてはいけない。催事で新規客はほとんどとれないのである。昔のようにお得意様のお友達を新規客と考えるのは非常に無理があるし、現実的に購買確率は非常に低い。またかつてのお客様で今は疎遠になっているお客様に再び催事に来てもらうという「掘り起こし新規」という発想は非常に効率が悪いのとその発想を持つ時点で店頭から新しいお客様創りをするということから逃げているのと同じだ。

その前に本当に店頭で集客ができないのか?出来ない理由を外的要因としていないかどうかをもう一度チェックするべきである。
* 小物のお客様をナイガシロにしていないか?
* 他商店や周辺コミュニティとの連携を怠っていないか?
* 顧客管理を怠っていないか?
* 年間の計画が店頭と催事にキチンと分けて目標設定されているか?
* その計画と目標が個々のレベルまで落としこまれているか?
* そして全体の店方針が意志統一されているか?
* 日、週、月、四半期、半期、年間という単位でチェック&修正ができているか?

これは基礎的なものであるが、もしこれが出来ていないのなら間違いなく店頭実績は厳しいものになるだろう。店頭営業というのはお客様を満足させる為の全ての下準備が出来ていなければ実績はついてこないのである。またそれが出来ていなければ、結果催事もうまく回らなくなってくるものである。日々の地道な営業活動が確実に新規客を増やしていくのである。

富士の裾野は日本一高い頂きを支えるために広大である。
お客様を選り好みすること無く、裾野を広げていく努力をすることでそこから2合目、3合目のお客様が生まれる。そこからまた5合目、6合目のお客様が生まれる。頂上のお客様はごく一部であってもそれを支えるお客様をキチンとフォローし、大切にし続けることで、全体の売上を作り出すことが出来るのである。

何事もそうだが、土台のしっかりしていない建物は崩れやすいのと同じで、新規というしっかりとした土台を作っていかないと、やがて存続の危機が訪れる。


鉛筆を立てるような不安定な催事偏重型の店経営ではなく富士の裾野のように広くしっかりとした土台となる新規顧客の創造の為の計画と実行で店頭と催事の両輪を回す営業を今だからこそ実施すべきだと提言したい。

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2010年3月25日 (木)

在庫管理を見直そう!

3月に本決算を迎える企業は多い。本決算月は各企業によって様々で、会社を登記した月に関連している場合が多いが、経営計画等の策定という観点から年度末に本決算を設定する場合も多い。いずれにせよ、経営者や経理担当者はバタバタと慌ただしく、とくに株式会社の経営陣は株主総会までは気を抜けないことであろう。

さて、決算で収支計算する場合必ず必要で重要になるのが「棚卸資産」である。いわゆる「在庫高」だ。棚卸資産は流動資産の一部であり利益を生み出す可能性のある資産である。その評価の仕方はその企業の経営上最適な方法を使うが、いずれも事前に税務署に申告してある法人税法に定められた会計基準をもとに算出する。そうすることで営業利益を出す為の売上原価を算出できるのだ。

別に私は税理士ではないのでここで会計について語るわけではなく、簡単に言えば「在庫管理」の大切さを今一度考えなくてはいけないと思った訳だ。

呉服業界は残念ながら在庫管理システムの有効なIT化が普及しておらず、PCを使用しているとしても恐らく「Access」やエクセルを使用した管理か手書きの帳簿の場合が未だ多い。そこそこのチェーン店や大手前売問屋などはPOSシステムによる総合的な情報管理を導入しているところは多いが、それでもごく一部である。

決算は特に商品の出し入れが大変だ。しかも最近は委託中心であるため下手をすると店頭商品が品薄になる。それを防ぐ方法として、委託伝票の切り替えということをする。初期借り入れ数から売上数を引き、残ったものを伝票上で返却したことにし、その残った分だけ新たに伝票をおこして借り入れを発生させるという仕組みだ。しかしこれはキチンとデータを追っていかないと員数誤差が発生する。すべての帳簿データと実在庫を照らし合わせないと後でどちらかが損をしてしまう。

またもっと始末に悪いのは、条件付き仕入れの返品だ。これは非常に危険である。どういうものかというと、「条件付き」とは「返品条件付き」ということである。大体これは長期借り入れか取引先の資金的な理由による要望によってだが、一度すべて買取る形にして、予め決めていた期日に返品するというものである。これに関しては一度現金にしろ手形にしろ決済されているものなので、返品時には取引先から返金してもらう形になる。これもキチンと在庫管理をして返すべきものを一度に返さないと、あとで出てきた時に大変だ。そしてなにより売上が悪くこの返品量が多いと取引先が資金ショートする恐れがあるといった危険な取引である。

いずれにせよ、呉服業界に限らずだが在庫管理は大切である。
大切なのは日々の入出庫のチェックと売上のチェックだ。いつ入って、いつでていったのか?そのうちいくつ売れたのか?単純ではあるが、これをキチンとチェックする必要がある。SKU管理が当たり前ではあるが、できれば原価率や値入れ率、値引き率、売上、返品、滞留日数などを計数計算できるソフトに落とし込み少なくとも週別で売上、在庫、粗利益高などをチェックする必要がある。そして単品別で異常が発見出来ることで、毎月、半期、本決算での誤差が少なくて済む。だからこそ在庫管理システムの整備は多少のコストを掛けてでも実施すべきだ。

また員数誤差を少なくするポイントとして将来的にはSCM導入が望ましい。特に大型スーパーなどでは当たり前になっているが、取引先とのサプライチェーンの整備だ。これだけIT環境が社会的に整備されてきているのであれば、取引間のSCMを実施することでより正確な在庫管理や生産管理が可能になり、物流コストの圧縮にもつながる。現状の呉服業界では理想論になりがちだが、すでに企業間の物流のインフラ整備は出来つつあり、その簡単な仕組みだけでも採用することでコスト面での大きな効果を生み出す。一部の経営者はこれだけ縮小した市場でのSCM導入は返ってコスト倒れに繋がるという意見もあるが、いままでの丼勘定、伝票処理の不正確さ、積載率の低いトラック使用、作業用のアルバイト人件費などを考えれば十分経費対効果は高いと感じる。

どちらにしても、在庫管理の基本はまず「商品を触る、把握する、そばに置く」である。これはかつて私が経験の浅いバイヤー時代に在庫で大きな失敗をした時に私を厳しく指導し育ててくれた大先輩の口癖である。人に任せず、自分の管理する商品は、入出庫に常に立ち会い、商品をSKU毎に分け、入庫したら触って検品をし、データと実在庫と売上の把握をし、毎日、そしていつでもそれを出来るように商品をそばに置く。こんな当たり前のことを繰り返していると何千、何百単品数があろうと異常に誰よりも早く気付くことが出来ると何度も何度も言われ続けた。あの時は本当に辛かったが、不思議なもので気がつくとほとんどの在庫が頭の中に入っている。そしていつのまにか不良な5年分の滞留在庫がたった1年で収束できてしまった。

在庫管理は会社の利益を捻出する最も大切な仕事の1つである。そして様々なやり方やシステムが存在する。出来るだけ誤差を出さず正確に管理するにはITの活用が不可欠だ。それによって物流コストの見直しも人件費コストの見直しも可能であり、それによってコスト圧縮されることで捻出される粗利益額は売上を何割かアップさせるよりも効果は高くなる。そういった企業全体の考え方に加え、それを運用する人材の在庫管理スキルを上げるべきである。

私はかつて在庫管理では劣等生であったが、その先輩の教育により在庫管理のスキルが大きくついた。呉服業界は是非とも在庫管理をもう一度見直して、効率的な収益率の向上も注力してはいかがだろうか。
この複雑な流通構造という川の流れをスムーズにする手段は、絶対的な売上高と共に川上から川下までの在庫回転率の向上でもある。それはすべて在庫管理から始まる。

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礼装のススメ(家紋編)

今日のツイッターでの着物の話題に紋付の話が数多く出てきた。私も昨日のブログのテーマは喪装の話であったため、そういう意味ではタイムリーな話題であった。私もいくつかツイートさせてもらったが、普段きものを自分なりに楽しんでいる方々も礼装に関しては、キチンと受け止めており、関心も高い。
さすがに普段から着慣れている人達だけあって、その内容もかなり専門的なものが多かった。

黒紋付の話題ももちろんだが、色無地や江戸小紋を略礼装として着る上での1つ紋付の話も沢山あった。「紋」という言葉が今でもこれだけ認知されているのはすごいことだ。略式に略式を重ね、礼装もかなり簡略化している現代にあって「家紋」という言葉は老若男女問わず知っている言葉であろう。その家紋というものはどういうもので、どういう使われ方または使い方をしているのかを考えてみた。

ただし、家紋の捉え方は各家や風習によってかなり分かれている為に「こうだ」と決めつけることは出来ない。であるからここではあくまで一般論として言われていることを基本に述べたいと思うので了承して欲しい。

郷土家紋研究会によると家紋の数はなんと2万種あるといわれているから物凄い数だ。そしてその「家紋」と「姓」は非常に深い関わりがある。
よく江戸時代までは一般庶民に姓がなかったという話を聞くが、それはまったく根も葉もないウソであり、きちんと姓はあった。ただし、封建社会ゆえ名乗れなかっただけのことだ。

もともと庶民に姓を与えたのは聖徳太子と言われているそうだが、真実は定かではない。ただそのくらい古くから全ての民は姓というものを持っていたことになる。日本の姓の数は約30万種と言われており地方によっては村単位で同姓が固まっていたり、その地名がそのまま姓になっていたり様々だ。もっとも姓に影響を与えたと言われているのがご存知「藤原氏」の家系だ。伊勢国の藤原が元になった「伊藤」、下野国佐野の藤原氏が東北に一大勢力を気付いたため広がった「佐藤」といった具合に出身地と組み合わせたわかり易い姓だ。


ちなみに姓のベスト3は
1位 鈴木 → 本拠地は熊野であり熊野信仰の隆盛で一族が全国に散り今や
       二百万人を大姓だ。
2位 佐藤 → 藤原氏から分かれた姓で、下野国佐野の藤原氏が起源という

3位 田中 → 田のつく姓は西日本に多いようで、稲作が盛んな地域に多い

といった具合に姓は様々でそのルーツを探ると楽しい。
一方で家紋は公家の牛車から始まったといわれている。また家紋は姓の目印に使われる等姓との関係は深いのである。また時代劇等でおなじみだが、戦の時に使われた幟(のぼり)や陣に張られた横断幕や馬印など様々な所に家紋は重要な役割として機能していた。いわゆる家紋は名刺みたいなものだ。

ちなみに家紋以外で家を表したのが今でいう江戸小紋だ。殿中での正装である裃の地紋が藩を表していた。例えば、「万筋」は加賀藩前田氏、「鮫」はご存知紀州藩徳川家、「大小あられ」は薩摩藩島津家などなど。日本の文化は家紋にしろ地紋にしろキチンと分かれている所が素晴らしい。

天皇家は家紋といわず紋章となるがご存知「菊」であり、天皇だけに許されている束帯の地紋は桐竹鳳凰紋である。


*紋を入れる場合、実家か嫁ぎ先かどちらの家紋をいれるのか?
色無地や江戸小紋、留袖や黒紋付を購入した場合、家紋をどちらのものを入れるか迷うことがある。自分の実家なのか?嫁ぎ先なのか?これはその土地特有の風習や決まり事などがある場合があるためキチンと確認する必要はあるが、呉服店のほとんどはこうアドバイスするだろう。
【結婚前なら実家の家紋】【結婚後なら嫁ぎ先の家紋】
これが最も一般的で簡単な考え方だ。ただし、先ほども言ったように地域や風習によって違う。たとえば京都の一部の地域や家では「母方の紋を受け継ぐ」というところもあれば、いかなる場合でも100%嫁ぎ先の紋でなければいけないなどの場合もある。それだけ家紋は日本の家系にとって重要視されているのである。


* 習い事でよく聞く女紋とは?
女紋と聞くと紋そのもののことを言っている場合もある。例えば「下がり藤は女紋」「丸に違い鷹の羽は男紋」などと言われるがこれは全くの俗説であり、あまり根拠はない。
ただし、茶道や華道などでは女紋というと「丸無し」のことを指す場合が多い。もちろん必ずではないが、茶道等では1つ紋の色無地や江戸小紋を多用する。その時に染め抜きもあるが縫い紋が圧倒的に多い。また縫い紋も「すが縫い」「けし縫い」「相良縫い」「じゃばら縫い」等があるが、比較的多いのは「けし縫い」である。

けし縫いは紋の輪郭を点字のように縫われており、丸ありにすると丸自体が二重に見えてしまう為、あえて丸無しにして紋の見栄えを良くしたことから、これを女紋と表現したのではないかといわれている。また女紋としての紋入れが流行ったため正式な染め抜き紋でもわざと丸無しに入れる例が今でも多い。
また参考までに縫い紋で見栄えがいいのは「すが縫い」であり紋の作りがしっかりと刺繍される。すが縫いで紋入れする場合は着物の地色と同色の縫い糸で入れるのがお勧めだ。そのほか紋の輪郭を線状にはっきりと縫う「じゃばら縫い」も多く好まれている。


このように日本人にとって家紋は現代に深く根付いた伝統文化であり、またそのデザイン性も国内外で高く評価されており、特に有名なのはルイ・ヴィトンのモノグラムはこの家紋をモチーフにしていることで有名である。そういった意味で後世まで残っていくものであろう。
そしていつも何気なく見ている自分の家紋を深く調べてみると、意外なルーツやそのデザインの理由などが明らかになり、より自分の家紋に愛着がわいてくるかもしれない。

みなさんもご自分の家紋や姓の歴史や由来をひも解いてみてはいかがだろうか。

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2010年3月24日 (水)

礼装のススメ(喪装編)

彼岸である。
ご存知の通り春分と秋分の2回彼岸は訪れる。その春分と秋分を中日として前後3日を足した7日間がそう呼ばれる日本オリジナルの仏事だ。
そんな中、今日は父の墓参に行ってきた。連休明けとあって墓参に来ている人は少なかったが、回りの献花の多さを見ると連休中はかなり賑わったのではと推測出来る。

日本の仏事はとてもよく考えられている。法要をみると命日を基準として一周忌、月命日もあるが、一般的には一周忌以降は三回忌、七回忌などの法事やお盆(盂蘭盆会)、春と秋の彼岸など。もちろん細かく言えば更に沢山の法要があるが、私は仏教にはあまり詳しくないので一般的なものだけを例に挙げさせてもらった。

よく考えられているといったのは、法要毎に家族や親族などが顔を合わせる機会になるということだ。故人を偲びながら墓参や位牌に対しての供養を行い、久しぶりに集まった親族と会話を交わす。もちろん仏事としてこれらは発展したとはいえ、結果的に親族の絆を確認し深める機会になることには変わらない。私自身は無宗教ではあるが、宗教の奥深さを感じる。

現代の日本人が仏教に接する時はこの法要や葬儀等の祭礼が多いのではと感じる。そしてそこに参列する場合、ほとんどの人が洋装、和装に関わらず喪装である。これは当然セレモニーというフォーマルな場所であり、礼装という形で仏前または霊前に敬意を表する服装である。ここで「喪装」と表現するのは、着物の場合に限り、いわゆる喪服は黒紋付が一般的だが、黒紋付は正式には慶弔両用の礼装であり、昭和の中期までは黒紋付に比翼重ねをし、錦帯を合わせることで晴れ着(祝着)として着られていたので、喪服という表現は正しくないためである。

では日本の喪装はいつからなのか?
葬儀自体は古墳時代より行われており、様々な形式で葬儀が行われていたことが出土品からわかっている。増田美子著「日本喪服史【古代編】」によれば、記録としては存在しないが、祭礼用の衣装は巫女が存在していた頃から、間違いなくあったと考えられているという。喪装というものが正式に法律で決められたのは奈良時代718年に制定された養老喪葬令に記されているのが最初だろう。

養老喪葬令は天皇の喪服についてこう書かれている
「凡天皇、本服二等以上の親喪の為には、錫紵を服す。三等以下及び諸臣の喪の為には、帛衣を除く外雑色を通用せよ」
錫紵は錫色の紵服ということで、ここでいう錫色は墨色の浅い色である。紵服は麻素材の衣服。すなわち天皇は二親等以上の喪に対しては墨色の服を着用するよう定められていた。また三等親以下の場合は帛衣=絹の衣服を除き、また黒以外の衣服を着用するということに定められていた。

この制度は平安中期まで続いており、源氏物語で光源氏は妻である葵の上の喪に対して薄墨色の喪服を着用している
「にばめる御衣たてまつれるも、夢の心地して、「われさきだたましかば、深くぞ染め給はまし」と思すさえ、かぎりあれば、薄墨衣あさけれど、涙ぞ袖をふちとなしけるとて・・・」

しかしこれらの喪装は天皇や貴族の話であり、庶民はどうだったかというと、そのほとんどが白装束であったという。その歴史的背景はあまり記録に残っていないものの、現に昭和50年代まで特定の地域で白装束は存在した。
日本国民が慶弔両用として礼装に黒紋付を用いたのは、明治後期の皇室令がキッカケという説が有力だ。富国烈強の考え方から、洋装、和装を含め礼装を黒色と定めたことが庶民にも浸透していったという。それいらい、祝儀、不祝儀を問わず黒紋付が一般化していったと言われている。

