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2010年4月16日 (金)

新しい芽

去る3月10日、関東地方に春一番などとは言い難い強風が猛威を振るい、関東地方の交通機関が麻痺し、街ではケガ人などが多く出る中、樹齢800年から1000年とも言われる鎌倉鶴岡八幡宮の象徴といわれていた「大銀杏」が倒れた

この大銀杏は調べてみると建保7年(1219年)源頼家の子である公暁がこの銀杏の木に隠れて待ち伏せし、源実朝を殺害したことから別名「隠れ銀杏」とも呼ばれた歴史の生証人であった。それがたった1日の強風で倒れてしまったのである。ところが懸命な保存活動が身を結び、先日なんと新芽が出てきたのである。恐るべき生命力だ。

今週の私の出張は本当に有意義であり、これからの業界の可能性を感じた3日間であった。京都2日と奈良1日という言葉だけみればまるで修学旅行のような日程であったが、その実、卸業でのコンサルティングやプレゼン、メーカーでのミーティングやコンサルティング、悉皆のコンサルティング、きもの専門学校での教育プログラムについての理事長との打合せ、西陣テキスタイルメーカーとの交流、全く新しいネットショッププロジェクト、琉球織物生産者達の展示会と交流など、小売業以外の呉服産業に関わる企業や人との仕事や出会いを通した意見交換などをしてきた。

そこで感じたのは厳しい現実を受け止めながらも新しい活路を見出そうとする情熱と努力、そして具体的な考えと行動、そして若さと新しさである。とにかくそのすべてに熱く、ポジティブでしかも自分の仕事に誇り高い。なおかつ志が高い。これは決して大げさではなく、今の大河ドラマではないが「幕末の志士たち」のような変えたいという強い意欲である。

その人たちの誰もが、ただの理想論を掲げているだけではなく、すでに行動しているところがよりこの先の大きな期待を膨らませるのくらい、理想と現実のギャップを縮めている。これはすごいパワーだ。

特に私が嬉しかったのはこれからいっしょに取り組むある大手卸業の社長の姿勢である。今、問屋に対しては様々なことが言われているが、私が以前より主張してきたことを数字を元に再度ご説明したい。

日本繊維新聞掲載の2011年予測によると、小売店規模は4150億円。これは2009年度小売店規模が3210億円と言われているのでいささか楽観視されている予測であるが、そのままの数字を述べるとその内訳が大手チェーン(1400億円)、百貨店(500億円)、量販店その他(160億円)、インターネット(500億円)、訪問・催事販売(280億円)、そして専門店(1300億円)となっている。ちなみにリサイクルの予測は350億円でレンタルは800億円とすでに百貨店を大きく上回る予測だ。しかしこれらはあくまで来年予測であり、正確ではなく多少楽観的な数字であることは認識して頂きたい。

ネット売上は百貨店と同額予測であり、これは今後大きく逆転していくことは確実視されている。そして何といっても専門店売上である。これは大手チェーンとほぼ並んでいるが、大手チェーンは大苦戦が続いており、小規模小売である専門店は厳しいながらもなんとか持ちこたえているという印象だ。

上記の数的予測の根拠から、大型チェーンの売上規模の縮小はやや現実的な話しであり、来期予測額である1300億円は下回るだろうと感じる。そこで業界にとって大切なのは孤軍奮闘している専門店である。

ここで、私の主張をいうと問屋の衰退は小規模小売業の衰退を意味するということである。何故なら小規模小売は例外を除きその多くが、問屋の商品供給に頼っているからである。大手チェーンやある程度資金のある中規模の小売店はメーカーなどとの直接取引は普通にやっているが、小規模小売はそうはいかない。何故なら小規模小売の販売量では委託中心の取引は与信枠など存在しないのと同じであり、そのリスクを考慮するとメーカー側も残念ながらなかなか対応が難しいのである。

それを一手に引き受けていたのが前売問屋である。しかしながら売上低迷の中での手段が催事偏重となり、店頭での新規顧客開拓ノウハウもないので、度重なる催事導入よって結果、小売店の顧客を枯渇してしまったという状況なのである。それによって問屋の存在意義さえ指摘されていた。


しかしながら、私はその問屋が衰退してしまったら小規模小売も淘汰されてしまうと述べてきた。そして今こそ問屋と小規模小売が協力してもう一度地道に店頭で新規顧客の創造をすべきと主張してきた。そしてそれに共感してくれた大手問屋が現れたのだ。これは時間がかかることであるがそれを受け入れるのはまさに英断である。

