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2010年4月 6日 (火)

接客と販売は違うもの

春の装いは晴れ着もしゃれ着も相まって華やかである。
たくさんのきものを着るイベントがきものファンによって行われ、純粋にきものを楽しみたいという人たちがこれほど多いとは全く嬉しい限りである。本来はこういうきものファンのバックアップをする役目をするのが呉服店であるはずだ。

昔の呉服店は大店(おおたな)と呼ばれ、庶民にとっては憧れのお店であった。三越、高島屋、大丸、伊勢丹、松屋、松坂屋など今を代表する百貨店のほとんどはその憧れの的である呉服店だった。

当時の呉服屋の販売方法はお客様の好みを聞き、その中から合いそうなものを数点取りだし、広げてみせる。時には反物を肩にかけるくらいはしたようだが、今でいう試着ということはしなかった。お客様の好みを聞き出し、コミュニケーションをとりながら、反物を広げ、それに合う帯などを合わせてお客様がお気に召すまで会話を楽しみながら、お勧めをした。もちろん当時の呉服屋の店員は丁稚時代に鍛え上げられた豊富な知識も兼ね備えていた。

私もバイヤーとしての期間も長かったが、販売員としても長く従事してきた。
その販売員としての経験は今の仕事に非常に役立っている。大型店舗ゆえの大きな売上目標や、システム化された動き、販売の流れのマニュアル等目指すべき指標とやるべきことが明確であった。ここで言っておくが、これが良いか悪いかというのは全くの別問題であるので誤解のないように。ただ、それが会社としてのやり方であるならばそれに沿って仕事をすることはごく自然なことである。

ただ、ある程度年数が経ち、自分が指導する立場になった時に不思議な気持ちが芽生えた。自分でもそれなりの販売スキルがあり、会社内でもちょっとは知られる存在になり、自分の販売スタイルというのを考えだしたからとも思えるが、「勧めない販売」というのにチャレンジしてみたくなった。もっと単純にいえば、お客様にどんどん押していくような勧める販売がいやになったというのも大きな理由でもある。


さて、そうはいっても勧めなければこの高単価の商品はなかなか買ってもらえない。ただ、無理なお勧めはしたくない。要は勧めないといっても最後に一度だけ「是非お求め下さい」とだけいう販売が成り立つかどうかにチャレンジしてみた。これは一企業の販売員としてはただの自己満足であり、結果が出なければ最悪であるし、店にも会社にも迷惑がかかる。だから時間を掛けて達成する目標ではなく、すぐに結果を出さなければならない。

ただ案の定1週間は散々な結果であった。今までと同じ流れでお勧めだけしないとなれば売れるはずはない。当たり前の話しだ。お客様からすればやる気のない販売員に映ったかもしれない。その一方でお客様の店内の滞在時間は飛躍的に伸びていた。お客様とあれこれ楽しく接しながら、もちろん試着も奨めてお手伝いし、コーディネイトを提案していたからお客様も結構楽しんでいた。そういう場合は大体反応は「ありがとう!とても勉強になったわ!」である。

私が常に心掛けた販売はキチンと接客してお客様の視点になり、お客様とコミュニケーションをはかりながら、お好みやファッションの志向を着ているもの、持ち物や靴、買い物している内容や時には購入した食品まで参考にし、それを総合して提案したいきものやコーディネイトを時には真面目な商品説明であったり、時には冗談混じりの話しをしながら、提案したポイントは今のお客様の好みにキッチリ合わせたものと是非ともチャレンジして欲しいタイプのものを提案した。そして選ばれるのは決まってチャレンジして欲しい方だった。

そうしていくうちに自分の理想の販売を描く中で、「接客」と「販売」は似て非なるものだと気付いた。これは呉服販売をする上で重要なポイントである。

「接客」とは読んで字のごとくお客様と接することである。いかにお客様との関係を作り、きものを通してコミュニケーションをつくるかという非常に重要な部分である。基本的にお客様が「欲しいな」「どうしようかな」と思って頂いてからが「販売」なのである。これに気付くにはかなりの時間がかかったが、そうなのである。そこまでにいくにはいかに「接客」するか?なのである。
「同調」「協調」「提案」という「接客」をしっかりとして、はじめて「お勧め」という「販売」が必要になってくる。これをいかに理解するかが呉服の販売にとって重要なのである。

未だに、店に入ったとたんに勧める店もある。こんな店と販売員は問題外だが、意外に多いのが悲しい。また、「あなたはわからないだろうから私が教えてあげる」的な知識の押し付けのような販売もある。こんなことでは、呉服店からお客様の足が遠のくのは当然である。それでいて「良い客、悪い客」と勝手に判断されてはたまったものではない。

また最近は販売員の商品知識も異常といえるほど低い。これはマーケットリサーチしながら何もいわず接客されてみてもまったく勉強していないなというのがよくわかる。少なくとも自分の店で売っているものをよくわからないというのは困ったものである。今どきアパレルでもそういう店員は少ない。というよりアパレルはトレンドの変化が激しいからこそ、個々の販売員のレベルは非常に高い。

そういう意味でも「接客」と「販売」は違う。そしてお客様と同調、協調し提案することで、着物という商品を真剣に見る目になって頂ける。そしてお勧めすることによってお買い求め頂ける可能性が高まるのだ。

私の理想は「お勧めしない」まではいかなかったものの、なんとかそれに近いレベルまではいけた。その結果、沢山のお得意様ができたことは大きな財産となった。また気軽にお店に寄ってくれるお客様が圧倒的に増えたことも確かである。一応売上もそれなりにあげられたことを記憶している。

呉服商法の不信は「無理」と「無知」に集約されているといえる。
「価格の無理」「販売の無理」「お客様への無知」「商品の無知」である。不透明な価格設定や二重価格などの無理と過量販売や騙しのような無理。そしてお客様視点を知ろうとしない無知ときものという商品をしらない無知。これがお客様をきものから遠ざけ、多重債務などの被害をもたらした。もうそのような販売はないものと信じたいが、未だチラホラと聞こえてくる。

全国区のきものファン達のきものへの思いを今一度キチンと受け止めて、呉服屋さんにいくことが楽しい、気軽に色々なきものが見れて、しかもキチンとアドバイスしてくれて、安心して購入することが出来る。そんな商いが出来るように心から願うばかりである。

お客様を知ることが大切。だから「接客」と「販売」は違うのだ。

あなたの行きつけの呉服屋さんはきちんと「接客」してくれますか?


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