現代の和服の礼装は、祝儀は留袖(江戸褄)、不祝儀は黒紋付(黒無地)となっており、白装束は死者以外は着ていない。また当然礼装に対しての決まり事は存在せず、その場に対する個々のモラルに任せている。また、喪主を含め親族が和服の喪装をすることが極端に減り、いまでは男女とも洋服の喪装となっている場合が圧倒的に多い。これは着物に関わる人間としては残念である。


ここで、呉服に関わる人間として皆さんに礼装のススメをしたい。
万が一ご不幸があり、その主たる立場になった時は是非和服の喪装をして欲しい。確かに今は略式礼装が一般的な時代であり、和服の喪装をしなくても後ろ指を指されることはない。だが唯一、略していない人がいる。故人である。故人は白装束に身を包み、祭壇にある沢山の献花に囲まれ安らかに眠っている。是非ともご家族の方に関しては、送る側として略さず面倒でも和服の喪装をして欲しい。それが最後のお別れであるからこその礼儀と思って欲しいと願う。

また参列する側は、黒紋付を着る必要はない。弔問の装いとして、1つ紋の色無地に黒共帯や同じく1つ紋入りの江戸小紋などで黒共帯を合わせたものなので十分御霊前に礼を尽くすことが出来る。とにかく親族側も弔問する側も、「略式でないきちんとした装いの故人」に対して最後に服装としての礼儀を尽くすことは日本人として非常に意味あることである。

また黒紋付は5つ紋であるが、これもそれぞれ意味がある。紋の位置としては背中の「背紋」、胸の「抱き紋」、外袖の「袖紋」である。背紋は厄よけの意味があり、邪悪なものは目の届かない背から入ってくると言われている。それを守る為のものである。抱き紋は両親を表すといわれている。袖紋は一族を表すそうだ。いかにも日本人らしい考え方で家紋の配置を決めている。

そうはいっても現実的に喪の席での親族は忙しい。大きな悲しみの中で葬儀の準備、弔問客への立ち振る舞いなどなどやることが山ほどある。その中で和服の喪装は正直大変であろう。昔は各家で葬儀を行ったので割合に和服でも支障は少なかったが、今はセレモニーホールなどが多く、様式も変わってきているから仕方がない。
とはいえ、愛する家族の最後のお別れであり、心からの感謝と敬意を込めたいものである。だからこそ日本人としての礼装である黒紋付での喪の装いをして欲しいと心から想う。

かぎりあれば、薄墨衣あさけれど、涙ぞ袖をふちとなしけるとて・・・


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2010年3月23日 (火)

着物産地にステージを

今日の内容は私の夢を書こうと思う。
私のツイッター仲間で、ICHIROYAさんという古布や古着を世界に発信しているネットショップの経営者がいる。約10年程前からなさっているそうだが、その商品の全ては非常に興味深いものばかりである。ユーザーは当然外国の方であり、古着を着て楽しむのはもちろん、コレクションとして買い求めたりとその購買動機は様々なようだ。

古着を売るのは簡単そうに思うが、実は新品を売るより難しい。もちろん古物商としての免許が必要なのだが、ここで言う難しさとはそういうことではない。
古着の難しさはその素性がわからないことである。いつ頃のもので、どこで作られて、どんなもので、どんな価値があり、どんな値段が適正か?という判断が1枚1枚必要になる。新品なら全てがわかるからそういう意味では分かりやすい。

だからこそ「見る目」が問われてくる。ICHIROYAさんはそのために、物凄い勉強と経験をなさってきている。当然様々な失敗も経験している。そして膨大な数の着物や古布を触れている。素材にも精通している。だからこそ見る目が深い。そしてとにかく謙虚だ。常に学ぶことに貪欲なことがうかがえる。だから私も着物自体の話をする時はとても緊張する。

そう考えると違う見方をすればICHIROYAさんは「古着」という商品の「産地」であると思う。古着1枚1枚の素性を明らかにして、新たな息吹を吹き込み、価値創造をしてユーザーに提供しているからだ。

今、この厳しい呉服産業の中でもっとも苦しんでいるといわれているのが、川上に位置する人達。いわゆる「産地」だ。買い継や問屋に仕入れてもらうことで生産が機能していたが、いまやそれ自体が機能しなくなってきたことで、物が作れないでいる。産地は生産地であるから生産ができないことは死を意味すること一緒だ。しかもそれを物語るように廃業のペースも速度を増している。これはむやみに危機を煽っているのではなく、現実、物を作れば作るほど負担が増え、物を作らなければメシを食えないという全く矛盾した状態だから辛い。


私の夢は各産地がダイレクトに小売業者とそして消費者と向き合えるステージを作ることだ。もちろん今の流通もキチンと維持しながらである。ちょっと前なら産地のダイレクト取引はタブーであったが、ここまで流れが厳しくなると川中が本来のデストリビューター機能をなさなくなってきているので、川上に生き残ってもらうためにも抑制は出来ない。

私が考えるステージとはいかに取引間にコストを掛けないで効率的な場所を作るかという意味である。そう考えるとやはり電子商取引。いわゆるインターネットでのポータルサイトだ。もちろんもうすでに稼働している各産地のメーカーもあるが、そのほとんどがB to Cの流れ。いわゆるダイレクトでのネット小売である。ただしこれが本当にメーカーにとって効率が良いかどうかは定かではない。もちろん多くの顧客をとればそれなりの売上にはなるが、アクセス数を増やすためにはそれなりのコストが必要となる。普通にサイトに載せてもそうたやすくアクセスが増えるものでもないし、ましてや契約数が増える訳でもない。

私が考えているのは、集散地ポータル。いわゆる他産地を集めいくつかのカテゴリーに分けて細分化することで、利用する側の選択幅を広げる。そうすることで、1メーカー当りの在庫量は少なくても十分商いが出来る。また似たような条件検索をしたとしても、メーカーレベルなら商品のバッティングは少ない。だからよくある同一商品による価格競争ではなく、商品自体の比較になる。
これをB to Bを基本としながら、間口を消費者にもひろげ、B to Cもできるような2つの機能を持ったポータルサイトというステージである。

またB to Bの部門では小売にとって利便性の高い情報提供をするため、催事アドバイザーの手配、求人情報、展示会場の検索及び予約、催事説営業者の検索、広告代理店、什器業者などなど小売の経営及び営業に必要な部分も盛り込まれたサイトであれば理想的だ。

一方B to Cの部門においては、商品購買だけでなく、きものケア、仕立て、なども好みの選択機能で検索出来、より消費者好みの買い方が出来るような内容のものにしていく。

これらは全て理想の段階である。実現するには様々な問題をクリアしていかなければならない。
サイト構築に関しては、サイト製作業者の選択さえ間違えなければクリアは出来る。ただし、これだけの内容となると構築コストはかなりのものとなるので、資金的な問題はある。だからビジネスパートナーは必要であろう。

最大の問題は、産地にどう理解してもらうかだ。既に幾つかのメーカーはもしそういうものが出来たらすぐに手を挙げると言っている心強いところもあるが、といったところで業界のネットに対する理解度は、流通の上流へいけばいくほど低い。またダイレクトに対しても我々が思っているほど積極的なわけではない。産地メーカーにとって小売業者とのダイレクトは危険と感じる部分が多いからだ。正しい理解を得るためには「営業」が必要になってくる。

他にも様々な問題点はあるが、産地という厳しい流通段階での位置付けだけではなく、より自力による取引という経営の間口を広げていくという大きな夢を常に考えている。いつも受注を待っているという状況から能動的な動きをすることが今の状況への対応だ。環境適応能力を産地にも身につけて欲しい。

とにかく問題は山積みのままだが、私としては夢の実現に向けて動き出してはいるので、各方面の方々には是非ともご協力頂きたい。そして、着物ファンの皆様からも、もっとこうなったらいいというアイディアや願望も頂きたいと思う。

着物産地にステージを作ること。これが夢であり目標である。

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2010年3月22日 (月)

価値基準の創造

今の日本はデフレであるといわれている。
政府が言っているんだからそうなのであろうと単純に思う。そしてその中でデフレの代名詞的ないわれ方をしているファストファッションではあるが、私は全然違う見方をしている。

もちろんこれはあくまで私見であり、それについて賛否が分かれるとは思うが、ファストファッションの代表的な企業はリーマンショック以前から存在し、独自の戦略によって成長をして来たものであり、たまたま今の「デフレ」という経済状況によってより世間の注目度が増しただけのことであって、デフレを増長しているなどの意見はまったくのナンセンスだ。

それとは別にこれも私見ではあるが、今のデフレの中での消費の仕方は、逆に消費する対象をキチンと見極めて選別しているように思える。食品にしてもそうだ。今のスーパーの食料品売場には細部にわたって明確な産地、品質表示があり、デフレといえども消費者はきちんと見極めて買っている。もちろん以前起こった産地偽装や冷凍餃子事件などが発端となったことは確かだが、今の消費者は、「味+安全性+価格」という各自のしっかりした価値基準をもって消費するようになって来ている。むやみに国産尊重型のような買い方からそれぞれの消費価値基準をもって意思決定する方向へと進化してきているというのは大手スーパーの食品統括マネージャーの話だ。

先日、染色家である仁平幸春氏の工房にお邪魔させて頂き、その作品や仁平氏のモノ作りについてのお話を伺って来た。仁平氏は図案から各染色工程、蒸しから水元まですべての工程を自身で行っている今では数少ない染色家だ。もちろんそれに使用する染料もすべて天然染料であり、調達から配合までもすべて仁平氏の手によって行われる。

勘違いして欲しくないのは京友禅などの分業制によるものを否定していることではない。分業制のものは各工程の熟練した職人の卓越した技術力が集結して作られた逸品であり、それぞれを比較するものではない。


仁平氏の作品は全ての工程において自身で手掛けなければ生まれないものである。ではどういうものなのか?と聞かれると捉え方は見る人によって違ってくるので「こういうものだ!」などとはとても言えない。ただ1つ感じたことは「素直に見ることでしか良さを感じられない」ものではないかと私自身は感じている。

私の印象は、彼の作品は「有形の無」という矛盾した表現が自分自身ではしっくりくる。「有形」とは形あるものという意味でもあるが、様々な作為があるということでもある。その一方でここでいう「無」とは特定できない、理由付け出来ないという解釈が一番近いかもしれない。
作者としての構図という形やその表現にある作為は確実に存在するはずなのに、見る側はそれを理由付けできない或は見つけ出すことが出来ないのに何かを感じてしまうのである。

だから仁平氏の作品は草木染めがどうとか、技法がどうとかいう見方ではその素晴らしさは感じられないはずだ。

その仁平氏との沢山の話の中で、着物を売る現場ではいい意味でも悪い意味でも「わかり易さ」を求められるという内容で熱い議論となった。消費者は自分がどんな着物を選んでいいのかわからない。もっと端的に言えば、着物は欲しいのだけれども何を買っていいのかわからない。というのが圧倒的である。ましてや絹物であればそれ相応の値段であるため余計に簡単には考えられない。
だから着物は相談出来る販売員がいないと売れない。

余談だが、ユニクロが浴衣を低価格で出して浴衣市場を持っていかれたと誰もが勘違いしているがそうではない。ユニクロの浴衣売上点数は約10万点で浴衣売上金額はたったの5億円である。そしてユニクロの国内店舗数は770店であるから1店舗当り売上点数は130点となる。ちなみに私がいた大手チェーンでは店舗数は130店舗とユニクロの17%しかないにも関わらず売上は約3万4000点。1店当りは260点とユニクロの倍だ。売上効率は圧倒的に呉服店の方がいい。その要因はゆかたを買うために相談出来る専門の販売員がいるからだ。


では話を戻すと、お客様が何を選んでいいかわからないので、商品をわかり易くする必要がある。そしてその価格である理由、いわゆる付加価値をつけることになる。それが「技法のすごさ」であったり、「有名作家」であったり、「希少性」である。そうやって価値基準を設けないと消費者に勧める根拠が無くなるからだ。もちろんそれが虚偽でなければ、商品価値としての判断基準の1つになることは確かであるが、本来はそれは結果論であるのだ。

「試着をしてみて色柄がすごく気に入った。少々値は張るが、それはこの色柄を出すために大変な技術を要するためである」という順番で消費者が理解するならいいのだが、現状は全くその逆の順番である。だから消費者の共感を得られないのである。

加賀友禅の初代由水十久は木村雨山に続き、人間国宝の打診があったそうだ。しかし由水十久は「生涯無銘でありたい」とその打診を断った。何故なら「人間国宝」という称号だけで自分の作品価値を決められることを嫌ったからだ。
もちろん個人や企業が受ける賞等の評価はその努力が認められたものであり、結果的にそれが信用になることはとても良いことであるが、それが全てではない。

消費者が選択する価値基準はまずそれが好きかどうかから始まることであって賞をもらっているから、技法がすごいから、有名作家が作ったから欲しくなる訳では必ずしもない。それを小売に携わる人達は今一度見直して欲しい。
いわゆる「権威型価値の押しつけ」になるような商品訴求はかえって消費者との温度差を大きくするだけだということに気付くべきだと思う。

そこで今デフレ経済といわれている中で、着物の消費も消費者がキチンと自身の価値観で選択する傾向になってきているのではないかと感じる。古着等のリサイクル着物がいい例だ。もちろん安心して購入出来る価格であるということも大きな理由の1つだが、その選び方を見ていると、自分が好きなもの、着てみたいものという純粋な価値基準で商品選択している。そこには有名作家や技法や希少価値といった価値基準は存在しない。どれとどれを合わせたら自分のお気に入りのスタイルになるかを重要視している。ファッションとしての着物選びの本来の姿だ。

もちろん古着だけではなく、手が届く範囲の綿着物やウールやポリエステル着物などもそのようにして選ばれている。そうやって呉服屋自体が間口を広げてあげるだけで、消費者自身が少しのアドバイスで自分好みを選ぶことができる。
絹物になればもうすこし販売員のアドバイスが必要になるが、その内容もまずはそのもの自体を好きになってもらうための商品提案や説明であれば、お客様は楽しいしわかり易い。楽しくてわかり易ければ購買意欲も向上する。できればそうであって欲しいと感じる。


私は販売を指導する時によく恋愛に例える。
お客様が買う大きな理由は、まず純粋にそのきものが好きになったからである。恋愛も同じ。まず純粋に相手を好きになったからである。そして好きになる理由はないといって良い。あったとしてもすべて後付けだ。まれにお金持ちだからとかいう理由がある場合もあるが、ほとんどが純粋な感情からくるものだ。
だからお客様にやれ作家ものだ、どこどこのメーカーの物だなどから入る販売はナンセンスなのである。そんな理由で好きにはならないからである。

このデフレによって、逆にお客様自身の着物に対する価値基準が創造されるなら、呉服店の提案とそれが相まって素晴らしい共感販売が生まれることを心から期待したい。

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2010年3月21日 (日)

自然には勝てず・・・

未だ駅構内である。
ものすごい強風によって電車が止まり4時間強。どうすることも出来ない。
どうすることもできないなら、ちょうど持っていたPCで言い訳のようなブログを書いておこうと思い、駅のベンチでキーボードをたたいている。

今日はfogliaこと染色家の仁平幸春氏の工房にお邪魔をし、染色談義に花が咲いた。

仁平氏の素晴らしさは文章で表現するものではない。例えば染料は完全に天然染料を使用し、様々な媒染によって恐ろしいまでの微妙な差で色を作り上げている。恐らく多くの人が化学染料の色に親しんでいるので、草木系、鉱物系などを使用した天然染料が作り出す色がこれだけ奥深いということはわからないかもしれない。

ただ、仁平氏の作品をやれ天然染料だの、構図だのと中途半端な内容で紹介したくない。
それだけ私にとっては衝撃的な作品であった。だからこそ片手間で書くことなど到底出来ない。

ましてや今私は強風で電車がストップし、呆然と駅構内にて立ち尽くす人々と同じ状態である。
そんな状態で仁平氏のことは書きたくないので今日は予告編にしておく。

自分には負けないつもりで毎日ブログを更新しているが、なんとか形だけでも継続はできている。
ただし、この内容を見てがっかりする方も多いかと思うが、何とかご理解を頂きたい。

やはりどうあがいても自然には勝てないのである。。。。さあどう帰るかな??

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2010年3月20日 (土)

レンタルは新しいヒントとなるか?

