« 新しいものへの挑戦 | トップページ | 絶対に超えられない人 »

2010年3月 8日 (月)

呉服業界へ就職なさるみなさんへ

いよいよ卒業式シーズン。今年も様々な場所で袴姿に証書入れを持った学生さんを目にすることだろう。また同時に各企業の新入社員研修等が始まるシーズンでもある。呉服関連企業各社もそういった研修を実施するところもあるかと思う。
私も呉服企業の経営支援などの他にきもの専門学校や高校の被服科などできものビジネスやきもの服飾史などの講師もしているので、そういった学生と接する機会が多い。皆、呉服業界に夢を抱いている。今年も沢山の学生が夢を持って呉服の世界に入っていくことと思う。そんな業界の金の卵達にエールを送りたい。

1、 呉服小売業に就職される方へ
当たり前ですが、呉服小売業はお客様にきものを販売する仕事です。販売するためには皆さんが思っている以上に沢山の仕事があります。お店をいつもキレイに保つこと。お客様が解りやすい陳列をすること。お客様が居心地のいい空間にすること。お客様名簿の管理、伝票管理、商品の入出荷処理、その他山のようにやることはあります。しかしそれはすべてお客様のためにすることです。
皆さんがきものを販売するにあたって、これから様々な悩みや不満を持つこともあるかと思います。その時に「売る」とは何かを是非考えて下さい。

きもの販売は「売ることでお客様を護り、産地を護り、きものを着る文化を護ります」これはある呉服小売店が使命として掲げている言葉です。売ることは全ての業界に取って大切です。その中で売ることでお客様を護るという言葉はなかなかイメージがつかないとは思います。どうしても過去の販売方法の過ちやお勧めの仕方等が問われているのは確かです。しかし、あなたが正しく売ることで誤った売り方からお客様を護り、あなたが正しく売ることでお客様が着物を好きになって頂ける。あなたが正しく売ることでお客様が今まで気づかなかった新しい自分を発見出来るのです。

「売る」はすべての企業にとって必要なことであり、文化を護り、文明を育て、生活や人生を豊かにします。皆さんが着物という世界で「売る」を仕事にすることはきものそのものを護ることになる素晴らしい仕事なのです。宝塚歌劇団ではありませんが、是非とも清く、正しく、美しく、そして楽しく「売る」をしてください。


2、 呉服卸業(前売問屋、メーカー、買い継問屋)に就職される方へ
呉服卸業は生産者が血のにじむような努力をして作ったきものを、沢山の着物屋さんへ販売し、沢山の消費者に紹介出来るようにする大きなお仕事です。また、お取引のある呉服屋さんがより効果的に営業が出来るような様々なサポートもします。メーカーであれば素晴らしい商品を企画したり、新しい提案をすることもできます。産地買い継問屋であれば、生産者がモノ作りを続けられるよう商売を通して勇気づけてあげることもできます。呉服業界において卸業というのはなくてはならない存在なのです。

みなさんが入社してまずやることといえば、きっと入出荷作業や札付け、伝票作業を来る日も来る日もやらされることでしょう。私は小売でしたが商品部に配属になった時に最初の半年は毎日そういった仕事でした。しかし、それは後になって非常に役立つことで、商品を見るだけで、触るだけでどのメーカーなのか、なんの商品なのか、高級品か、普通品か、国産か?海外か?などがわかるようになるのです。

こんなはずではない。こんなことをするためにこの会社を選んだのではないという気持ちになるときがあるかもしれません。ですが、そういう気持ちになってしまうような内容の仕事ほど後々の自分を助けてくれるスキルがつくのです。卸業の仕事は大変です。しかし是非とも与えられた仕事はすべて身になるという気持ちで取り組んで下さい。そうすれば必ず自分がやりたかったことが出来るようになります。


3、 着物を作る、直す仕事に就職される方へ。
「モノ作りを忘れた国は滅びる」ある大手前売問屋の社長の言葉です。
特に日本のモノ作りというものは多くの作家、職人と接していると「作る」以上に「創る」という仕事をしています。「作る」はある意味技術的な経過と結果であり、「創る」は技術と感性と心が一体とならなければできません。もっと端的に言えばモノを「生み出す」のです。そして「直す」技術も絶対になくてはならない仕事です。きものの「直す」は「治す」に近い技術であり、しかもお客様の大切な思い出や気持ちの詰まったものをお預かりするわけですから絶対に失敗は許されません。

その仕事を選択し従事することを決意したみなさんは、まさに創造者となるべくスタートを切られるのです。技術を習得するにしても何度も何度も挫折しそうになるでしょう。それを乗り越えて初めて身に付くものなのです。そして自分ならこうするという自我が心の中に出てくるでしょう。それはある意味大切なことなのですが、その前にその工房の親方の模倣をしてください。時間はかかりますが、模倣をし、少しでも技術を近づけることで自分を磨いて下さい。その上で自分が表現したいことや新たに目指すことを考えて下さい。

プロフェッショナルとアマチュアの違いは、モノ創りの責任の差です。これは物凄く大きな違いです。プロフェッショナルは常に注文者の要望やニーズを念頭に入れた上で自分自身ができる最高の表現をして創るのです。そして注文者の期待以上の商品を生み出し、報酬を頂くのです。アマチュアはどうしてもまず自分の好きなものを作る。いうなれば自己満足です。この差を体で感じ、プロフェッショナルの道を歩んで下さい。


4、 きものを仕立てる仕事に就職される方へ
和裁がなければきものは着れません。特に和裁という技術は日本が世界に誇る縫製技術です。生地の性質や相性を理解し、どうしたら着やすいのかを常に意識し、しかも小売と違って注文頂いたお客様の姿形は寸法でしかわからない。どんな方がお召しになるのかを想像を巡らせ、少しでも着心地の良い縫製を行うという魔法のような仕事なのです。

また、その技術を使って、より着やすい縫製、裁ち方や縫い方によってさらに新しいものが生まれる可能性も沢山あるのです。

そして縫うことを仕事にしている方にとって重要なことは、道具を大切にすることです。和裁士にとって大切な道具は針です。年間で数えきれないほどの針を折るそうです。和裁の技術のない私にとって針が折れるというのは想像も経験もしたことがないのですが、和裁士の方にとっては日常茶飯事のことと聞きます。そして針を「お針」と呼び、折れた針も針供養をするほど大切にするそうです。

昔読んだ現代の名工故興津佳平先生の「和裁の吹きだまり」という本のなかで、針を失くすと辱められるようなお仕置きをされ、それが嫌でいつのまにか針を大事にすることが身に付いたという一説があります。道具を大切にし、より高い技術を求め、着心地の良い仕立てを目指し続けて下さい。

これから呉服業界はいよいよ新しい時代を迎えます。どこも生き残りをかけて必死になっています。新しくこの業界に入る皆さんが、10年後20年後に第一線で活躍することで必ず呉服業界は再び魅力ある業界に生まれ変わることでしょう。心から皆さんの活躍を祈っています。

あらためて、ようこそ夢いっぱいの呉服業界へ!!


人気ブログランキングへ
  ↑
どうかポチっとお願いします!ブログを書く励みになりますので!
今日もお読み頂きありがとうございました!

|

« 新しいものへの挑戦 | トップページ | 絶対に超えられない人 »

ファッション・アクセサリ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1284655/33679175

この記事へのトラックバック一覧です: 呉服業界へ就職なさるみなさんへ:

« 新しいものへの挑戦 | トップページ | 絶対に超えられない人 »