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2010年4月10日 (土)

きものファンはアイディアの宝庫

「手作り」「Only one」というKey wordがいま消費者を動かしている。100年に一度の大不況という経済状況が生んだ消費者たちの工夫であり、楽しみ方でもある。その象徴がメディアでも話題になった「ユザワヤ」の躍進である。様々なジャンルでの消費者の手作り意欲を充たし、売場にいるだけでその想像力までも掻き立ててくれる魅惑の手芸専門メガストアだ。特にユニクロで買ったシンプルなシャツやデニムに自分オリジナルのデコレートをしてOnly oneファッションを楽しむ様は消費者もユザワヤもユニクロもまさに「三方よし」となる。

きもの業界とて例外ではない。きものを着るたくさんの人達がその人なりの工夫をして楽しんでいる。またそれをさりげなく使いながらも、気付かれると嬉しいという、いかにも女性的で優しく品の良い楽しみ方が心地よい。
先日六本木きものフェスタに行った時も、男女のそれぞれの着物姿が多く見られたが、やはり自分なりのOnly oneアイテムを身につけている人が多かった。男性に多かったのはストールである。ある人のそれは、一見ブランド物か何かかと思いきや、聞いてみると長い麻の生地を手芸屋で購入し、おまけに両端を自作で房状にして顔料ペンで気に入った絵をさりげなく描いているものでお金を払うから作って欲しいと思わずいってしまったくらいおしゃれだった。

またツイッターで紹介される着姿を見てもその工夫は楽しく、素敵だ。洋服地を自分なりに和のバッグにしてみたり、箸置きを加工して帯留めを作ったり、パール風の飾り玉をキレイにチョイスして礼装チックな羽織紐を作ったり、中には昔流行ったリリアンを利用して作った組紐を羽織紐にしたりと、まさにきものファンはアイディアの宝庫である。

中にはそれを邪道だと否定する人達もいるが、私から言わせれば無粋であり、どうぞご勝手にきものの王道とやらをお楽しみ下さいと言いたくなる。

きものは冷静に見てみるとパーツの多いファッションだ。肌着や腰紐、伊達締め、帯枕などの着装用パーツをいれるとかなりの量になる。普通に考えれば面倒だとか着るのが大変だとか思われるが、私から言わせればパーツの数だけ楽しみがあるとアピールしたい。


きものの楽しみは、「着付ける楽しみ」「着る楽しみ」「気づく楽しみ」がある。パーツを視点に考えると「着付ける楽しみは」着装用小物のような見えないものでも可愛かったり、自作だったりと道具としてだけ捉えるのでなく、楽しいアイテムとして捉えられるようなものであれば、着付け自体がどんどん楽しくなる。

以前後輩の女性バイヤーがその発想で、様々な可愛い柄やカラーの帯板や帯枕、腰紐などの着装用小物を開発したところ、他の小物より割高であるのに大ヒットした。女性用着物の着付けは多少の労は必要だが、そういった小物が楽しいと着付け自体も楽しくなる。これからそういう工夫も大切である。

「着る楽しみ」においては、やはりストーリー作りが楽しい。着ていく場に応じて、着る前にそれぞれを組み合わせて自分なりのストーリーを組み立てる。
古い唄になるが、南こうせつの「夢一夜」という唄は愛する人に逢う前日に着ていく着物が決まらず、脱ぎ散らかしたきものを「絹の海」と比喩して揺れる女心を巧みに表現している。これも一種の着る楽しみに繋がる。そしてここにも着る人の想いというアイディアが詰まっているのである。

そして「気づく楽しみ」である。これは着る楽しみのストーリー作りの延長線上にあるが、例えば春の装いとしての小物使いや色の組み合せを、できれば気づいてくれたらうれしいなという「気づき」の楽しみである。これもきものファンのアイディアや欲求を感じ取れば、それに応える物作りはいくらでも考えられる。

たとえば、私が長襦袢を開発していた時に、襦袢の袖が無双仕立であることを利用して袖の内側の無双になる部分を別の色と振りから少しだけ見えるように可愛い刺繍をあしらい、春襦袢と秋襦袢というニュアンスで商品化したところ大ヒットした。これも通常の商品より割高だったが、低価格の通常品よりも倍は売れていた。これもちょっとした隠れたおしゃれを気づいて欲しいという女性の欲求を少しだけ充たせられる「気づきのアイテム」として非常に勉強になった。


今、残念ながら着物売上の低迷によってメーカーは物作りが出来ないでいる。物が流れないのだから、これはメーカーの責任ではない。物作りをすれば、それだけの初期投資が必要であり、それが流れなければ資金繰りを大きく圧迫する。非常に厳しい状況である。毎月毎月問屋や小売業者とキャッチボール状態となっている商品は消化出来ず、それでも新しいものを要求され、より難しい対応を求められている。だから安易な提案は無責任にできない。

ただ、ひとつだけ言えるのは、そういう消費者のアイディアや欲求に対して、こまめに情報収集をし、消費者視点でのプロダクトアウト的なマーチャンダイジングを考えているかどうかを問いたい。もちろん、直接消費者に会って要望を聞き、ハイそうですかと物作りをするほど商品企画は甘くない。そういうことはまずしないだろうし、逆にするべきではない。ただし、着物に限って言えば、これだけ着る人が増えているのだから、しっかりとマーケットリサーチャーを設定し、アイテム別、年代別、シチュエーション別などの視点でMRし、そして今何を消費者が求めているのかということをもっと貪欲に探るべきである。

いまだに「消費者の情報が降りてこない」とか、「情報の共有が出来ずなかなか把握出来ない」などと言っているメーカーは多い。果たして異業種のメーカー達はこのご時世にそんなことを言っているだろうか。

きちんとマーケティングすれば、先行投資する価値のある、あるいはあえて製造リスクを掛けてでも作る価値のある商品はいくらでもある。なにもこれはメーカーに限ったことではない。問屋も小売もそして川上の生産者も同様である。商売上のマーケットイン発想はもちろんのこと、商品に関しても、消費者視点でのプロダクトアウトいう考え方はこれからの供給側の大きな課題であることは間違いない。

キモノジャック、ぶらっと着物、着物de銀座、キダオレ、六本木きものフェスタ、などきものファンが集まる場所はそのアイディアの宝庫だ。そしてそこには必ず物作りのヒントがあり、きものビジネスとしてのヒントもある。


市場を変えてくれるのは常に消費者だ。それだけは間違いない。

きものファンを大切にし、そして大いに学ぼう。希望はそこに山ほどある。

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