「嫌消費」という言葉がマーケティングの中で聞かれるようになった。
バブル崩壊後の不況時代に生まれた世代の消費価値観だそうだ。もちろんその世代全てではないが、その傾向は強いようだ。車など高額な嗜好品を買うことをためらい、本当に必要なものを吟味して消費する。ある意味若者としては非常に堅実ではあるが全てが現実的であり、いささか寂しい気もする。

車といえば軽自動車の新車でも80万円はする。車という価格価値観からすれば安いかもしれないが、十分に高額品だ。しかしこの車という高額品を販売するために最も必要なのは「試乗」である。ニューモデルが出たら試乗キャンペーンを展開し、通常の販売時でもお客様の希望車種の試乗車があれば必ず試乗してもらう。では何故試乗を実施するのか?それはお客様に気になっている車を「体感」してもらうためである。

この「体感」は非常に大切である。お客様は特に高額なものについては事前にお客様なりの調査をする。カタログ、雑誌、TV、インターネット、友人、家族など今では十分すぎるほどの情報量によってかなり詳しい知識を容易に手に入れられる。ただ1つだけ調べても手に入れられないものがある。それが「体感」だ。体感することによって欲求は増長し消費意欲をかき立てる。

いま、着物ビジネスは新たな試みをしている。それがこの着物体感ビジネスだ。消費者に対して着物の良さや楽しさをまずは体感してもらおうという動きがでてきている。京都では京都産業会館に1Fにあるきものステーション京都では以前から観光客向けに安価で着物レンタルを行っているが、ここへ来て利用者が急増しているようだ。また京都市内のその他の着物レンタルショップでも小紋や紬などの着物レンタルが好評とのことである。

東京でも各小売店が着物イベントへの協賛としてレンタル着物の提供を行い、非常に好評を得ている。今日3月20日から行われる東京ミッドタウンでの着物レンタルも小売、メーカーなど約10社ほどがレンタル着物を提供している。

今まで、レンタル着物といえば、セレモニー用の式服がメインとされて来た。その代表的なものが成人式の振袖であり、ついで七五三のきもの、結婚式では留袖、男物紋付盛装、不祝儀用の黒紋付などである。これらはレンタル業として成熟した市場であり、最近は子供専門写真館の最大手「スタジオアリス」も成人用レンタル着物市場に参入し、競争が激化している。

呉服小売としてのビジネスは、これらレンタル業界との競合は全く意識していないといって良いだろう。何故なら、年間を通して中心となる商品は今明らかに式服ではなくカジュアル着にシフトしているからだ。(もちろん中にはフォーマル中心の品揃えの店もあるが)

これらがこれからの呉服小売のヒントになるのでは?と考えている。
お客様は着物自体を見て知ること以上に着て知ることの方が何倍の効果がある。

例えばこういうことも考えられる。
その店の一番紹介していきたいカテゴリーの商品を無料でレンタルし体感してもらう。十分その着物の楽しんで頂いた後、改めてその店のお勧め着物を提案する。お客様も体感し、いい意味での見る目をもってくれているため、お客様も販売員も双方が共感するような販売が生まれやすい。こういう販売であれば変な価値アップもなく、お客様にストレスを与えず美しい販売が出来るのではないかと期待している。

また、できればその体感着物レンタルは無料であって欲しい。あくまでも試着ということであるならば、有料よりも無料の方が遥かにきものを着てみたいという潜在意識を呼び起こすなど間口が広い。そして利用者が増えれば、それがそのまま集客にもなる。体感無料着物レンタルは超有効な集客手段でもあるのだ。もちろん店に無料レンタル実施中などのスローガン的告知は全く意味をなさないので、定期的なイベントや商店街やSCのイベントへの参加、地域コミュティなどとの共同企画等様々な活動から、着物を体感してもらい、良さや楽しさを知ってもらうことで、次の段階での着物提案という営業が出来るのではないかと期待している。当然無料にする場合は費用対効果のことを考えるが、少ない投資で意識の高い集客の創造が出来るということを考えればすぐにその分は回収できるはずだ。

もちろんまだまだヒント的な青写真であるためこうすると絶対にいいとは言い切れないし、じゃあどうやってそこから販売につなげるのかは、色々な案はあるにしろ、絶対的に確信出来る策はまだ少ない。しかしながら、お客様に十分体感してもらった上で、着物というものを適正価格でお勧めしていくという骨格さえあれば、次世代型の新しいビジネスモデルは構築できるはずである。

嫌消費は決して消費しないのではなく、自分の価値観に合い、十分吟味し納得した上でやっと消費に至る。
着物も嫌消費世代といわれる若年層ターゲットに体感を通して、その消費価値観を獲得することができれば大きな前進である。

是非ともこのヒントを活かせるようもっと深く詰めていこうと思う。


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2010年3月19日 (金)

きものを着るは楽しい、着るは易し

きものを着るのは文句無しに楽しい。普段はきものビジネスの仕事をしているのでどうしてもああだこうだと理屈を捏ねることのほうが多くなるのだが、きものを着ると理屈はどうでもよくなる。
そして困ったことに、きものを着るとそれに関連した物が無性に欲しくなる。この時ばかりは女性の気持ちがよくわかる。新しい雪駄が欲しくなったり、信玄袋のおしゃれなものが欲しくなったり、柄足袋などもバリエーションを増やしたくなったりする。女性ほどアイテムが豊富ではないので、逆に助かる。女性と同様にきもの関連アイテムが豊富にあったら絶対我慢出来なくなる。

きものを着る楽しさは着方の楽しさでもある。自分なりに考えて好きなように着ればいい。もちろん今の基本となる着方でもちょっと崩した感じの着方でも、おしゃれ着なら自由だ。

今日もたんす屋さんの打合せで渋谷系ファッションのカリスマデザイナーで大ブレイク中の甲冑パンツのデザインをしたことでも有名な大友千里さんとお会いした。大友さんは日本舞踊の家元でもあるし、「芸者デザイナー」という珍しい肩書きもお持ちだ。その大友さんの今日のファッションは白地の江戸小紋に名古屋帯でその下に黒のニットのタートルネック、見えないが足にはレギンスも。そして履物はブーツだ。けれども全く奇抜ではなく自然だ。それにしっかり「きもの」である。さすがこういうスタイリングもあるのだと再認識。

たんす屋の中村社長もきものの下は白のシャツで、しかもそのきものは女性ものだという。上に羽織、下は裁付袴で足下はかっこいいブーツだ。その二人が並ぶとまた似合うこと。今日ほど洋服だったことを悔やんだことはないくらいだ。

もちろん本来の着方もいい。清楚さ、品の良さがあふれ、独特の女性らしさがさりげなく感じられるところがいい。そして着る人なりの目立たない工夫が沢山詰まっている。これもまた今の基本としての着方のいいところである。

このように本当に着方は千差万別であり、着る人の工夫や遊び心、粋さ、優しさなど数えきれないほど存在する。きものを着るという楽しさの共感がもっとできないだろうか?

3月7日の日曜日、京都できものを着て楽しむイベント「京都kimono jack」の第1回目が開催された。このkimono jackは参加自由で、ツイッターでも告知された。(パンフレット告知も)あいにくの雨模様だったが沢山の参加者が集まり、京都の街をきものが彩ったようだ。ツイッターでの実況レポートもあり、記念すべき第1回目は大成功だったようである。メディアにも取り上げられたほどだ。

Kimono jackの素晴らしさは純粋にきものを着ることを楽しんでることだ。なにもどこかの企業が仕掛けた訳ではなく、参加も自由で無料。こういう活動をすることで、きものを着て出かけたかったが1人ではいまひとつ勇気がなかった人がこのイベントをきっかけにきものを着ることを始められたとか、みんなで好きなきものを着ることできものを着る楽しさの再認識ができたりなど様々な「着る喜び」が生まれたことが何より素晴らしい。

また、このkimono jackがきっかけでツイッターのきものファン達が全国各地できものを着るイベントを呼びかけ、今知る限りで山形、東京、大阪、富山、福岡、宮崎で開催されるようだ。物凄い効果である。東京ではすでに「着物de銀座」や「きもの日和」、「隅田川きもの園遊会」などが定期的に行われているが、きものファン達が自主的に呼びかけイベントを開催するという動きは、このkimono jackの影響といって間違いない。京都kimono jackもすでに2回目が4月4日に開催が決まっているようだが、今度こそは晴天に恵まれて欲しいものだ。

その他にも色々なシチュエーションできものを着るイベントが出てくるとなおいいと感じる。今日の打合せの中で、「どうして花火大会は数十万人という浴衣姿が当然のように集まるのに、花見はいまひとつ着物姿が少ないのは何故だろう。」という話が出た。浴衣で花火が夏の風物詩ならきもので花見が春の風物詩になってもいいではないか。飲んで騒ぐだけが花見ではない。満開の桜をみて春の息吹を着物姿で感じるなんていうのも日本らしい季節の楽しみ方だ。秋はきものでお月見、冬はきものでクリスマス、きものでお正月など。考えようによっては幾らでも着る機会はあるのだ。日本の暦に二十四節気があるが、それを合わせてみても風流だ。


きものを着るということはとにかく楽しいし嬉しい気持ちに包まれる。
だから着付けが出来る人はどんどん着て欲しいし、着たいけど着れないと思っている人にどうか着せてあげてほしい。そして思うより着付けは簡単であることを教えてあげて欲しい。そうすることでkimono jackのような楽しいイベントはもっともっと活きてくるかもしれない。いや、そうあって欲しい。。。

きものを着るはたのしい。そして着るは易しなのである。


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2010年3月18日 (木)

染色補正という医学

毎日のように衣服を着ていれば、洗濯は欠かせない。今はすごい性能の洗濯機が各家電メーカーからたくさん出ており、いままでクリーニングに出さなければ落ちなかった汚れやちょっとしたシミまで全自動でキレイにしてくれる。文明の利器とはすごいものだ。

しかし、着物はそうはいかない。洗える着物と銘打ったポリエステル素材の着物でさえ洗濯機に入れてあとはお任せとはいかない。自分で洗う人もいるが、手洗いでやさしく洗わなければ後々取り返しがつかなくなることもある。ましてや絹の着物ならなおさら自分で洗う訳にはいかない。今はクリーニング店でも絹の着物を扱う所も増えて来たが、やはりかなり気を遣うようだ。

1、染色補正技能士とは
そんな着物の直し専門の職人がいることはご存知だろうか。正式名は「染色補正技能士」でこの技能は昭和46年に労働省から認定された染み抜きなどの補正技能の唯一の国家資格である。技能級として1級と2級に分かれておりその試験は学科と技能があり非常に厳しい狭き門である。

2級技能士の受験資格は実務経験2年以上、1級技能士経験が7年以上あるいは2級合格後の実務経験2年以上というもので、誰でも受けられる試験ではない。学科試験は実に50問!実技は2級で3課題を4時間半かけて。1級はより難しい3課題をなんと6時間もかけて試験するという超難関だ。
またその地位も法的に守られており、職業能力開発促進法により、染色技能士資格を持っていないものがその名を称することは出来ないのである。これは和裁士も同様だ。

2、染色補正技能士の仕事と匠の技術
染色補正技能士の仕事は様々だ。身近なところでは「しみ抜き」が一番解りやすいだろう。しかしこのしみ抜きが容易ではない。もちろんすべてが手作業だ。付いたシミがどんなものかを詳しく調べ、そのシミの成分にあった薬品をその都度調合する。しかも生地にダメージを出来るだけ与えないように優しく優しくだ。そしてどんなに簡単に落ちたシミでもいっしょに地の色が抜けている場合がほとんどだ。その地色が抜けてしまった部分を回りの色と全く同じになるように染色補正していく。その補正具合といったらまさに神業だ。

また絹の宿命であり、別名「絹のガン」とも呼ばれている黄変も完全にとは言わないまでもほとんどわからなくなるまでに落とすことが出来る。また圧巻なのは最も難しい部類に入る「柄の中の黄変ジミ落とし」だ。よくそこまで出来るなというくらい細かい作業で黄変を落としまたは抑え、脱色してしまった部分を見事なまでに染色補正技術で再現する。まさに匠の技だ。
もちろん他にも「紋様消し」「地直し」「ボカシ合わせ」「小紋直し」他さまざまな直し技術を持っておりまさに着物版スーパードクターだ。

3、直しの分野をいかに活かすか
そんな染色補正技能士も呉服業界の市場縮小とともに激減している。着物売上が激減するのと平行して直し依頼も激減している。この着物の直しに関わる人達も呉服が売れなくなるのは死活問題だ。昨今の古着人気でイメージ的には直し分野に需要があるように思われがちだが、古着を買う人は殆どといっていいほど直しをしない。古着は古着として認識して着るために直すという観念がそこには存在しない。また、「きものを着る」という行為に平行して直しは発生しやすいのだが、着用率は低下の一途を辿っており、当然ながら直しの仕事は減っている。

もちろん京洗いやシミ抜きなどの受注は小売店から、またはクリーニング店で手に負えないものの依頼などが中心ではあるが、問屋からの依頼も非常に多い。その問屋が業績不振になれば補正業の仕事も減ってしまう。ひとくちに呉服の流通構造の見直し等と簡単にいうが、それによって仕事を確保している人達に大きく直撃することも忘れてはならない。

*ネット通販との連携の可能性
では、この直しの分野の仕事をどう活かしていくのかということが悉皆(しっかい)分野のきものビジネスを考える上でしっかり考えることが重要だ。
まずは小売店からの受注を広げてくことが一番早い。今までは実店舗からの受注契約という形が多かったが、成長しているネット通販業者との連携強化も絶対的に視野に入れるべきである。現時点でネット通販でお手入れサービス等を平行しているところは非常に少ない。物流費コストの問題やお預かりする着物に万一のことがあった場合のリスクは計り知れないものであるからだ。

逆にネット通販を利用する着物購入客はあまり実店舗には足を運ばない傾向が強い。これはたくさんの選択肢の中から選ぶ楽しさや価格の明確さ、きものを勧められることの恐怖感への回避などが理由だ。であるなら買った着物をケアする場合に呉服店へ持っていくのも勇気がいることとなる。現に着物を扱うクリーニング店への受注がにわかに増えていることも確かだ。

この状況を把握し、ネット業者側のリスクや物流費などのコスト負担を解消した上で実店舗よりも低価格であらゆる直しに対応出来るケアサービスをネット業者と提携しWin−Winの関係が作れたら新たなビジネスチャンスが生まれる可能性がある。きものネット通販市場規模500億円のうち仮に1%の5億円がケア売上として新たに捻出されるのなら大きなチャンスである。もちろんこれには様々な壁があるとしてもチャレンジする価値は大いにあると考える。

その他、異業種との連携も視野に入れたい。「人形の衣装直し」「ファブリック系のインテリアの直し」など他業種がクリーニングとして持ちこむものには全て別の形で可能性がある。着物だけではないそういった布に関係する業種との連携も視野に入れるとマーケットは広がるかもしれない。


しかしながら、やはり染色補正技能士は呉服中心であって欲しいという願望は強い。だからこそビジネスの安定を図るには数多くの呉服関連企業との連携は必須だ。それを土台として消費者、ネット、異業種といった仕事の巾を広げていくと良いのではないかと思う。

ここで着物を愛する方達にぜひともこの染色補正技能士という職人の存在とその技能の素晴らしさを知っておいて欲しい。彼らがいるからこそ、汚れやシミ、黄変、その他の直し等が可能であり、着物がいつまでも長持ち出来るのだ。

最後に皆さんに染色補正技術の重要さを是非とも理解してもらうべく、染色補正技能の教本の一節を紹介しておく。

「染色補正とは、これら一旦損傷した染織品の生命力を延ばすために特別な
 技術をほどこし、経済的価値を復元する治療医学ともいうべき 染色分野に
 おける欠くことのできない重要な技術である。」
 (染色補正の技術・技法より)

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2010年3月17日 (水)

価格はお客様が決めるもの

今日は私がとても会いたかった人に会うことが出来た。もちろん仕事上でだが。とにかくスケールが大きい。仕事もさることながら人というか心のスケールが大きい。私はどうしても向こう気の強さが随所に出てしまうタイプなのだが、その人は冷静で深い。こういう人にはどうしても惹かれてしまう。いい仕事ができればいいなと心から思う。

その帰りに用があって新宿に寄ったのだが、駅前の喫煙所に集まったスモーカー達をみて「もしタバコが1000円になったらこの中で何人禁煙するのだろうか?」と思った。私もヘビースモーカーの部類に入る1人である。体に悪いということは重々承知だがやめようとはあまり思わないのが救いようがないのだが。しかし1000円になったらかなり考えると思う。なぜならそこまで上がると買おうとは思わなくなるからだ。

新しい商品を開発するときにはマーケティングから入る。コンセプト、ターゲット、トレンドなど数値と現状と予測などを徹底的に検討する。そして大切なのは価格とコストである。もちろんコストは会社都合の指標ではあるが、価格は会社都合とはいかない。企業のバイヤーは価格を起案するが決定権は基本的にトップの最終判断であることが多い。

ここで大きな過ちを起こし易いのが「いくらになるか」と「いくらで売れるか」だ。OEMにしろ仕入れにしろ呉服は「はじめにコストありき」になってしまう場合が多いようだ。最終の製品原価がいくらだからそこに値入れ分を足して価格(上代)を決めているケースがまだまだ多い。そうなってしまう気持ちもわからないではないが、そこにはお客様がいない。

上記のケースは主に「仕入れ」の場合によく起きることなのだが、コスト積み上げ方式の価格決めは、あとですぐ見切りになる場合が多い。仕入れにしろ委託にしろ「いくらで売れるか?」が事前にないと結局はお客様からはじかれてしまう。端的に言えば「お客様にお買い上げ頂く=お客様に支持された」ということなのだ。であるなら「お客様に支持される価格」というものが基本的に適正価格となる。もちろん安価であればあるほど買上率はアップするが、収益率は価格が安価になればなるほど低下する。当然商売である以上は「収益率」は大切だ。であるから、「お客様に支持される価格+収益目標を満たす価格」が適正価格となる。

