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2010年4月 1日 (木)

日本の伝統工芸の美 〜津軽こぎん刺しと南部菱刺し〜

昔、家庭科の授業で雑巾を縫ったことは誰にでもある経験だろう。
今、家庭では意外と雑巾を縫う機会はあまりないかもしれない。家庭で掃除の為に使用する雑巾はだいたいが古くなったタオル等をたたんでそのまま雑巾変わりに使っていることの方が多いかと思う。昔習った雑巾を縫うこと。そのほとんどが×印のように縫うことが多いのではなかろうか。そして何の為に縫うか。それは補強のためである。

きものとしてこの「補強」的な要素で縫う着物がある。「刺し子」と呼ばれるものである。ただし、雑巾のような簡単なものでなく、非常に複雑な模様で柄を形成しながら縫っていく。補強という名の芸術だ。

刺し子の代名詞とも言える日本の伝統工芸がある。津軽こぎん刺しと南部菱刺しだ。簡単に言えば津軽藩で発祥した津軽こぎんと南部領で発生した南部菱刺しで双方とも青森県だ。(南部領は南部氏が統治した領域)

津軽こぎん刺しは津軽地方一帯に伝わる伝統工芸だ。基本的には麻布へ刺したものである。何故なら、北国では綿の栽培が出来ないため、庶民の衣服は麻布が一般的であった。また、江戸時代には「農家倹約分限令」という倹約令があり、農民はすべての着衣に厳しい制限を課せられていた。

また、木綿の着用自体が許されておらず、農民達は麻布を重ねて刺すことで普段の衣服とし、また擦れや摩耗に強くなるよう「刺し子」をすることで、農作業にも耐えられる補強を施していた。その模様がこんにち「こぎん刺し」いわれる美しい刺し子模様となったのである。

津軽こぎん刺しは縦長の菱形の模様で、様々な当時の生活に関わったものがデザインされている。「花コ」「石ダタミ」「猫のマナグ」「べこ」「ウロコ」などなどかなり沢山の種類が存在する。

そして木綿着用が解禁になった明治期に津軽こぎん刺しは一気に花開くのである。また綿は麻よりも目が細かいため、より複雑な模様が可能になり、その複雑さもどんどん進化していった。

一方南部菱刺しも歴史的背景は同じである。当初は麻布が一般的であり、木綿が使われ始めたのはやはり明治中期である。この南部領と言われる地域は八戸、三戸、五戸、十和田、三沢などの一帯を指す。
その柄は津軽こぎんの縦長の菱形に対して南部菱刺しは横長だ。これだけでも面白い。

面白いことにこの南部菱刺しと津軽こぎんは非常に似ているのにも関わらず、何の接点がなかったのである。

工程としては2つとも織り目の隙間(組織の隙間)を狙って刺していくという非常に根気のいる仕事なのだ。

また刺し方も好対照だ。津軽こぎん刺しは基本的に織り目の奇数目を刺していく。(1目、3目。7目)。逆に南部菱刺しは偶数を拾っていく。この接点を調べるべく以前青森をおとずれた。地元の郷土資料館や図書館にて調べたが文献としては残されておらず、どうしてもその接点が見当たらなかった。

今はどちらのものも木綿が主流で、一部麻も根強く使われている。市場では、着物よりも帯やバッグ、半纏などとして出ているが、非常に高価だ。
もちろんその数も少なく、なかなかこれらを身にまとっている人を見かけるのは困難だ。


これら津軽こぎん刺し、南部菱刺しも庶民、もっと封建的階級から表現すると「農民」から生まれた伝統工芸である。綿を着ることを許されず、麻布に補強しながら刺しをするうちに、なんとか美しく見せたい、仕事着というみすぼらしさを刺し子によってほんの少しでもいいものに見せたいという思いと願いがそのものを見るたびにけなげに感じる。

津軽こぎん刺しと南部菱刺しは絹をまとうことなど一生許されない、女性の「美」への執念が詰まってた「想いの衣装」なのだと心から感じる。

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コメント

こぎん刺しと菱刺しの違い、よく理解できました。ありがとうございます。
先日、仕事で出かけた浅草で、偶然「アミューズミュージアム」{http://www.amusemuseum.com/boro/index.html}
というところで「南部菱刺しの前掛け展」を見る機会がありました。日常着の中に手間をかけることで美しさを追求しようとうする心に胸を打たれました。同時に、つい忙しさにかまけて丁寧に生活することを忘れがちな自分を振り返り、反省させられました。

投稿: はつき | 2010年4月 5日 (月) 10時21分

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