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2010年4月21日 (水)

長襦袢のおはなし

今年は天候不順であり、4月でありながら雪が降ったり異常なまでの低温だと思いきや夏日のように暑い日もあったりと体を気温に合わせていくのが非常に難しい。この気温差によって体調を崩した方も多いのではないかと思う、

日本には四季があり、その季節によって色とりどりの豊かな自然の表情を見せてくれる。それを日本人は春色、夏色、秋色、冬色と季節のイメージカラーを独自の文化で築いてきた。たとえば春を連想させる色は桜色であったり、ヒワ色であったり、夏は藍色であったり、秋は茶色、冬においては白色やにび色であったりと巧みに表現している。

現在のきものの色柄表現は盛夏のものを除いて出来るだけ季節感を感じさせないような表現をしたものが多い。一番多い吉祥紋様や御所解などはその代表例であり、そのほか草花、幾何学などもできるだけ季節感を避けている。これに関しては頻繁に着ることが少なくなった現代で、出来るだけ袷の時期全般で着れるように配慮してのことである。昔であれば逆に季節を意識した色柄のきものを着ていたのだから、いまの常識で考えると非常に贅沢である。

もうひとつ色を意識したものがある。それが長襦袢だ。

日本の美しい比喩表現に「こぼれ色」という言葉がある。小さな隙間から色がかすかに垣間見える様を例えた言葉だが、これは長襦袢が振りから見え隠れする様を例えたことが由来といわれている。

私も長いこと長襦袢の担当バイヤーもしていたので、商品企画の為に様々な研究をした。長襦袢は1582年(桃山時代)キリシタン大名の名を受けた4人の少年使節団がローマ派遣の帰路の際、インドに立ち寄り持ち帰った袖無しの肌着である「ジバオ(Giba~o)」が名前の由来と言われている。

それが江戸時代に入り、江戸中期に奢侈禁止令によって表立ったおしゃれが出来なくなったことで見えにくい重ねに凝ったことが現在の長襦袢に発展となったと言われている。

長襦袢の素材の多くは紋綸子が多く肌触りの良い地風のものが一般的だが、友禅や型染めといった凝った染めを施す場合は地紋のない精華ちりめんの軽めを試用したりもする。そのほか、軽めの三越ちりめんなどもごく稀にある。

目方は軽めの方が着易いのだが、あまり軽すぎると生地の耐久性が悪くなり、俗にいう「スリップ」という専門用語で引けという現象が起きる。これは縫い目が引っ張られることにより生地が裂けてしまうのである。逆に重めのものだと着難くなるので考えものだ。ちょうど良い目方は140匁〜150匁(約520g〜560g)とも言われている。

隠れたおしゃれの長襦袢は明治後期から昭和初期頃まで様々なおしゃれな柄が誕生した。「早慶戦」「キューピー」「ピエロ」「クラシックカー」「水玉」などのモダンな柄から「浮世絵」「鯉」「軍鶏」「四十八手」などの古典でありながらパンチの利いた派手なものなど、今見てもかなりのインパクトがありそして自由だ。

池田重子氏の「日本のおしゃれ展」でもわかる通り、昔の着物は非常に大胆で、フォーマルであろうがカジュアルであろうがかなりのおしゃれをした。そして見えないところのおしゃれを粋としたため、羽裏、長襦袢、胴裏や裾回しにまで気を遣ったのだ。それがまた最高の贅沢であり通のおしゃれの仕方でもあった。

だから、現代においてはどんなに思い切った着方をしても、殆どが表立った部分が強調されているため、実は昔に比べたら全然大人しいのかもしれない。もっともっと表以上に目立たない所まで拘っても楽しいし、そうそうは奇抜にはならないと感じる。だからこそもっと見えない所のおしゃれも注目して欲しいところである。

それにも増して近年は長襦袢自体を省略して着る状況になってきた。袖だけ柄のある通称「ウソツキ」と呼ばれる二部式のものや、美容衿なる半襟だけのものが出てきて、本来の長襦袢自体を着ない場合も増えてきた。これは特に普段着の場合が多いようだ。

普段着こそ、大胆な長襦袢でおしゃれをして欲しいところだが、煩わしさや動き易さもあるので無理にはいえないのが辛いところである。

しかし、是非こういった一面があることを思い出して欲しい。
きものを着付けするときに、和装下着を抜かし一番最初に着るものが長襦袢である。長襦袢を袖に通したときに、これから起こることへのワクワク感や今日一日どんな自分でありたいかなどの想いを巡らせるかもしれない。

長襦袢はそのほとんどが見えないにも関わらず、様々な色や柄がある。それはただ単に着物に合わせる為ではなく、女性の内に秘めた想いを表すメッセージでもあると少なくともそう私は思う。

振りから見えるこぼれ色。今日のその人はどんな気持ちでその色を選んだのだろうか?

もちろん男性としても気になるところである。

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