ただしこれが非常に難しい。価格はそのカテゴリーの買上率の高い価格周辺を候補として、かつ原価率との関係性で決めていくことが基本であるが、その他に色柄やブランド、クオリティーなどでも微妙に変わっていく。それらを細かく検討した上で「売れる価格」を割り出し、販売予測を立てた上で初めてMDという作業に入っていく。

仕事柄様々な小売店をリサーチし無数の商品や価格を見る機会があるが、やはり先に述べたような適正価格を設定しているところは、売上もそして販売の質も高い傾向にある。その逆はどうしてもそれなりだ。

また「売れる価格」を決めたとしても原価率を満たすとは限らない。メーカーもメーカーなりの「売れる価格」があるからだ。メーカーもきちんとしたマーケティングやトレンド、品質とそこから割り出したコストによってきちんとした価格を設定しているからだ。よってここからは小売とメーカーとの協議になる。OEMなどこれから作る物に関してはコンセプトをメーカーと共有し共感してもらうことで適正価格の実現を図れるし、既存商品の仕入れなら、リスクの所在によって異なるものの双方の共感が必要となる。

本当に価格は難しい。かといって販売の現場でお客様の言値にする訳にはもちろんいかない。価格は失敗の連続だ。
しかし、これだけは絶対にいえる。価格はお客様が決めるもの。お客様が支持するからこそ「買う」という行為が生まれる。

価格はお客様が決める。この姿勢を崩さない限りその商品は価格以上の輝きをもたらす。

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2010年3月16日 (火)

呉服関連教育ビジネスへの挑戦

以前のブログのテーマで「2010年人財教育元年」という内容を記したが、再度そのことについて端的に述べ、私自身としてもこれからの呉服業界を担っていく人財育成を責任を持ってやるために、あえてビジネスの一環と捉えて挑戦していきたい。
その内容をこのブログを通して呉服関連を指導している呉服関連企業の人事部門、各きもの専門学校、きもの学院、大学、高校などに訴えていきたい。また、毎日このブログを読んで頂いている方々には、今回だけはこういう内容になる事をご了承頂きたい。

きものビジネス教育参入の目的とビジョン

1、 次世代呉服ビジネスモデルの構築と実現を担う人財教育に注力する。

呉服業界は2008年度市場規模が4033億円と1993年のピーク時売上の3分の1強まで縮小し、今年度は更に20%減の3210億円と予測されている。その要因として、一部小売業者による過量販売を発端とした業界不信とそれに伴った割販法、特商法の改正による販売規制、世界同時不況による消費低迷など外的要因によるものが目立っているが、実質上は未だ新しいビジネスモデルを構築出来ない、または受け入れられない硬直化した業界慣習が変化への対応と新成長を妨げていることが大きな問題である。それによって次世代を担う人財教育が効果的に行われていない事も事実である。

2、 この10年が呉服業界の将来を決めるほど重要

今までの呉服業界の慣習を確立し、ビジネスモデルを構築してきた世代が一斉に交代するのがこの10年間。ここで、きものビジネスやマーケティングを身につけた視野が広く、柔軟な発想を持った若い人財を育成する事で、次世代型の新しい着物ビジネスも出るが構築でき、呉服業界が新しい成長を遂げられる絶好のチャンスであることは間違いない。
逆に言えば、ここで次の人財育成に力を入れなければ、企業は存続に関わる事となり、各教育機関は就職率の低下や学生募集に大きな影響を及ぼす可能性がある。


3、 技能重視の教育から技能+ビジネス力、マーケティング力を持った総合力のある人財育成が絶対条件

呉服業界には「着付ができる」「和裁士の資格をもっている」「商品企画を学習した」などある程度の着物知識と技能を持った人が即戦力と期待されて入ってくる。しかし、小売や卸業等の現場の実情や業界の仕組み等はわからず、ただ着物が好きという純粋な動機がほとんどであるため、その後の定着率が低いのが現状。そこで学生のうちから、または新人のうちから業界構造の把握やマーケティングの基礎を身につけることで、営業部門やクリエイティブ部門、または和裁などの技術部門の分野で自らの考えや発想を発揮出来る無限の可能性を持った人財育成が創出できる。
技術+ビジネス力、マーケティング力を持った総合力のある人財育成が今だからこそ望まれる。


上記をまとめると
1、 次世代呉服ビジネスモデルの構築と実現を担う人財教育に注力する
2、 この10年が呉服業界の将来を決めるほど重要
3、 技能重視の教育から技能+ビジネス力、マーケティング力を持った総合力のある人財育成が絶対条件

これらを本格的に呉服教育関連にPRしていく。
現在私は東京のきもの専門学校や高校の被服科などで講師をしているが、学生の意見としては、やはり自分が学んだ技能がどう企業で活かさせるのかが心配であるとか、ある程度のきものの勉強はしたけれども呉服業界のことは全くわからないからかなり不安という声が圧倒的に多い。
また、現に就職している人達からも、色んな事は教わるけれども根本的なところがどうしてもわからず、自分がやっている事がどの段階の事なのか?自分の仕事のポジションがどういう物なのかが見えずモチベーションが維持出来ない等の意見多い。

呉服業界の構造は確かに複雑であり、自分の仕事がどう活かされるかが見えてこないことで「考える」や「自分なりの工夫」が出せなくなることもある。そのストレスの蓄積が定着率に大いに関わってくる事を真剣に考えて欲しい。

今の新人や学生の特徴は自分の仕事をキチンと納得した上でやりたいのだ。我々の世代のように何だかわからないけどとにかく言われた事を尻を叩かれてでもやるといった時代の考え方とは根本的に違うのだ。

そういった意味でも、是非ともきものビジネス論やマーケティングといった科目の導入を検討して頂きたい。また、いまはそれを教えることを仕事としている人はあまりこの業界ではいない。だからこそ私はあえてその分野に参入して人財育成に注力していきたいと強く思っている。


追記
このブログを読んだ方で呉服教育機関または関連に携わっているならば、是非ともご検討頂きたいと思います。
また、私のプロフィールはこのブログでご確認頂き、またそのプロフィールページから是非ともメールにてお問い合わせ頂けたらと思います。

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2010年3月15日 (月)

きものはリアルクローズなのか??

「リアルクローズ」この言葉に悩まされている。直訳すれば「現実的な服装」である。先に開催された東京ガールズコレクションはこのリアルクローズが大テーマである。今までのファッションショーは東京コレクション、ミラノコレクション、パリコレクション、NYコレクションなどデザイナーがファッショントレンドを構築しそれぞれの想像力やブランドポリシーなどを形にして発信するもので、その物自体は「リアル」ではない。

東京ガールズコレクションはその逆でリアルである事がコンセプトの1つであり、その場で携帯端末などをつかって即購入できる。すべてがリアルなのである。その売り上げたるやどこに不況があるのかと言うくらい完売の嵐だ。ファッションもリアルなら、売上もリアルである。まさしく「リアルクローズ」というテーマにふさわしいファッションイベントだ。

このブログをご覧になっている方なら誰でも知っている事だとは思うが、その東京ガールズコレクションに初めて着物が参入した。これは私もブログで紹介したが、確かに画期的であり着物をF1層にPRできる大チャンスだ。

ただ、ここで考えてしまった。きものはリアルクローズなのか?ということを。
確かにきものファンは現実的にきものを着ているし、さまざまなスタイリングを工夫したりして楽しんでいる。そういう意味ではリアルクローズである。
ただ、これまで「きものを着せられた」ことはあっても「きものを着た」ことのない人にとってきものはリアルクローズなのであろうか?

きものをファッションというカテゴリーのなかの1つとして捉えるためには、きものの知識や経験など関係なく、簡単に入っていけるものでありたい。ある意味浴衣がいい例だ。浴衣がカラフルになったことで一気に夏のファッションというカテゴリーに仲間入り出来たのも簡単に入っていけたからである。着付けが出来る出来ないは別にしてとりあえず入ってしまおうという感覚だ。これは完全にリアルクローズと言えるのかもしれない。値段も手頃という事もある。きものを着た事がない人でも手軽にきもの体験もできる。


こういう間口の広さがすべてのきものにあればリアルクローズとなるのだろうか?リアルクローズが「現実的な服装」であるならば、きものにも「現実的な価格」「現実的な着やすさ」が必要になってくる。特に「現実的な価格」という面でその証拠に残念ながら、今回の東京ガールズコレクションで出品したきものは未だ1枚も売れていないそうだ。メーカーが直接誰かに販売したというのは別にしてだが、ショップでは問い合わせはあっても売れてはいないそうだ。

もう1つはフォーマルとカジュアルという分類がわからない人が圧倒的に多い。これはきものファンなら誰でもわかることであり、分類がわからないなんて想像出来ないかもしれない。実際には必ずと言っていいほどどこに着て良いのかを聞かれる。振袖はわかる。訪問着も名前からして何となくわかる。でも小紋や紬はわからない。付け下げもわからない。色無地もわからない。これが今の現実であることは間違いない。

ツイッターでのきものの呟きで「友達と出かけることになって着物を着ていったら友達に何で着物?って聞かれて悲しくなった」とか「紬を着てホテルの食事に出かけた時、偶然会った知り合いから今日は結婚式?て聞かれた。紬着ているのになあ」などこういった呟きは非常に多い。要は着物を着る=特別なことという目で見られているのかも知れない。

こういった背景から着物はリアルクローズなのか?と考えてしまった。
これだけ着物好きがいて、これだけいつの日か着物を着てみたいと思っている人は山ほどいるのに、まだ何かが壁になっている。そして微妙に遠い。

これから着物の間口を広げていくにはどうしたらいいのか?このリアルクローズという言葉はもしかしたら最大のヒントになるかもしれない。だから私はあえてこれからもこの言葉を考え続けていきたいと思う。

果たしてきものはリアルクローズなのか?

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2010年3月14日 (日)

マインドシェアの獲得

誰にでもお気に入りの店があるはずだ。例えば女性は必ずと言っていいほど美容院は決まっているはずだ。あとはいつも行く喫茶店、パン屋さん、レストラン、もしかしたらスーパーもその中に入るかもしれない。そして呉服店も。

行きつけなるにはそれなりの理由がある。安いから、美味しいから、店員さんと顔なじみだから、接客態度がいいからetc…理由は無限に人それぞれにあるが、そのほとんどが「私のためにあるお店」という感覚に近い。これのような状態をマーケティング的にいうと「マインドシェア」という。

1つの企業レベルではマーケットシェア(市場占有率)の向上を目指すのが一般的だ。たとえば、ビール市場で自社の商品のマーケットシェアがどのくらいあるか、また1ブランドに対するマーケットシェアは?などとある意味、売上を総合的に判断するための指標ともなるし、マーケティング目標にもなる。

その一方でお店という商圏やターゲットが絞られている規模はマーケットシェアの獲得よりも顧客のマインドシェアの獲得が大きく業績に関わってくる。
経済学者のレビンソンがいうには「スモールビジネスに於けるマーケティングのゴールはマインドシェアの獲得である」とのこと。

確かにそうだと思う。呉服店でいえば、きものというキーワードが浮かんだ時に真っ先に出てくるお店でありたいし、着物関連商品を買うならそのお店でという心の中の占有率をいかに高めるかがある意味営業力になる。また、このブログでは何度も言っているが、新規客を獲得するには相当の労力とコストがかかる。割合としてはリピーター集客の5倍だ。であるから、せっかく獲得したお客様をキチンと顧客管理システムの中に落とし込み、「着物関連のことならこのお店」というMy shopという状態にいかにするかで再販率が変わってくる。

そのためにはどうするか?
今までの催事などの集客方法は電話作戦と称した勧誘をしてきた。しかし、それまで何のコンタクトもせずにいきなり催事動員電話をするものだから、お客様としては「しつこい電話」「売る時ばっかり連絡してくる」などあまりいい印象を持たれなくなった。つまり、お得意様意識を高める方法が売り出しの電話連絡と言う端的な方法しかされていないのが現状だ。

マインドシェアを高め、お得意様意識を高めるためにはそうはいってもフォローと適度なコンタクトが必要だ。1つの方法としては、お手入れキャンペーンなどの実施によるきものケアや相談を定期的に開催し、親身になって相談、またはアドバイスすることで印象度を高める、信頼感を高めるなどのコンタクトを図るものがあり、これはかなり効果的である。

2つめにはネット通販では当たり前になっているが、メールマガジン的な情報提供である。売り出し等の情報も必要だが、きものの豆知識やお役立ち情報などを定期的に発信するのも効果的だ。何もメールでなくていい、手書きの封書でもいいのだ。

3つめは催事以外の電話コンタクトを月で1回でいいからとっておくといい。中々全員は難しいまでも、1日1件なら1ヶ月あたり20出勤としても20件は掛けれる。2件なら40件。新規購入客から優先的に掛けていくなどしてコンタクトをとる努力をする。話題は営業以外のことがベスト。お手入れの話題、あるいはどこかのショッピングセンターに入っているならその特価情報なども返ってお客様には嬉しい情報となる。こういうことをしていると、催事勧誘の電話も違和感がなくできる可能性が高い。

例として代表的な物を挙げたが、他にも方法はたくさんある。その店や地域性、業態に合わせてすることがベストだ!

とにかくお客様の心の中に強くインプットさせる。これがマインドシェアの獲得のための第一歩だ。これを是非とも意識してみて欲しい。
特にネット通販におけるアクセス数に対しての購入率は1%弱。だから購入客に対するマインドシェア獲得努力はかなり先進的だ。ある意味ネット世界でのメルマガの役割はもうすでに低くなっていると言って良い。新たなフォローの仕方が様々な形で確立しつつある。

小売業にとってお客様の再販率は非常に重要だ。それはお客様支持率でもある。
どうか、公約をかかげておいて期待はずれになるようなどこかの政党のようにならないよう、支持してくれいているお客様により永く愛してもらえるようなフォローをして欲しい。それがマインドシェア獲得の一番の方法である。
最後に今回の内容はマーケティング論になるが、私のツイッターのフォロワーの中に京都大学経済学部の若林靖永教授がいらっしゃる。マーケティング論のスペシャリストだ。このブログを見ていない事を
心から祈る(笑)

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2010年3月13日 (土)

「常識」・「非常識」・「不常識」

「常識」と「非常識」と「不常識」ということばを以前何かの本で読み、それ以来ずっと何かを考えるたびに当てはめることにしている。

これを仕事の考え方に当てはめると「常識」的な仕事はある程度の成果を生み、割合無難に事が進む場合が多い。ただし変化に弱い。「非常識」的な仕事は敵も作りやすいし、苦難がつきまとうが新しいものを作り出す可能性があり、時に予想もつかないような大きな成功に繋がる。「不常識」的な仕事は絶対にやってはいけない事である。絶対に変えてはいけない部分いわゆる神の領域だ。

私のブログを読んで「たんす屋」でおなじみの東京山喜さんの中村社長から連絡を頂いた。ある内容の件で大変共感して頂いたらしい。中村社長とは私が(株)やまと時代に名刺交換したくらいでじっくりお話しした事はなかった。当然中村社長も記憶にはなかったようだ。

今日から目黒雅叙園で行われている「きもの日和」に参加しているとのことで、お会いする事となった。
たんす屋というとほとんどの方が「リサイクルきもの屋さん」という認識であるし、間違いではない。しかしそんな単純なビジネスではない。コンセプトは「きものライフスタイルソリューション」である。解りやすくいうと「きものを売る」「きものを買い取る」「きものをレンタルする」「きものを預かる」「きものをお手入れする」という5つのビジネスソースの集合体だ。

たんす屋自体の商品はリサイクルきものが主体であるが、このビジネスソースのサイクルそのものが「リサイクル」になっていることをお気づきだろうか。これが今まで誰も出来なかった「きものに於けるライフスタイルソリューション」であり、今では様々な形態の古着ショップはあるものの、この形自体は未だに真似が出来ない。だから強いのだ。

さて、その中村社長と2時間近くじっくりお話し出来たが、それはもうとにかく熱い語りとなった。その内容は企業秘密的な話なのでここでは書けないが、なるほどそれはスゴイ!といういい意味での「非常識」だ。

そうなのである。なぜこんなに中村社長に惹かれるかというと、「非常識」だからである。この硬直した業界の中で数々の「勇敢な非道」をしてきた方だ。

そもそも東京山喜は問屋業であった。それを中村さんが社長になってから、消費の変化や時代の変化を見て、古着という分野ときものファンへの間口を広げる今のビジネスに、大胆にも転換してしまった。簡単に言えば問屋業をあっさり捨てて小売業に大転換した。これはトンデモナイそして素晴らしい非常識だ。

また着眼点もたまげる。日本の全女性人口を仮に5000万人(子供を抜かしたとして考えて)としてその中できものを着られる割合が8%だそうだ。そうすると着付け出来る人口は40万人として残りの4960万人は着れない。日本中の着付け学校の生徒数をかき集めてもきものを着る技術の普及は不可能であるとし、ならば発想を変えてしまえ!というこれもまた非常識発想なのである。しかも理想論ではなく現実論としての本当にリアルな「じゃあどうする」を持っているのである。もちろんそれもここでは言えないが。。。。

こういう着眼点は必ず何かを発見する。様々な発見をビジネスや消費者のことを基本として仕分けしたり、磨いたりして初めて稼働するのである。非常識発想はいくつもの発見を生み、その発見がビジネスにつながる。「非常識」は新しいビジネスの創造をする大いなる非道なのである。

呉服業界は常識の中で動いている。それは否定しないし、否定したとしても何も変わらない。ただある意味真面目すぎるのである。だからこそ大きな変化に対しての対応が遅くなってしまうというのも現実だ。

かといって過量販売などのコンプライアンスに違反する「不常識」を行ってきたのも現実だ。神の領域にふれたことで、神の怒りをうけ消えて行った企業もたくさんある。これからも「不常識」である神に領域に絶対に触れてはいけないのである。
どんな企業にとっても一個人にとっても「常識」「非常識」「不常識」という考え方で整理する事が、最も大切なのである。

今日の内容はほとんど中村社長の話となったが、すっかり魅せられてしまった。根拠ある非常識者でしかも謙虚である。そして今の変化と将来の変化を常に見ている。
次の「非常識」が楽しみになってきた!

