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2010年3月 5日 (金)

甦らせるぞ!竹筬(たけおさ)

去る2月26日から3日間、八王子織物工業組合において「甦らせるぞ・竹筬 試作竹筬による織布展」が行われた。
竹筬とはなにか?
織機のしくみは経糸(たていと)を張り、緯糸(よこいと)を織り込むことで織物にするものだが、足下のペダルによって経糸を引き上げて開口させ、その中に緯糸を通し、手前に打ち込んでいく。この打ち込む部品が「筬(おさ)」である。現在は手機、自動織機ともに通称「金筬(かねおさ)」と呼ばれるステンレス製のものが主流であるが、昔の手機はほとんどが竹筬であった。
では何故、無くなってしまったのか?それは後継者がいなくなったからである。
本日はその「竹筬」というものを紹介したいと思う。

1、 筬のしくみ
筬は前述した通り、緯糸を打ち込むもの。そのために全ての経糸を1本ずつジャバラ状になっている間に通す必要がある。このジャバラ状の1つ1つを
「筬羽(おさばね)」という。この筬羽の数が多ければ多いほど沢山の経糸を使った細かい織物を織ることが出来る。この細かさの単位を算(よみ)といい、着尺の反巾1尺(約38㎝)の間にどのくらいの隙間があるかという単位である。一算を38羽とし、一番細かい筬で18算まであるので38×18算で約680羽となる。(ちなみに筬の単位の基準は1算=40羽が主流)
そして1羽に2本の経糸が通るので鯨尺での18算筬だと経糸は1360本となる。
これは大島紬でいうところの一番細かい12マルキのものに匹敵する。物凄い細かさだ。算の単位は10算から18算まである。
また一番細かい18算の筬羽の厚さはなんと0.252mm。隙間巾は0.556mmとまさにミクロの世界。今の金筬は機械生産だが、竹筬はすべて手作り。この細かさを手仕事で職人が竹を引きながら作っていくのだから、気の遠くなる世界だ。

Img_1625
<非常に細かい筬羽>

2、 竹筬の特徴と生産工程
竹筬の特徴は、①自然素材のみで出来ており軽く、扱いやすい ②筬羽が竹製であり、羽に弾力があり、歪みに強く、水に強い。 ③経糸の擦れに対して優しい。といった3つの特徴がある。比較すると金筬はステンレスで出来ており強いが遊びがない。そのため紬糸や玉糸、綿糸などのスラブのある糸は引っ掛かりがでたり、最悪切れることもある。竹筬に関しては弾力性があり、そういった糸に対しても微妙にそして自然に調節してくれるのである。
まさに織り手の意志を受け、ヤンチャな糸でも優しく通してくれる。まさに竹筬は命があるかの如く「生きている」のである。

その工程は「筬羽作り」と「仕上げ&組み上げ」という2つに分かれる。
「筬羽つくり」は竹編み→竹割り→荒引き→幅取り→二番引き→皮とり→上引き→羽揃え→羽切りと第一工程だけで9工程もある。
「仕上げ&組み上げ」は傍仕上げ→焼き入れ→縁仕上げ→面取り→筬編み→仕上げと第二工程は6工程

全部で15工程も必要なのだ。そして一番細かい18算の筬羽も先程述べた薄さにすべて同じ厚さで手仕事によって羽一枚一枚引いていくのであるから、気がおかしくなる。しかしそれをしなければ、緻密でしなやかで優しい織物は出来ないのだ。

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<気の遠くなるような筬羽を正確に薄く引く作業>

3、 竹筬復活への願い
そんな気の遠くなるような工程を辿らなければ作れない竹筬は、今はほんの一部しか生産出来ない。実は岐阜県の日本竹筬工業株式会社が平成13年に廃業し、竹筬の生産は事実上消滅しているのである。そして様々な同志達が平成15年に日本竹筬技術保存研究会が発足し、竹筬の生産技術を広めようとしている。特に今、力を入れているのは沖縄をはじめとする全国の紬や綿の織り手に試織を依頼して竹筬の良さを実感してもらうことである。それがキッカケで竹筬を使用してくれるようになれば、作り続けることができ、その技術を次世代へ伝えるキッカケにもなる。そして何より優しい織物が供給出来るのである。
また古い竹筬を修理したり、調整したりすることも積極的に行うことで再使用率を高め普及を促進している。
どちらにしても織りに携わる方々が竹筬の良さを本当に感じてくれて、使用する人が増えることで、復活することを心より願う。

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<竹筬で織った川越唐桟織(綿織物)>


*最後に
私が心から感動したのは、竹筬保存会の方々の「伝えたい」「残したい」という切なる想いと「私たちも着る人のためになんとか良い物を提供したいんです」という言葉であった。私は正直驚いた。筬は機の一部であり、良い筬を作り織り手さんに満足してもらうことを目標に作っているのかと思った。しかし着る人のことを思っていた。自分の作った竹筬でどんな織物が織り上がるのかは一切わからない。にもかかわらず消費者のことを思う気持ちには脱帽だ。

今まで私は織物生産者=織り手さんという固定観念しかなかった。
織機の一部の、しかもたった40㎝幅の小さな竹筬に、織物を愛する凄まじい情熱と技術の結晶が詰まっていることを知った。

あらためて想う。竹筬は生きている。

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コメント

ツイッターではフォローありがとうございます。
てしごと屋と申します。
川越唐桟は、あこがれの織り物で…
もともと地元が川越なので、いつかは買おうと思っていたら…今作る方がいなくなってしまいましたよね…。
今作っている方はいらっしゃるのでしょうか。。
着物生地は、織り手も、織る機械のつくり手も、素材のつくり手もいて、成り立つもので、当たり前ですが、その一つでも欠けると作れなくなってしまうということが痛切に…。
もうひとつ、着る人も、いないとだめですね。
川越では着物姿の人も多くなりましたが、まだまだ…。もっと増やしていけるといいなあと^^
これからもブログやツイッター楽しみにしています。
よろしくお願いいたします。

投稿: みぃ@てしごと屋 | 2010年3月 5日 (金) 21時31分

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