もちろんこの考え方は賛否両論で一部の小売店からは批判も出るだろう。ただ、現実多くの小売店から助けて欲しいといわれているのも確かだ。だからこの考え方が必要のない小売店は自助努力で何とかするだろうし、是非とも今まで以上に頑張って頂きたい。その一方、店頭で新しいお客様を増やすために助けを求めてきている多数の小売店の手助けを問屋がいっしょになって協力するというのはまさに今までの流れを考えると画期的である。それも営業も商品もノウハウもである。

問屋の営業がどうすれば店頭営業での集客が出来、どうすればキチンとした顧客管理ができ、そして店頭でお客様が買いやすい価格を改めて考え、それを問屋の商品部がそれに合うように努力する。これを問屋の営業も商品担当も一緒に悩み、考える。そして取引のある小規模小売店が永続出来るように協力するのである。

再度いっておくが、これは催事ではない。店頭である。毎日繰り返される最も厳しい店頭のことである。

もちろん目先の売上が出来ないことからほとんどの問屋はこんな効率の悪いことは未だ受け入れない。ところがそれを全社を挙げてやろうという問屋が現れたのはものすごいことである。当然私も全面的に手伝い、取り組んでいく。

今回の出張で確信した。小売の店頭を甦らせ永続出来る為のバックアップをするという卸業の熱き経営者。厳しい中でも何とかより良い商品を企画制作し、消費者に発信しようと努力しているメーカー。染み抜きなら絶対にすべて落としてみせると日々努力し、また新しいチャレンジをし続ける若き染色補正業の社長。全く新しい形のネットショップを構築してきものをそして日本を元気にしたいという志高いIT企業社長。今後の呉服業界の為に総合力のある人材育成をしたいというきもの専門学校の熱き思いを持つ理事長。自分が出来る限りの努力をし、素晴らしい物を日々作り続けている生産者たち。高い伝統技術を利用し、テキスタイルという形で世界に発信し成功している老舗メーカーの若き社長。その誰もが本当に厳しい状況の中で高い志とひたむきで前向きな姿勢でそのすべてに取り組んでいる。そして何よりそういう人達は明るい。そしてすべてを受け入れている。

その一方で未だ不満をまき散らし、ネガティブで後ろ向きで、それでいて行動も起こさない。すべてを自分以外のせいにし変わる努力をせず、変わろうとしている人達にまで水を差すような批判をする人も残念がなら非常に多い。

確信したのは、前者は間違いなく最低でも生き残る。そしてきっと何かを変えていく。そして後者は間違いなく消える。これは絶対に間違いない。

しかし、今からでも前だけは向ける。志を持つことは出来る。そうすればまだまだやれることは沢山ある。たとえ資金が厳しく新しいものは生み出せなくても、どんなに苦しくても志と前向きな姿勢であれば、絶対に道は開ける。私もかつてその中の1人だったのだから間違いない。

1000年の歴史が一瞬に消えたが、その土台から新しい芽が誕生したのである。
今の呉服業界も長い歴史によって作られたものが強風によって危険状態であり、大銀杏と同様倒れてしまうかもしれない。もしかしたら実は倒れてしまったのかもしれない。しかしその中で強い生命力で新しい道を開拓し、勇気を持って踏み出している「新しい芽」」という名の熱く若き人達が出てきたのは、この業界に新たな可能性を心から感じた。

私たちは誰でもこの「新しい芽」になれる。なぜなら、もうそうなっている人達がいるからだ

そしてその「新しい芽」が大きな木になるスピードは絶対的に早い。

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今日も読んで頂きありがとうございます!!

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コメント

読みました。若輩者ながら私には非常に共感するご意見でした。メーカーでも小さな小売りを必死に回っているところもあるようですが、メーカーはメーカー。一社の商材では店頭に太刀打ち出来ません。
今問屋さんは値段ばかりおっしゃるところも多く、そんな姿勢からはとても呉服屋の将来を考えたビジョンが見えない。
だからおっしゃるような問屋さんは我々の希望でもあり、我々も協力して一丸となり邁進したいと思います。
そしてそんな問屋さんが必要とする物作りが出来るように頑張りたいと思います。
勇気のわくブログでした。
感動しました。

投稿: 枡儀 上田哲也 | 2010年4月16日 (金) 09時02分

ツイッターで京都行の様子を拝見していたので、一体どんなことが?と興味津々でおりました。読んでいるこちらまでわくわくしてきました。私は業界の人間でもなく、単なる一きものファンですが、こうした小さな芽を何かの形で大事にしたいと思います。

投稿: はつき | 2010年4月16日 (金) 13時06分

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