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2010年3月12日 (金)

顧客管理の重要性

お客様を知る上でのもっとも重要なことは顧客管理である。これがしっかり出来ているかどうかで店の営業ももっといえば存続に関わるくらい重要だ。
高級ブランドで有名なルイ・ヴィトンも顧客管理が徹底している企業として世界的に有名だ。日本で初めてルイ・ヴィトンを購入したのは土佐出身の幕末の志士で後の維新政府にも関わった後藤象二郎である。明治16年1月にパリのシャンゼリゼ通りの店で旅行鞄を購入したそうだ。それも顧客名簿にしっかりと記録されているのだ。

1、 顧客管理とは何か
小売業にとって顧客管理はもっとも重要な要素である。ひと言でいえば、
顧客管理=次回売上である。商店街の魚屋や八百屋を思い出してほしい。その店主は記録さえしていないが、買いに来た常連さんがどこに住んでいる人かは大体わかっている。そして前回何を買ったかも覚えている。たとえば「奥さん!昨日のマグロの刺身美味しかったでしょ?今日はブリのいいヤツが入ってるんだよ!昨日刺身だったから今日はブリの照り焼きなんかどう?お安くしておくから!」

という具合に、誰に何を販売したかを記憶しておくことで次回売上に繋がるのである。ただ文章にすると非常に簡単に思えるが、なかなかそうはいかない。ほとんどの顧客管理はお客様カードのようなものに情報を記入するか、またはPCによるデータ管理がほとんどであろう。しかしそれだけでは管理ではなくタダの整理だ。

まずはお客様の情報量だ。この場合の情報量とはお客様の素性ではない。お客様が当日どんな服装だったか?どんな会話をしたか、どんな商品に関心を持っていたか、どんなセンスがお好みかetc…果たしてここまで記してあるだろうか?

お客様がいちばん嬉しいのは、再度来店したときや何かのお知らせをした時に覚えてくれているかどうかだ。住所、氏名、年齢、職業という決まりきったものではなく、お客様と接したときの小さな思い出が語れるかどうかである。そしてそれを覚えておくことができるかどうかである。お買い上げのお客様だろうが、お買い上げしていないお客様だろうが同じ大切なお客様である。そこに差別があってはいけない。だから再来店なされた時に「○○様、またご来店頂いてありがとうございます!」と言えるくらいの接し方をしなければいけない。

顧客管理とは自分が接し、お買い上げの有無に関わらずお名前やご住所を教えて頂いたお客様は覚えなくてはいけない。そのために必要なのは月に一回の名簿棚卸しだ。自分が担当しているお客様カードをきちんと見直し、その記録を確認する。この作業をキチンと続けていれば、「○○様!お久しぶりです!」というご挨拶が間違いなく出来る。お客様カードは記録でもあり記憶でもあるのだ。


2、 顧客管理はすべての営業に波及する
顧客管理=次回売上といったが、より多くのお客様を得るためには、店構えに工夫が必要だ。そして魅力ある商品構成が必要だ。また、それらをご提案するためにはきちんとした販売力が必要だ。それで得たお客様に次回もご来店頂くために管理が必要となる。だから、購入の有無を問わず、すべてのお客様を顧客化する必要があるのだ。

よくあるパターンは小物購入のお客様はあとにつながらないと思ってきちんとした接客をしない。そして顧客化しようという行動をしない。小物をお買い上げになるお客様は着物を着るから小物を買う。和雑貨のお客様も和物が好きだから、あるいは関心があるからお買い上げなさる。それを店側の勝手な思い込みでお客様を見極めようとする。それでいて集客ができないと嘆くなんてとんでもない話だ。そういう店は一生客数は増えることはないのだ。

普段からお店に立ち寄ってくれるお客様や小物をお買い上げ頂けるお客様は未来の上お得意様という意識で、全てのお客様にベストを尽くすお店は、どんな立地条件でもキチンと集客ができる。ここに大きな違いが出てくるのだ。だからこそ顧客管理をきちんとしているお店は結果的に売れるお店である。

顧客管理のスキルアップ=営業全体のスキルアップであり、顧客管理はすべての営業に波及するのである。

まとめ
1、 顧客管理とは何か?
2、 顧客管理は全ての営業に波及する

上記は例として実店舗に関して述べているが、インターネット通販においてはかなりきちんと顧客管理している場合が多い。お客様の自体が見えないからこそ、顧客であり続けて頂くために様々なアプローチをし、マインドシェアを獲得するために必死だ。だからこそリピート率も高くなる。
実店舗においては見習うべき点は非常に多い。
顧客管理をきちんとシステム化し、徹底して浸透し当たり前のこととなった時にその店の業績も自然と向上してくる。
是非とも今以上にお客様を大切にし、お客様に「私の店」として認知されるような営業をして欲しいと願う。


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2010年3月11日 (木)

辛くて面白い思い出話

私が大手チェーンバイヤー時代、様々な辛い経験をした。別にここで苦労話を自慢するのではなく、今思い出すと笑ってしまうエピソードが沢山ある。今日はゆる〜い内容でそれらを紹介したい。


1、 サンプル返品間違いで大騒ぎ
アシスタントバイヤーとしての最初の仕事は、サンプル商品や借りている商品を取引先に返品する作業からはじまった。私は帯を担当していたが来る日も来る日も返品作業。もちろん商品毎に取引先が違うから仕分けるのが大変だ。最初はどれがどこのだかわからないので、値札や商品コードから取引先を判別していた。しかし、一番厄介なのは開発中のオリジナルサンプル品だ。値札もなければ、コードもない。あるのは入荷時の確認用の仮伝票だけ。

そして予想通りそのサンプルを違う取引先に返品。それも1社だけならまだしも4〜5社分間違えた。それも各社には知られたくないオリジナルサンプルだから大騒ぎ!案の定、西陣メーカー各社からは「こんなのやってはったんですか〜」「うちにはこういう話は頂けませんでしたよね〜」全部バレバレ!ただでも厳しいこの世界。この後どうなったかはお察しの通り。。。


2、 新幹線での出来事(その1)
やはり呉服バイヤーは圧倒的に京都出張が多い。担当商品によって異なるが私の場合はほぼ毎週京都だった。アシスタント時代は先輩と同行出張。しかも私を教育してくれたのは西陣では「帯の神様」と言われるこの道40年の大ベテラン。社内でも厳しいので有名だ。

帰りの新幹線での出来事。いつものように京都伊勢丹の地下でつまみをシコタマ買い集め、東京駅まで飲み続ける。そのとき私は飲み方の礼儀等は知らず、安易にビールを左手に持ちながら、右手に箸を持って何かツマミを取ろうとした瞬間「馬鹿者———!!」と怒鳴られると同時に頭を思い切り引っ叩かれた。「飲むのか、食べるのかどっちかにしろ!」と言われた。ビールの缶を持ちながら箸も同時に持つ飲み方は、もし取引先との一席なら品位を疑われる非礼な行為だということなのだ。

そして、車内に割れんばかりの大きな声で「恥ずかしい!帰れーーーー!」
でもよく考えたら帰りの新幹線。時速250キロで帰ってる最中。どうしたら良いかわからなくなり、ひたすら謝り、ひたすら酔わして誤摩化すしかなかった。


3、 新幹線での出来事その2
いつも乗る新幹線は大体東京発午前6時半。そうすると1件目の取引先に9時過ぎに入れる。だから出張時の起床時間はだいたい4時過ぎとなる。これもアシスタント時代の話で厳しい師匠と同行出張の時の話だ。

朝起きたら5時30分。どう考えても遅刻だ。こういうときは頭の中で数秒で言い訳を考えるもの。風邪にするか?しかし昨晩は飲みにいったことは師匠も知っている。理由にならない。なにか緊急事態をつくるか?そんなことしたら総務が大騒ぎする。これもダメ。そして考えた!早朝だし、道は空いている。次の停車駅は新横浜だ。目の前には首都高速の入口がある。そして次の瞬間1分で着替え、車に飛び乗り猛スピードで新横浜駅へ!

運良く高速はガラガラ。なんと6時38分には新横浜駅に到着。駅前の1時間200円のパーキングに停めてホームへ。そして何もなかったかのように新幹線へ乗車。師匠は「なんだここから乗ったのか?遅刻したのかと思ったよ」そして私「いえいえトンデモナイ。昨日は横浜の友達の家に泊まったので。。」
我ながらかなりの演技だった。
帰りもたまたま別だったのも幸いしたが、その時に限って三日間出張だったため、コインパーキングではなかなか体験出来ない料金となった。


4、 夫婦で仲良く物流センター
浴衣担当バイヤーだった頃の真夏の最盛期、大事件は起こった。
各お店の浴衣セールに合わせて商品の増量などを行うが、その手順は店長が営業地区長へ申請→地区長は営業部長へ申請→営業部長は営業企画部へ申請→商品部長へ申請→物流化と商品部バイヤーへ依頼。という大会社にありがちな超タイムラグ。全国150店舗から随時来るから大変な作業になる。

そんなある日曜日。その日は久しぶりの休みで家でゆっくりしていた。そこへある店長から電話。「明日から浴衣セールなんですが、いつ届きますか?」とのこと。その店の申請書に見憶えがない。手元にある承認済み申請書の一覧表を見てもない。PCデータを見てもその店は入っていない。しかし店長にそれを伝えると1ヶ月以上前に申請しているとのこと。しかも明日だ!必要量は浴衣で約1000枚、帯も同量、あとは下駄、巾着、アクセサリーなど恐ろしい量だ。

しかも日曜日。とりあえず奥さんと二人でまずレンタカーに行ってトラックの手配し、そのまま本社へ。奇跡的に総務課長が当番でいたので事情を話し在庫室で選品が始まった。人員は二人。効率よくするために、私が選品をし、奥さんが仕切りを実施。真夏でクーラーも効いていない日曜日の在庫室。二人で集荷準備に5時間。段ボール箱約36箱分を用意し、それをトラックに載せ何とか無事に店に運び込み間に合った。
原因は申請書が営業部長で止まっていたことだった。見事なオチだった。

その他もたくさん辛くも楽しい思い出話があるが、それはおいおいまたご紹介する。
様々な失敗を通して様々なことを学び、身につけていった。この経験が今に生きていると心から感じる。修羅場はくぐった数だけ人は成長すると改めて思う。

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2010年3月10日 (水)

あなたは「何屋さん」ですか?

独立するとしばらくは色々な方から「今何してるの?」と聞かれる。特に呉服関係なら尚更のこと。メインはきものビジネスコンサルタントだが、お陰さまでこの業界で長く育ててもらっているので、糸商から小売まである程度の人脈もあるため、時には依頼されたときのみ小口の商品仲介もすることもある。いってみればきものに関わる全般のことを仕事に出来る。だが、メインの仕事はコンサルティングである。その中でも得意技は小売業と卸業の営業戦略と商品戦略だ。

呉服業界でもこの「何屋なのか?」が重要だ。何故なら複雑な流通構造の中で取引先選定の際にそれが大きな基準になってくる。
メーカーや買い継問屋といったカテゴリーは解りやすい。例えば、京友禅ならどこどこがいい。絞りならどこどこ、黒共帯なら、唐織ならとそれぞれのメーカーには得意技があり、仕入担当者は非常に解りやすい。商品カテゴリーだけでなく、柄の善し悪し、色の善し悪しなどもそのメーカーや買い継の特徴があり、その特徴を基準にして品揃えをしていた。

逆に今わからなくなってきているのが前売問屋である。ひと昔前は前売問屋でも明確な特徴があった。例えば、紬などの産地織物の上等品をさがすなら市原亀之助商店と相場が決まっていた。その他友禅ならどこ、絞りならどこ、帯ならどこなどやはり得意分野があった。だから昔は小売の仕入れ担当のいく問屋でその店の売り出しの目玉がわかったくらいだ。

今の前売問屋はどうか?私がバイヤーだったら非常に悩む。もし染着尺を担当していたらどこへ行くだろう。振袖だったら?訪問着などの絵羽物担当だったら?非常に悩む。そうなると基準は商品コストが一番安いところ、催事で人を出してくれるところ、こちらの意向をほとんど受け入れてくれそうなところが優先順位の上位に来るだろう。

なぜそうなったのか?それは小売が催事中心にシフトし、「企画商品」という問屋にとって非常に効率の良いものが出現したからだ。昔の催事は各種類のフリーの商品が中心で、それにプラスして1つか2つくらいの企画商品があり、その企画の担当者が商品紹介していた。今の総合催事は見渡す限り企画商品だらけだ。企画毎にアドバイザーと先生と呼ばれるその作家らしき人がいる。会場はそういう人達で溢れ返っている。それが悪いという訳ではないが、そうしなければ売れなくなってしまった小売店も悲しい。
結局この企画商品の供給もとで前売問屋を判断している状況だ。

これから前売問屋の存在価値を高めていくためには、明確な企業ブランディングが必要だ。例えば圧倒的に専門店の店頭営業に強く、様々なアイディアやノウハウを持っており、商品構成も店頭で売れるプライスラインを意識して幅広く兼ね備えている。集客ノウハウも持っており、店頭営業強化といったらこの問屋だという認知度も高い。こういった問屋としての差別化、そして経営者も営業担当者も企業イメージも一貫したものであることが、これから求められる前売問屋だと考える。

逆でも良い。徹底的に催事にこだわり、そのノウハウと協力体制は群を抜いているといった差別化を図ること。それによる企業イメージの確立と徹底は将来性うんぬんは別としても、これも企業ブランディング的な考え方であろう。

いま、催事さえも厳しくなってきた小売業は、新しいものに飢えている。私のかつての同僚である大手チェーンの現バイヤーも、「展示会に行ってもあんまり意味が無くなってしまった。どこも同じだから」という。

最も今求められているのは「新しいもの」と「得意技による差別化」である。
小売のバイヤーはまさに「あなたの会社は何屋なんですか?」と問いかけているのだ。そしてお客様も同様に。

もう一度、各呉服関連企業は見直してみてほしい。自分は何屋かを。そして出てきた答えをいかに徹底させ、浸透させていくかである。そうすれば必ず次のビジネスが見えてくるはずだ。

ところであなたは何屋さんですか?

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2010年3月 9日 (火)

絶対に超えられない人

今日はビジネスの話からは少し離れる。
私は仕事や人生において尊敬する人は沢山存在する。特に長年お世話になった株式会社やまとの矢嶋孝敏社長。死ぬほど恐ろしかったが、常にその考え方は最先端をいっていた。また、お会いしたことはまだないが、数々の繊維ビジネスや中国ビジネスについて解りやすく興味深いレポートをかじり付くようにいつも見させてもらっている日本テキスタイルデザイン協会の副理事長で東レ経営研究所の中国ビジネス研究会の主幹をなさっている坂口昌章さん。坂口さんにはツイッターで色々とご指導頂いている。

しかし、絶対に超えられない人が1人だけ存在する。石崎忠司。実の父だ。
私の父は昭和30年代から50年代に活躍した日本を代表する服飾研究家であった。約50年前現在もある季刊「美しいきもの」の創刊メンバーでもあり、全日本きものコンサルタント協会の理事、じゅらく染織研究所顧問、文化服装学院講師などほかにも数えきれないほどの業界の機関で仕事をしていた。

また当時NHKの昼のプレゼントという番組ではきもののコーナーがありその解説員としてもおなじみだった。またじゅらく染織研究所では世界の染織を研究し、メキシコや南米の少数民族の衣装を研究し指導した。そのメンバーに今ではきもの研究家としておなじみの市田ひろみさんも研究員として現地に同行したそうだ。また世界の染織の研究のため、写真家秋山庄太郎とともに世界を転々とした。

私は小さい頃の父の思い出はほとんど無いに等しい。私が生まれてすぐにメキシコの染織を研究すべくメキシコへ旅立ち、数日間現地のインディオと生活をしていた。私はもちろん記憶はないが、父の著書のひとつ「メキシコの染織」の冒頭にそのことが書かれている。

小学生の頃は父から機織りを習った。覚えておいても損はないとの理由で機の仕掛け方から綜こう、筬通し、織り、修正などを教えられた。今その知識は活かされているが、当時は嫌で仕方がなかった。
そしてまた、世界のどこかに出かけて行ってしまう。だから兄も私も授業参観や学芸会、運動会、学校の入卒などの行事で父親がくることは一度もなかった。


父の後はきっと兄が継ぐのであろうとなんとなく子供心に思っていたが、結局兄は児童書の作家になり今はなんと児童書の人気作家になってしまった。
(兄の名は石崎洋司で代表作は「黒魔女さんが通るシリーズ」)
そして結局私は誰からも奨められた訳ではなく父と同じ呉服の世界に入ってしまった。

父は呉服業界に色々なスタンダードを築いた。例えば「絹芭蕉」これは沖縄の平良敏子さんが戦後復活させた芭蕉布の素晴らしさを絹で表現できないかと小千谷縮の職人と研究しその製品を「絹芭蕉」と名付けた。いまではスタンダードな商品である。また著書である「雪の中のきれ」。これは十日町の染織を題材にした風土記的な物語だが、これがやまだ織の塩沢絣(本塩沢)のヒットブランドとなった。そのほか、桐生での八丁撚糸によるお召しの復興、南部紫紺、茜染め、広瀬絣の復興、etc…全国の織物産地の研究や指導などを行った。

また、販売面でも初めて「試着」というスタイルを作った。それまでの呉服店はお客様の要望に応じて棚から商品をだし、反物を広げてみせる、或は肩にかけるという見せ方で、帯や小物は平面で合わせて見ていた。それを洋服と同じように試着して見せるというコーディネイト販売をはじめて指導した。このときも当時はきものが傷む、呉服屋として品がないと批判が多かったようだ。しかし今では当たり前の行為である。

きものや服飾について様々な研究と開発、そして営業方法まで全てにおいてきものの発展に死ぬまで従事した。
そんな父は最後まで現役だった。ある日会社で吐血し倒れた。診察の結果、末期の骨癌であったため延命治療を避け、痛みを感じないように最後を迎えられるようモルヒネによる鎮痛だけにした。
意識が朦朧としながらモルヒネの幻覚作用によって昔の記憶が戻ってきたのだろう、「撚りがちがうんじゃないのか?」「野蚕糸は伸度があるからこんな紡ぎ方じゃ織物にならないよ!」などと病床でしゃべっていた。

私が父と最後にあったのは、私が京都出張に行く前日だ。自分の死期を悟っていたのか私に向け朦朧とした口調で「お前はもう大丈夫だよ。いいか。とにかく何でもいいから皆に着物を着てもらいなさい。いいか。なんでもいいから。」
それが私に向けた最後の言葉となった。


そして翌日の2003年10月8日。偶然にも私が京都駅に降りた瞬間に亡くなった。享年76歳であった。父が活躍した京都。不思議な感覚だった。

今私は独立し、父と似たような道を歩きつつある。しかし父との差は天と地の差以上だ。父が呉服業界でしてきたことは私の憧れであり誇りである。
父は戦後の呉服業界の黎明期に新しい風を巻き起こした。そして沢山のスタンダードを作り上げた。当時も新しい流れを受け入れない人達の非難を浴びたというが己の理想を貫いたそうだ。

私が今いるこの呉服業界もまた変革を余儀なくされている時期である。しかしながら私にはまだ何の力もない。業界を変えるなど夢のまた夢だ。でも私なりのやり方で信念を持って進んでいきたい。何も出来ずに終わるかもしれないが「何かをやった」という自負だけは持てるような生き方をしたい。

いま父と同じ世界にいるという実感だけはやっと持てるようになった。

しかし、服飾研究家石崎忠司は絶対に超えられない人である。

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2010年3月 8日 (月)

呉服業界へ就職なさるみなさんへ

いよいよ卒業式シーズン。今年も様々な場所で袴姿に証書入れを持った学生さんを目にすることだろう。また同時に各企業の新入社員研修等が始まるシーズンでもある。呉服関連企業各社もそういった研修を実施するところもあるかと思う。
私も呉服企業の経営支援などの他にきもの専門学校や高校の被服科などできものビジネスやきもの服飾史などの講師もしているので、そういった学生と接する機会が多い。皆、呉服業界に夢を抱いている。今年も沢山の学生が夢を持って呉服の世界に入っていくことと思う。そんな業界の金の卵達にエールを送りたい。

1、 呉服小売業に就職される方へ
当たり前ですが、呉服小売業はお客様にきものを販売する仕事です。販売するためには皆さんが思っている以上に沢山の仕事があります。お店をいつもキレイに保つこと。お客様が解りやすい陳列をすること。お客様が居心地のいい空間にすること。お客様名簿の管理、伝票管理、商品の入出荷処理、その他山のようにやることはあります。しかしそれはすべてお客様のためにすることです。
皆さんがきものを販売するにあたって、これから様々な悩みや不満を持つこともあるかと思います。その時に「売る」とは何かを是非考えて下さい。

きもの販売は「売ることでお客様を護り、産地を護り、きものを着る文化を護ります」これはある呉服小売店が使命として掲げている言葉です。売ることは全ての業界に取って大切です。その中で売ることでお客様を護るという言葉はなかなかイメージがつかないとは思います。どうしても過去の販売方法の過ちやお勧めの仕方等が問われているのは確かです。しかし、あなたが正しく売ることで誤った売り方からお客様を護り、あなたが正しく売ることでお客様が着物を好きになって頂ける。あなたが正しく売ることでお客様が今まで気づかなかった新しい自分を発見出来るのです。

「売る」はすべての企業にとって必要なことであり、文化を護り、文明を育て、生活や人生を豊かにします。皆さんが着物という世界で「売る」を仕事にすることはきものそのものを護ることになる素晴らしい仕事なのです。宝塚歌劇団ではありませんが、是非とも清く、正しく、美しく、そして楽しく「売る」をしてください。


2、 呉服卸業(前売問屋、メーカー、買い継問屋)に就職される方へ
呉服卸業は生産者が血のにじむような努力をして作ったきものを、沢山の着物屋さんへ販売し、沢山の消費者に紹介出来るようにする大きなお仕事です。また、お取引のある呉服屋さんがより効果的に営業が出来るような様々なサポートもします。メーカーであれば素晴らしい商品を企画したり、新しい提案をすることもできます。産地買い継問屋であれば、生産者がモノ作りを続けられるよう商売を通して勇気づけてあげることもできます。呉服業界において卸業というのはなくてはならない存在なのです。

みなさんが入社してまずやることといえば、きっと入出荷作業や札付け、伝票作業を来る日も来る日もやらされることでしょう。私は小売でしたが商品部に配属になった時に最初の半年は毎日そういった仕事でした。しかし、それは後になって非常に役立つことで、商品を見るだけで、触るだけでどのメーカーなのか、なんの商品なのか、高級品か、普通品か、国産か?海外か?などがわかるようになるのです。

こんなはずではない。こんなことをするためにこの会社を選んだのではないという気持ちになるときがあるかもしれません。ですが、そういう気持ちになってしまうような内容の仕事ほど後々の自分を助けてくれるスキルがつくのです。卸業の仕事は大変です。しかし是非とも与えられた仕事はすべて身になるという気持ちで取り組んで下さい。そうすれば必ず自分がやりたかったことが出来るようになります。


3、 着物を作る、直す仕事に就職される方へ。
「モノ作りを忘れた国は滅びる」ある大手前売問屋の社長の言葉です。
特に日本のモノ作りというものは多くの作家、職人と接していると「作る」以上に「創る」という仕事をしています。「作る」はある意味技術的な経過と結果であり、「創る」は技術と感性と心が一体とならなければできません。もっと端的に言えばモノを「生み出す」のです。そして「直す」技術も絶対になくてはならない仕事です。きものの「直す」は「治す」に近い技術であり、しかもお客様の大切な思い出や気持ちの詰まったものをお預かりするわけですから絶対に失敗は許されません。

その仕事を選択し従事することを決意したみなさんは、まさに創造者となるべくスタートを切られるのです。技術を習得するにしても何度も何度も挫折しそうになるでしょう。それを乗り越えて初めて身に付くものなのです。そして自分ならこうするという自我が心の中に出てくるでしょう。それはある意味大切なことなのですが、その前にその工房の親方の模倣をしてください。時間はかかりますが、模倣をし、少しでも技術を近づけることで自分を磨いて下さい。その上で自分が表現したいことや新たに目指すことを考えて下さい。

プロフェッショナルとアマチュアの違いは、モノ創りの責任の差です。これは物凄く大きな違いです。プロフェッショナルは常に注文者の要望やニーズを念頭に入れた上で自分自身ができる最高の表現をして創るのです。そして注文者の期待以上の商品を生み出し、報酬を頂くのです。アマチュアはどうしてもまず自分の好きなものを作る。いうなれば自己満足です。この差を体で感じ、プロフェッショナルの道を歩んで下さい。


4、 きものを仕立てる仕事に就職される方へ
和裁がなければきものは着れません。特に和裁という技術は日本が世界に誇る縫製技術です。生地の性質や相性を理解し、どうしたら着やすいのかを常に意識し、しかも小売と違って注文頂いたお客様の姿形は寸法でしかわからない。どんな方がお召しになるのかを想像を巡らせ、少しでも着心地の良い縫製を行うという魔法のような仕事なのです。

また、その技術を使って、より着やすい縫製、裁ち方や縫い方によってさらに新しいものが生まれる可能性も沢山あるのです。

そして縫うことを仕事にしている方にとって重要なことは、道具を大切にすることです。和裁士にとって大切な道具は針です。年間で数えきれないほどの針を折るそうです。和裁の技術のない私にとって針が折れるというのは想像も経験もしたことがないのですが、和裁士の方にとっては日常茶飯事のことと聞きます。そして針を「お針」と呼び、折れた針も針供養をするほど大切にするそうです。

昔読んだ現代の名工故興津佳平先生の「和裁の吹きだまり」という本のなかで、針を失くすと辱められるようなお仕置きをされ、それが嫌でいつのまにか針を大事にすることが身に付いたという一説があります。道具を大切にし、より高い技術を求め、着心地の良い仕立てを目指し続けて下さい。

これから呉服業界はいよいよ新しい時代を迎えます。どこも生き残りをかけて必死になっています。新しくこの業界に入る皆さんが、10年後20年後に第一線で活躍することで必ず呉服業界は再び魅力ある業界に生まれ変わることでしょう。心から皆さんの活躍を祈っています。

あらためて、ようこそ夢いっぱいの呉服業界へ!!


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2010年3月 7日 (日)

新しいものへの挑戦

本日横浜アリーナで東京ガールズコレクションが開催され、初めて京都市×TGCという形できものがステージを飾った。これはとにかく画期的であったことは間違いない。ただ、きものファンのほとんどの人には残念ながら不評であった。私もそれに関しては同意せざるを得ない。何故なら、メーカーがあまりにも消費者を知らないことが浮き彫りになったからだ。もっと解りやすくいえば教科書通りとなっており、あの年代が「きものってかわいい!」と思ってもらえるスタイリングが全くなされていなかった。

しかしこれは仕方が無い。そこには本当に今の若い人に関心をもってもらえるきものスタイリングを知るプロデューサーがいなかったからだ。もちろん小売業者も入っていない。今の着物スタイリング動向がわかっていないのも無理はない。大変失礼だが、簡単にいえば雑誌「美しいきもの」風であり、「七緒」風ではなかった。もしかしたら「KIMONO姫」風だったら大旋風を巻き起こしたかもしれない。

でもどうかきものを愛するファンにはわかって欲しい。これは新しいものへの挑戦である。今回始まったばかりだ。この企画をプロデュースした人達は様々な障害や苦難があり、それでも京都の着物の活性化、呉服業界になんとか元気になって欲しいという情熱から成し遂げたものだ。聞くところによると3年の月日を経て実現したそうだ。

どんな内容であれ、第1回目だ。ここで着物を知る人達が蓋をしてしまったら若い層へのきもの発信の場が無くなってしまう。もし次回も実現出来るなら今回のよりももっと進化しているはずだ。だからこそ、このプロジェクトの価値の高さを前向きな目で見ようではないかと強く思う

「白イ烏」への願望と希望
そして最後にアンテナショップ「白イ烏」へのエールを送る。あえて自負するが、私は長い間今回のようなTGCターゲットの年代中心にきものを販売し、また商品開発してきた。そして企画から生産、店舗のプレゼンテーションにいたるまで一貫した商品開発であるVMDをしてきた経験から、期待するがゆえに厳しい表現をすれば、今のままでは気軽で入りやすい店ではあるが、本来のコンセプト通りのターゲットには売れない。何故なら、商品自体がスタイリングやかっこ良さ、着物を着ることの楽しさをプレゼンテーションしていないからだ。

ミス層、キャリア層に提案するには絶対的なビジュアルプレゼンテーションが必要だ。特に着物の場合はわかりにくい故に尚更だ。

きものはこんなにかっこいい。こういうスタイルならきものを着てみたい。
という提案がなければ、気軽に見るだけで、買うことには繋がらないだろう。実に勿体ない。料理ならいい素材があってそれを美味しく魅せる。これが店の大原則であり、売るために最も必要な手段だ。

TGCは本当に画期的であった。呉服業界の新しい扉を開くキッカケにもなった。そして白イ烏は大いなる可能性をもっているショップだと確実に思う。
あとは「魅せる」だけだ。「見せる」のではなく「魅せる」ことができたら間違いなく、京都市のアンテナショップとしてではなく、次世代型の新しい着物ビジネスの1つとして認知されるだろう。またそうなることを願う。

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2010年3月 6日 (土)

呉服卸業が目指す今後を考える

今日、電撃的なニュースが飛び込んできた。「一竹工房 民事再生法申請」初代久保田一竹氏が桃山時代に一世を風靡した辻が花染めを独自の世界観で表現し、その芸術性は世界の美術界からも賞賛を浴びた。その後メーカーとしての一竹工房は山中湖に一竹美術館を展開し「一竹辻が花」を確固たるものにした。
メーカーとしてだけでなく美術館経営など多岐にわたった活動であったが経営の存続を危ぶまれている。

そもそもメーカーとは?問屋とは?そして今後どう進化していくのかを今日のテーマとしたい。

1、 メーカーとは?そして今後は?
「メーカーがモノを作っていない」
これは京都を訪れた業者が最近口々にする言葉だ。そもそもメーカーとはその言葉通り「モノを作る人」である。業界用語では「染め潰し屋」等とも言われている。また商品企画会社でもある。様々なコンセプトから商品をつくり、または集め、販路の広い問屋へと卸していく。これが本来のメーカーの商いの流れだ。もちろん小売業者への直接取引の場合もある。

そのメーカーがモノを作っていないとなると今の世の中には新しい商品が存在していないということになる。もちろん全部がそうではないが、どちらにしてもそれに近い状況である。これは当然のごとく呉服売上が年々減り続け、世界同時不況で更に下降スピードを増したことが大きな原因であることは解りきったことであるが、ならば今後どうしていくのか?を既にメーカーは始めている。

それは着物ショップ、すなわち小売への参入である。様々な形があり、ここでは企業名は出さないが、メーカー単独型と協業型に分かれる。メーカー単独型はその企業の特色を活かした品揃えが魅力だが実店舗運営となるとリスク面で非常に大きいため、現実的にはネットショップとしての小売参入の形が多い。そして今積極的に取り組まれているのが協業型である。これに関しては2つのパターンがある。1つは小売業との協業である。小売業のメリットとしては自社の売上幅の拡大が図れる他、仕入れコストの軽減や鮮度の高い商品構成の維持などでストアロイヤルティの向上などが出来、小売店の大きな課題の1つである集客対策としても効果的である。メーカー側としては、利益配分はあるもののダイレクトでの売上によって収益率が向上することや小売店の販売ノウハウをそのまま利用出来る点にある。また店の運営コストについても双方にとってメリットがあるため、今急速に増えつつある。

もう1つのパターンは、各産地との協業による小売参入である。例えば、染めメーカーと帯メーカーとの協業、各産地ブランドメーカーとの協業による差別化されたオリジナル商品開発によるショップの出店等様々な業種、カテゴリー、産地ブランドなどの協業チームが組まれている。もちろん実店舗だけではなくネットショップも同じくである。

ただし、ここでの問題点は営業力である。小売業の販売力は長年の経験の蓄積から出来たスキルである。どんなに良い商品でどんなに適正な価格でも、その見せ方、売り方、顧客管理の仕方等は一朝一夕では難しい。現に私は大手小売業で20年の経験があるが、メーカー協業型小売店でこれなら売れると確信出来る店は数えるほどだ。そういう店舗は全ての商品条件が揃っているなら営業ノウハウに関しては、多少のコストを掛けてでも専門のコンサルティングを受けるべきである。アパレルの業態転換時のコンサルティング導入は当たり前の世界である。こう書くと自分の職業上宣伝をしているようだが、そういう意識を抜きに考えても継続し収益率を上げるためにもそうするべきだと強く言いたい。

どちらにせよ、今後もメーカーは生き残りをかけて、あるいは「新創業」と言うような観点から多種多様な形態で小売市場へ参入をしてくると思うが、くれぐれもそれが仇となるようなことがないよう、しっかりとしたマーケティングと経営計画をたてて強い体質づくりと企業存続を図って欲しいと願う。

2、 問屋という業態のこれからの可能性。
問屋の本来の機能は、豊富な販路を持っていることを利用したディストリビューターとしての機能である。これは流通上の円滑な流れを維持し、川下業者の売上貢献と川上業者の安定した操業につながる大切な役目でもある。ただし今はやはりメーカーと同様、呉服売上の超大幅減少によって仕入れを縮小せざるを得なく、資金面から致し方なく委託条件での取引が多くなってしまった。これに関しては内情と現状を深く知る者としては責められない。

では問屋という業態がどうしていくかということであるが、現在の動きとしては数社協業による小売店への催事支援などがある。それぞれのもつ企画商品やフリー品等を催事商品として構成し、アドバイザーなども共有しながら、小売店への販促支援を行うというものだ。これは現在の流れの発展系であり、今のうちは非常に効率の良い協業の仕方である。

ただし私の考えは、はじめに催事ありきの観点は変えていかないと、絶対に持続しない。ただでさえ顧客は枯渇している状態で、大手小売でさえ集客と買い上率に苦しんでいる催事は絶対に長続きしない。催事ありきの観点は乱暴な表現をすれば、麻薬の乱用である。
私が常日頃から言っているのは「問屋の力は無限大である」ということだ。
問屋のポテンシャルはすごい。圧倒的な販路の数を持ち、圧倒的な商品在庫をもち、圧倒的な販促力を持っている。それらの圧倒的資源を今催事中心に使用しているだけだから非常に勿体ないと感じるのである。

私はきものビジネスコンサルタントをしているが、もしこの問屋並みの資源を持っていたとしたら、絶対に店頭中心に使用し、販路である小売店への全面的な新規売上客数向上のためにその資源を使うだろう。それだけの力と物量をもっているのである。要は問屋が小売店のコンサルタントをすればいいのである。当然今までの流れから言えばそれは商慣習上、出来難いかもしれない。ただ、今の小売は藁をも掴む状態だ。売上も厳しい、新しい商品も仕入れは出来ない。出張経費もままならない。そういう状況であるからこそ問屋の力は大きいのである。

3、ラック&ジョバー方式でWin—Winの関係をつくれ!
勝手だが私ならこうする。
取引先小売店の店頭のワンスペースを年間で担当させてもらい、徹底的にその店の総合的な分析をし、月毎あるいはシーズン毎で販促計画を策定し、その都度テーマを決め適正な商品構成とプレゼンテーションやプロモーションを行っていく。簡単に言えばラック&ジョバー方式だ。そして実績を挙げていくことで担当スペースの拡大を図り強いてはその店の取引高構成比も上げていくという戦略だ。当然これに関しては小売的な観点での分析力が必要であるし、商品陳列や販促ノウハウも必要になってくるが、中長期的に考えれば双方に取って大きなwin-winの関係が作れる。しかも店側に取っては仕入れリスクを最小限にし、常に鮮度の高い商品構成が図れ、少ない労力で店頭強化の柱も作れる。
催事はそれに平行してやれば良い。店頭と催事の両立が出来るということである。

そんなに簡単なことではないと一蹴されるかもしれないが、目の前の利益だけを追い求め、後で大きなしっぺ返しが来るよりかは遥かにいい。何度も言うが問屋はそれだけのどこも真似の出来ないポテンシャルを持っているということを自信もって認識して欲しい。あとはそれをどう使うかだけである。

本日のまとめ
1、 メーカーとは?そして今後は?
2、 問屋という業態のこれからの可能性
3、ラック&ジョバーでWin−Winの関係を作れ

これからどんどん新しいビジネスモデルが登場し選別されていく。今呉服業界でやらなければいけないのは「新規客の創造」と「客数増」だ。そしてそれぞれの企業が存続していくために取引間でもっと情報の公開をすべきである。これからの流通構造は情報公開することで互いに利益の共有が出来、川の流れをよりスムースにする。

着物業界は村社会の共同体。村社会は情報共有なくしては生きられない。

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2010年3月 5日 (金)

甦らせるぞ!竹筬(たけおさ)

去る2月26日から3日間、八王子織物工業組合において「甦らせるぞ・竹筬 試作竹筬による織布展」が行われた。
竹筬とはなにか?
織機のしくみは経糸(たていと)を張り、緯糸(よこいと)を織り込むことで織物にするものだが、足下のペダルによって経糸を引き上げて開口させ、その中に緯糸を通し、手前に打ち込んでいく。この打ち込む部品が「筬(おさ)」である。現在は手機、自動織機ともに通称「金筬(かねおさ)」と呼ばれるステンレス製のものが主流であるが、昔の手機はほとんどが竹筬であった。
では何故、無くなってしまったのか?それは後継者がいなくなったからである。
本日はその「竹筬」というものを紹介したいと思う。

1、 筬のしくみ
筬は前述した通り、緯糸を打ち込むもの。そのために全ての経糸を1本ずつジャバラ状になっている間に通す必要がある。このジャバラ状の1つ1つを
「筬羽(おさばね)」という。この筬羽の数が多ければ多いほど沢山の経糸を使った細かい織物を織ることが出来る。この細かさの単位を算(よみ)といい、着尺の反巾1尺(約38㎝)の間にどのくらいの隙間があるかという単位である。一算を38羽とし、一番細かい筬で18算まであるので38×18算で約680羽となる。(ちなみに筬の単位の基準は1算=40羽が主流)
そして1羽に2本の経糸が通るので鯨尺での18算筬だと経糸は1360本となる。
これは大島紬でいうところの一番細かい12マルキのものに匹敵する。物凄い細かさだ。算の単位は10算から18算まである。
また一番細かい18算の筬羽の厚さはなんと0.252mm。隙間巾は0.556mmとまさにミクロの世界。今の金筬は機械生産だが、竹筬はすべて手作り。この細かさを手仕事で職人が竹を引きながら作っていくのだから、気の遠くなる世界だ。

Img_1625
<非常に細かい筬羽>

2、 竹筬の特徴と生産工程
竹筬の特徴は、①自然素材のみで出来ており軽く、扱いやすい ②筬羽が竹製であり、羽に弾力があり、歪みに強く、水に強い。 ③経糸の擦れに対して優しい。といった3つの特徴がある。比較すると金筬はステンレスで出来ており強いが遊びがない。そのため紬糸や玉糸、綿糸などのスラブのある糸は引っ掛かりがでたり、最悪切れることもある。竹筬に関しては弾力性があり、そういった糸に対しても微妙にそして自然に調節してくれるのである。
まさに織り手の意志を受け、ヤンチャな糸でも優しく通してくれる。まさに竹筬は命があるかの如く「生きている」のである。

その工程は「筬羽作り」と「仕上げ&組み上げ」という2つに分かれる。
「筬羽つくり」は竹編み→竹割り→荒引き→幅取り→二番引き→皮とり→上引き→羽揃え→羽切りと第一工程だけで9工程もある。
「仕上げ&組み上げ」は傍仕上げ→焼き入れ→縁仕上げ→面取り→筬編み→仕上げと第二工程は6工程

全部で15工程も必要なのだ。そして一番細かい18算の筬羽も先程述べた薄さにすべて同じ厚さで手仕事によって羽一枚一枚引いていくのであるから、気がおかしくなる。しかしそれをしなければ、緻密でしなやかで優しい織物は出来ないのだ。

Img_1636
<気の遠くなるような筬羽を正確に薄く引く作業>

3、 竹筬復活への願い
そんな気の遠くなるような工程を辿らなければ作れない竹筬は、今はほんの一部しか生産出来ない。実は岐阜県の日本竹筬工業株式会社が平成13年に廃業し、竹筬の生産は事実上消滅しているのである。そして様々な同志達が平成15年に日本竹筬技術保存研究会が発足し、竹筬の生産技術を広めようとしている。特に今、力を入れているのは沖縄をはじめとする全国の紬や綿の織り手に試織を依頼して竹筬の良さを実感してもらうことである。それがキッカケで竹筬を使用してくれるようになれば、作り続けることができ、その技術を次世代へ伝えるキッカケにもなる。そして何より優しい織物が供給出来るのである。
また古い竹筬を修理したり、調整したりすることも積極的に行うことで再使用率を高め普及を促進している。
どちらにしても織りに携わる方々が竹筬の良さを本当に感じてくれて、使用する人が増えることで、復活することを心より願う。

Img_1631
<竹筬で織った川越唐桟織(綿織物)>


*最後に
私が心から感動したのは、竹筬保存会の方々の「伝えたい」「残したい」という切なる想いと「私たちも着る人のためになんとか良い物を提供したいんです」という言葉であった。私は正直驚いた。筬は機の一部であり、良い筬を作り織り手さんに満足してもらうことを目標に作っているのかと思った。しかし着る人のことを思っていた。自分の作った竹筬でどんな織物が織り上がるのかは一切わからない。にもかかわらず消費者のことを思う気持ちには脱帽だ。

今まで私は織物生産者=織り手さんという固定観念しかなかった。
織機の一部の、しかもたった40㎝幅の小さな竹筬に、織物を愛する凄まじい情熱と技術の結晶が詰まっていることを知った。

あらためて想う。竹筬は生きている。

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2010年3月 4日 (木)

本場結城紬のおはなし

紬ファンなら誰もが着てみたいと思う本場結城紬。古い話だが、特にこの名が全国に広まったのはNHK朝の連続テレビ小説「鳩子の海」からだ。結城市が舞台となり結城紬の名は知らない人がいないくらいに有名になった。
また本場結城紬は日本最古の絹織物ともいわれており、そこから生まれた、今では当たり前に使っている言葉が幾つもある。そのようなことも織り交ぜながらこの本場結城紬の魅力や裏話を今日はしていきたい。

1、 本場結城紬の概要
文献では崇徳天皇の時代(西暦1100年頃)平安時代末期には長幡部絁(ながはたべのあしぎぬ)として織り始めていたとあるが、研究者によると聖武天皇の時代には既にあったと言われており、その証拠に正倉院の宝物としてこの「絁(あしぎぬ)」が納められているという。そもそもこの絁(あしぎぬ)とは不揃いの絹糸を平織りで織った粗布であり、朝廷への献上品として織られていたと言う。

結城地方はもともと養蚕が盛んであった。その背景には鬼怒川という大きな川が度々氾濫し、洪水を巻き起こしたため洪水を防ぎ地盤を強固にするために桑の木を沢山植えたのである。これによって洪水が収まったため、
「鬼怒川=絹川」とも呼ばれるようになったと言う。また、この結城紬一反分の糸をとるのに必要な蚕が食べる桑の葉の量分の木が植えてある面積を一反というようになったと言われている。現在の畑の単位である「反」はきものの単位である「反」と関係があるのである。

本場結城紬はもともと無地か縞がほとんどで、今のような亀甲絣が出てきたのは江戸末期から明治初期である。その製法は起源より変わらず昭和31年に3つの技法である糸とり、絣くくり、地機が国指定重要無形文化財に指定された。

2、 本場結城紬の素晴らしさ
本場結城紬の素晴らしさはなんといっても「着心地」である。こればかりは着た人にしかわからない。どう表現するかを悩むが、絹の綿に包まれているような優しさと暖かさだ。この秘密は糸にある。本場結城紬の糸をとる技法は重要無形文化財指定技術に指定されている。湯がいた繭を真綿状にし、ほとんど撚りをかけずに細い糸をとっていく。撚りをかけないと膨らんで糸にならないため唾で仮止めしながら糸にしてあとで強く糊付けをするのである。

昔は結城に嫁に行くと必ず糸をとることを覚えさせられた。糸とりは女性の仕事である。満足に糸がとれるまで数年掛かるので、嫁を励ますために「お前の唾だから良い糸がとれる」と声をかけたという。それが熟女の唾が良いと言われる由縁だ。

強く糊が掛かっている状態で織り上がるので反物では張りがあってパリッとしているが、仕立てる時の湯通しで糊が抜け柔らかくなる。ただし、新品の結城紬はまだ張りがあるので、着るまで布団の下に置き寝押ししたという。そして着ては洗い張りを繰り返すことでだんだんに糊が抜けて、糸が真綿に戻るような手触りになっていく。私も100年前の結城紬を触ったことがあるが、感動するくらい柔らかくて優しい。
自分の一生をかけて洗い張りを繰り返し糊抜きをしながら着るということ自体が結城紬とともに自分も成長していくような何ともいえない嬉しさを感じる。本当に結城紬は正真正銘の憧れのきものである。

また紬であるのに地風が滑らかで紬独特の凹凸感や節目がないのが特徴だ。この秘密も糸とりにある。通常家蚕はきれいな八の字を描きながら絹糸を吐く。そして成虫になる時に自分が出やすいように繭の先端だけは薄くしておく習性があるのだ。この薄い部分は繭を湯がくことで目に見えて解る。そこに指を入れてゆっくり優しく広げて袋真綿にするのだ。だから八の字を崩さず繭に無理の掛からないように糸を紡いでいくのできれいな節目の無い糸になるのである。これが地風の滑らかさの秘密だ。

この滑らかな地風が茶人や文化人にこのまれ、いまでもお茶席の男の正装で一番上等なのは結城紬の無地である。また、昔はお茶の席では今のように垂れもの(染物)は着ず、織物を着たそうだ。お茶席に紬はダメというが、紬がダメな訳ではなく綿から伝わった絣物がダメなのである。
とにかく結城紬は織物の原点であり人間の肌になじむように作られた先人達の優しさと知恵の詰まったまさに夢のような織物なのである。

3、 本場結城紬と結城紬
結城紬はいくつかに分類される。
・糸とり、絣くくり、地機などの重要無形文化財指定技術を使用して織ったもの
・糸は文化財技術でとり、機は高機で織ったもの
・文化財技術は使用せず織ったもの

主に3つに分かれる。正確に言えば糸とりと、地機は文化財技術で絣くくりは糸への直接捺染法で絣をつけたものもある。
素人目には大変複雑で解り難いため、誤解のないようにすべて産地表示にきちんと記してあるので、目に触れる機会があったら是非その辺を細かく確認して欲しい。

当然、価格的にも重要無形文化財指定技術を使用している物はかなりの高額になる。亀甲絣の密度(一般的には80亀甲、100亀甲、120亀甲、160亀甲)によって違ってくる。160亀甲等はほとんど作れないので、一部の呉服店では1000万円近い価格のものもある。一方、文化財指定技術以外の技法で作った物が圧倒的に多いが、これはすこし思い切れば購入することが出来る価格だ。適正価格としては80亀甲で25万円前後、100亀甲で35万円前後といったところだ。

呉服店で結城紬をお勧めされた時は是非上記のことに注意して欲しい。またその違いを説明出来ない呉服店は要注意だ。きちんとした知識を身につけているかどうかのバロメーターとしてチェックして欲しい。
また、呉服店も消費者も最も誤解しやすいのは結城紬自体が文化財に指定されていると勘違いしている点である。あくまで上記に挙げた3つの生産工程が重要無形文化財指定技術であり、その技術によって作られたということである。

重要無形文化財指定技術で作られた本場結城紬もその技術を使用していない結城紬も、日本が誇る結城紬そのものであることには変わりはない。そして自分と一緒に成長し、年を重ねるにつれ共に優しさと味が出てくるこの結城紬にいつかは袖を通して欲しい。


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2010年3月 3日 (水)

今夏ゆかた商戦いかに戦うか? <Part2>

昨日に続いてのテーマである。
昨日は「ユニクロ、量販店恐れるに足らず、比べても意味無し」と「浴衣扱いシーズン計画をたてる」というテーマを語らせてもらった。今日は、「年代別スタイリング訴求」と「浴衣購入客は将来のきもの客候補」という内容で考えてみたいと思う。

1、 年代別スタイリング訴求
浴衣を購入する年代は店の形式を問わず10代〜30代で構成されている。最も多い割合は20代、ついで30代、そして10代の順だ。そしてこれらを着装シーンという形で分析するとその違いが明確に見えてくる。

まず10代〜20代前半の浴衣着装シーンは圧倒的に花火大会やお祭りが多く、友達同士で着る場合が多い。そして彼女達の感性での「かわいい」を求める。だからスタイリングとして帯は圧倒的に兵児帯、そして飾り帯揚げ、飾りひも(帯締めっぽくしめる)、髪飾りも派手めで可愛いものやレース衿などアクセサリーを多用するコーディネイト提案に目が止まる。

20代全般においてのシーンはもちろん花火大会や祭りも行くがシチュエーションとしては少し落ちついて、カップルや友達同士でも割に少人数で出かけることが多い。スタイリングも「かわいい」は求めるものの「可愛すぎず地味すぎず」という少し大人っぽい雰囲気を求める場合が多い。スタイリングとしては帯も少し大人しめで、兵児帯より半幅帯がベスト。またアクセサリーも派手過ぎないものをコーディネイトすると良い。ただ地味すぎないように全体的に品のいい可愛らしさを出せればベストである。

30代全般においてのシーンは、花火大会や祭りもそうだが、友達同士でカフェやレストランでのお食事会などの楽しみ方をするパターンも出てくる。会社からの要請があって着ていく場合もある。またお子さんがいる場合は一緒に着て楽しむというシチュエーションも多く、全般的には大人しめのスタイリングだ。ただし、呉服屋としてこの年代へのスタイリング提案はゆかたを夏きもの風に着るという提案が意外に新鮮に感じてもらえる。しかも品が良いので受け入れられ易い。例えば帯はポリエステルの紗献上名古屋帯や麻の半幅帯等はこの年代には新鮮だ。当然正絹の絽の名古屋帯、八寸でもいい。また関連品としては帯留め、夏小物などを併用するとより雰囲気が出る。また本格的にするなら麻やポリ麻の交織などの長襦袢なども品揃えして提案するともっと本格的だ。

このように年齢別のスタイリングをトルソーに着付けて解り易く提案することが競合店との差別化にもなり、入店したお客様が関心を示したスタイリングによってその方の大まかな好みも解る場合が多い。また、こういう提案をすることによって店頭に動きが出てアテンション効果が高まりお客様が立ち止まり易い。そういう店には必ずお客様が入ってくる。
年代別スタイリング提案は、お客様に解り易いだけでなく、販売員にとってもお勧めしやすいし、好みの把握にも便利だ。
お客様の着装シーンをキチンと分析し、それに合わせた店頭のオペレーションをしっかりと組み立てることで想像以上の数の新規客数を浴衣によって獲得出来るのである。

2、 浴衣購入客は将来のきもの客候補
多くの呉服店に話を聞くと、浴衣購入客はあくまで浴衣目的だから後々きものに発展しないというが、私の経験では浴衣購入客は約2割が1年以内にきもの購入客に発展するというデータが出ている。逆にポリエステルきものから正絹購入客に発展する割合はその半分の1割である。これは私の約20年の現場経験で取ったデータだが、平均すると確かにそうなっている。

もちろん上記のようなスタイリング提案の販売が大前提だが、浴衣を購入するお客様は初めて自分で選んで買うという場合が多く、初めてきものというものを体験する場合が多い。特に浴衣とそのスタイリングを非常に気に入って購入すると、きものに対しての印象がいい方向へ変わる。そこでお客様の負担にならない程度に綿のきものや自店のお勧めのきものを紹介してもよい。どちらにしてもお客様が浴衣を心の底から気に入って頂き、お買い求め頂くことで、きものという世界の間口が一気に広がるチャンスであることを認識したい。


また、新規客を顧客化するにはコンタクト回数を増やすことが需要だ。コンタクト回数を増やすことでお客様とのコミュニケーションが深まり、店の年間を通してのセールや催事、その他イベント等に気軽にご案内が出来易くなる。そうすることで将来のきもの購入の確率が高まるのである。

ではコンタクト回数を増やすにはどうすれば良いか?各お店のシステムや状況によって違うので一概には言えないが、まずは、浴衣の着付けサービスを実施することである。これが一番効果的である。お客様にとっては着付けてもらえるのは好都合であるし、お店への好感度も上がる。店にとってはコンタクトがとれる他、着付けというのは1対1で行うことからスタッフとのコミュニケーションがとれる絶好の機会だ。このサービスに関しては、営業効率は一時的に下がるが顧客深化ということを目的とすれば大きなメリットがある。

その他、シーズン終了後にはお客様に対してクリーニング等のお手入れサービスをPRし持ってきてもらうことで再びコンタクトがとれる。より確実なのは「お手入れキャンペーン」などを実施し、期日を設定してお得な価格とすることで受注率は高まる。このような2つのサービスをすれば、1、浴衣購入、2、着付けサービス、3、お手入れキャンペーンとワンシーズンで3回のコンタクトが出来る。これをそれぞれのスタッフがキチンと理解して実施に当たれば、前述したようなデータにあるような確率できもの客として発展する可能性が高くなる。ワンシーズンスタッフ1人当りの浴衣購入客数×20%がきもの客に発展し、更に掛けるスタッフ人員分が店の新規きもの客数となるから実に大きい。

本日のまとめ
1、 年代別スタイリング訴求
2、 浴衣購入客は将来のきもの客候補

呉服店にとって浴衣商材は、1年を通して最も効率的に集客と新規客数を増やすことが出来る最高のものだ。ただし、店の魅せ方、提案の仕方、後のフォローの仕方まで事前にしっかり計画し、店としての方針を決めておかないと、きもの客候補どころか顧客化も出来なくなる。このブログで述べたPart1、Part2のそれぞれの考え方の中で各お店毎の現状を踏まえた上で是非とも検討した上で実践してみて欲しい。
呉服屋としての最大のメリットを生かし、今夏のお客様の最高のゆかたライフを演出することで着物の楽しさを発見してもらい、着物の間口を広げていただけることを心から期待したい。

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2010年3月 1日 (月)

今夏ゆかた商戦いかに戦うか? 

3月に入り少しずつ春の兆しが感じられるようになってきた。そうはいっても寒かったり暖かかったりの毎日だ。そんなこの時期、浴衣に関わる業者は大忙しだ。染工場、メーカー、問屋は浴衣の納品に向けてピークを迎える。年末年始にかけて受注したものを現在フル回転で生産し、メーカーまたは問屋は雑誌やプロモーション、様々なチェックなどで忙しくなる。特に物量がものをいう浴衣はその準備を怠ると大きな機会損失となるから大変だ。
しかしながら、呉服業界としての浴衣売上は昨年、一昨年と苦戦続きである。また、アパレルや量販店などの参入で売上が分散化し、価格面でも呉服店は劣勢である。その中で今夏いかにゆかた商戦を戦うかを2回に分けて考えてみたい。

1、 ユニクロ、量販店恐れるに足らず。比べても意味無し
2003年ユニクロが浴衣販売を開始した当時はほとんどの呉服店が危機感を覚えたはずだ。その一方で不安をかき消すようにユニクロで浴衣が売れるはずがないなどの批判をしていた。ところがスゴイ勢いで売れ、呉服店はまるで大型SCにお客を持っていかれた商店街かのごとく、自店が売れない理由をユニクロや大型SCのせいにした。そして今でもそんなことを言い続けているところがある。

では本当にユニクロやハニーズ、イオンやイトーヨーカドーなどの量販店、他アパレルショップが浴衣を扱う事が呉服店で浴衣が売れない理由なのか?様々な呉服店に昨夏の浴衣動向を聞いてみるとやっぱりそういう答えが多い。そして具体的にどの年代がどのくらい減り、月別での前年比や、客単価、一品単価動向などを聞くと全く把握していない。分析や総括をしていないで売れないと言っていても改善はしないし、来期の商品計画もたてられないはずだ。ということはどの年代にどんな商品がどんなコーディネイトでいくらぐらいで売れているかをキチンと把握してないなら、仕入れたものはその店のターゲットを外している可能性が高い。それでは間違いなく売れない。

ユニクロの商品はよくマーケティングされていて、過去3カ年動向とトレンド情報を細部に至るまで分析しMDしている。当たり前のことではあるが。また量販店に関してもそれに近い形でメーカー、問屋での現物のピックアップをしている。そして価格はセットで3990円、4990円といったところがメインだ。イオン等の量販店のセットは低価格品もあるが着付けDVD付きの8990円〜12800円といったところがボリュームゾーンである。確かに安い。では弱点は何か?ユニクロの絶対的弱点はセットである事だ。セットは一見お客様にとっては買いやすく親切なように思えるが、お客様はコーディネイトを自分で選べないということだ。浴衣は気に入ったけれども帯は本当はもっと違う方いいが、セットだから仕方が無いというお客様も沢山いるはずだ。イオンやヨーカドーなどの量販店はバラでも売っているが、お客様はどう合わせていいか解らないのにアドバイスできない。アドバイザーが入っているが可愛い小物やアクセを付ける楽しみを提案出来ない。

呉服店での浴衣販売はどうか?ほとんどがバラで独立し、様々な色柄の浴衣を試着出来、専門のスタッフが個々の好みに合わせて提案してくれる。しかも可愛いアクセや豊富な数の下駄や帯、かんざしなどの組み合せが楽しめる。そしてなおかつ着付けも丁寧に教えてくれて、店によっては頼めば当日着せてくれる。その後のメンテナンスも引き受けてくれる。夏のゆかたを思い通りに楽しめる提案が出来るのは呉服店だけであり、お客様にとって本当に親切なのも呉服店なのである。この強みを呉服店自らが気付かなければ間違いなく取り残される。だから、ユニクロだろうがイオンだろうが全く恐れるに足らずであり、比較するだけ無意味である。

2、 浴衣扱いシーズン計画をたてる
ではいかにして浴衣最盛期にお客様を呉服店に向けるかである。そのためには浴衣扱いのシーズン計画を立てることが大切である。そしてそのためには目安が必要となるので、何度も言うが前年実績から様々なデータを抽出し、「どこが」「なぜ」「どうする」の観点で数字を総括することが重要である。

例えば7月の第3週からピークが来ているのなら、6月後半か7月初旬に予兆が出ているはずである。そこである程度の陳列スペースを確保して品揃えの豊富さを見せておく事でピークが始まった頃に買い回り候補店として必ずその店を見に来る。そのピークの時に売れている客層と単価を割り出し、それに合わせた商品を多めに6月後半から7月初旬の予兆時に見せておく。そうすることでピークに最も多いターゲットが買い回りに来る可能性が高くなる。といった分析から商品計画と陳列計画を立てる事が望ましい。

月別の目安としては、なるべく認知度を高め記憶をしてもらうために早めに出す事がポイントだ。そういう面から考えるとユニクロも今年は早めのPR陳列を仕掛けて来るだろう。

4〜5月→PR陳列。最小スペースで「もう浴衣?」という心理的にシーズン
    ミスマッチな印象を与える事で記憶と認知をさせる。またこの時期は
    学生の教材需要もあるので安価な反物も用意しておく。学生需要は
    バカに出来ない。ピーク時には帯や下駄、小物等を買いにリピート
    する可能性がある。また5月のGWは多少スペースを広げると有効
    な集客に繋がる。
6月→徐々にスペースを広げる。特にハンガーラックなどでボリューム感をだす
   ことと、必ずタイプ別、色の濃淡を意識してラックに掛け、できれば
   値段も明示するとより解り易い。またピーク前はとにかくトルソー
  (マネキン)を使ってスタイリング提案を心がける。年代別なら更に
   効果的である。
7月→一気に客数が増えて来る。データと周辺競合をよく見て陳列スペース
   を更に広げる。また演出として地元の祭り、花火大会、ゆかたで出か
   けるスポットの提案(カフェ、レストランなど)があるとより
   購買意欲を増長させ易い。帯、下駄、小物等も充実させる
8月→最盛期であり、陳列は最大にまた駆け込み需要も多いので価格表示の
   明確化は不可欠。また帯、下駄などは欠品が大きな機会損失となるの
   とメーカーが夏期休暇等で対応出来ない場合も多々あるので事前の
   販売予測と仕入れ量が決め手となる。また終息期をどこに設定するかも
   計画しておく。

と非常に大まかに月別での浴衣計画の目安を述べたが、大前提は自店の事前分析が必要である。また、細かな販促計画もたてるべきである。地域を利用した販促や、飲食店(スナック、キャバクラ、ラウンジなど)でのゆかた着用による集客プランのPRなどは大口売上に直結するので非常に効果的だ。このように事前計画は間違いなく成功へと導くし、計画通りにいかなくても「どこ」がおかしくて、「なに」が原因で「どう」すれば良いかがすぐに修正し易い。是非ともまだ細かな浴衣計画を立てていないのであれば実践してみて欲しい。

本日のまとめ
1、 ユニクロ、量販店恐れるに足らず。比べても意味無し
2、 浴衣扱いシーズン計画を立てる

次回のPart2では「年代別スタイリング訴求」と「ゆかた購入は将来のきもの客候補」といったテーマで考えてみたい。
とにかく浴衣シーズンは呉服店にとって年間で沢山の新規客を獲得する事が出来る最大のチャンスである。それを逃して通常月で集客出来ないなどというのは理由にならない。そのためにはしっかりとした計画とお客様に最大の満足が得られる商品構成とスタイリング提案と販売技術の習得を事前にトレーニングする必要がある。
何より浴衣を圧倒的な数量と自由なスタイリングで満足のいく選び方ができるのは呉服店だけであり、その着姿は素人が見ても解るくらい安価なセット品と比べて違いが明確である。そういう強みを全面的にお客様にアピールすることを心から期待したい。

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「着方」の提案の可能性

今日、東京は青山の骨董通りに京都市の産業観光局のプロジェクトであるきものアンテナショップ「白イ烏」のオープニングレセプションが行われた。着物ショップのレセプションとしては最大級のもので鳩山美幸現首相夫人をはじめ多くの著名人や関係者が招待された。販売コンセプトは徹底して分かりやすく,買いやすい価格を設定し,従来のきものファンだけではなく,ファッションに関心の高い女性に「自分で買う一着目の『きもの』」として選んでもらう。
商品コンセプト:ビル街の中でもすんなりと溶け込むモダンさがあり,洋服感覚でファッションとして着られるきもの。

呉服業界、特に小売からはポジティブ、ネガティプ様々な意見が飛び交っているが私としては新しい事を始めるにあたって細部に至るまでのマーケティングと今後起こりうる自体の予測まで落としこんでのオープンであると感じられるので多いに期待したい。ただ私も新規出店のストアーマネージャーを2回経験し、1回は大成功、もう1回は大失敗に終わった経験がある。要因は本当に小さな変化に気付いていたかである。その蓄積が落とし穴となる。「新しい」は何かを発見し変える大きな力を持っているが、その反面誰も予測がつかないことも待っていることを何回も体験した。是非「白イ烏」はその先駆けになって欲しいと願う。

1、 新しいキーワードとしての「着方」を考えよう
ツイッター上では色々な着物に対しての提案や理想が呟かれており、まさに消費者のウォンツを知るには絶好の場所だ。そのなかであるフォロワーの呟きに目からウロコが落ちた。
「着るものの着方に王道なし、正解なし、早道なし!っつうことで着まくることでその人にあった着方になるもんだと思いますです。着るもの着るのにAさんが着てもBさんが着ても同じ着姿…じゃあ面白くないもんねっ。」
言葉だけをみたら当たり前のことを言っているようだが、実は着物を着付けるという観点だとほとんどの人が意外に気付かない。今ではほとんどの呉服店でトルソー(マネキン)にてコーディネイトを訴求している。それを目安にして消費者はきものというもの、またはその店の商品提案を認識している。いわゆる呉服店が提案する「着方」だ。でも先ほどの呟きの意味はそうではない。自分なりに好きに着れば良い。そこに「ねばならない」「こうしなさい」は返って大きなお世話なのだ。「私ならこう着たいな」という気持ちが着物の世界へと自ら誘うのだ。ここで言う「着方」は決してスキルではないのだ。

2、 「着方」を提案出来たら呉服販売は変わるかもしれない
「消費者は初めての体験するものには決まりがあると思っている」
私は常にそう思っている。当たり前の事だが初めての人にはそれが戸惑いであったりストレスであったりする。きものにとってもそうだ。はじめてきものを着てみようと思っている人にとって「着付け」は最大の難関というイメージがある。そして誰かにそれを習ったとしてもやはり、「こうしなければ」の連続である。その難関が頭をよぎり「着る機会がない」「自分で着れない」という理由で着物が欲しいと思っても断念する人は多い。

「着付」ができなければ「着方」は提案出来ないと思うかもしれない。もちろん着方を楽しむまでにはある程度の着付のスキルは必要だ。しかし、着方という「きものを着る楽しさ」が見えていれば、着付けは心理的にさほど高いハードルにはならない。現に初めてきものを買った人で着る楽しさを販売時に十二分に伝えてあげると、「頑張って着付け覚えてこういう風に着たい」ということを言ってくれる。

いまの着物の販売に必要な部分は、着物が着れる販売員ときものが初めてのお客様とが「共感」することである。なのに販売員とお客様がなかなかシンクロしない。それは今の販売が「説得」になっており、お客様を「納得」させようとしている場合が多いからだ。お客様と共感しなければいくら価格が安価でもお買い上げ頂けない。
そのためにも呉服店はお客様に対し、この「着方」を提案し、共感する事によってお客様とシンクロする販売を目指して欲しい。そうすれば必ず新しいお客様は増え続ける。結果そのバロメーターとして「売上」がついて来ると思う。

本日のまとめ
1、 新しいキーワードとしての「着方」を考えよう
2、 「着方」を提案したら呉服販売は変わるかもしれない

「着方」を提案したフォロワーの本来の想いは、今の着付けが「着せ付け」になってはいないかということへの警鐘だ。それによってただでも着る人が少ないのにこのままではもっと少なくなりかねないということから来ているのだ。人は十人十色。同じ着方はあり得ないしつまらない。もっと自由に自分にあった「着方」にすればいいというものだ。今回の私の着方の観点はそれをヒントにし、アレンジさせてもらって新しいお客様がきものを着る事を楽しいと思って頂くキッカケをつくる呉服販売のあり方を提案している。多少の解釈は違えど着物ファンを増やしたい想いは変わらない。
また、3月2日にオープンする「白イ烏」には楽しく自由な着方を提案し、お客様とシンクロ出来るような「共感販売」を期待したい。

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