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2010年5月 4日 (火)

夏きものの真意

今日、染織家の西川晴恵氏より今月21日(金)〜23日(日)まで横浜の三渓園にて行われる「日本の夏じたく」のご案内を頂いた。もちろん西川さんの作品も出品されるが、その他多くの織物、陶、書、ガラス工芸、扇など日本の夏を彩る数々の美しい作品を目の当たりに出来る。非常に楽しみである。

今日のツイッターのタイムライン上でも夏物の話題が数多く出ていた。確かに呉服店の多くは4月から夏物を店に出し、特に誂えに関しては来る盛夏に間に合わすべく品揃えや受注をする。盛夏といえば7、8月ではあるものの、今は着物で言う「盛夏物」に関しては6月末から着ている場合が多い。

一般的に言われているのは6月からが単衣に袷帯、7、8月は盛夏物に夏帯、9月前半単衣に夏帯、後半は単衣に袷帯という流れのようだ。それに加え、6月後半と9月前半のほんの少ししか着る時期のない「紗合わせ」という贅沢だが非常に美しいものもある。最近はほとんど生産がされなくなったので、なかなかお目にかかる機会が減っているが。

以前は夏着物は非常に高価で、なかなか手を出し難いものであり、どちらかというと習い事(茶道や華道など)を本格的にしている人やいわゆる富裕層といわれる人達が圧倒的に多かった。だから私が呉服販売をしていた時代は、着物好きな人に夏物をお勧めしても「まだ夏物はいいわ」「夏は着ないからねぇ」言われることの方が多かった。

ところが、夏の浴衣の着用が一般化し、手軽な夏ポリエステル着物、リサイクル夏着物などが同じように注目され、夏着物自体の認知度が高まった他、夏物独特の美しさなどが見直されたこともあり、近年では夏着物を着ている姿を多く目にするようになった。もう一部の特別な人達の装いではなくなったということである。着物を着る人が少なくなったと言われるご時世で、逆に夏着物を着ている人を前より見かけるようになったというのは、もちろん日本各地という訳ではないものの、不思議な感覚でもあり、これから着物というものに期待を持てる1つの例としても考えられる。ただ、まだまだそれを大多数の人が実感出来るほどの数でもないが。


夏生地の種類に関しては「紗」(二重紗、縫取紗、翠紗などがある)、「絽」(三本絽、五本絽、七本絽、綿絽、麻絽)、「縮」(絹ちぢみ、綿ちぢみ、麻ちぢみ)などがあり、また麻織物である上布(近江上布、越後上布、宮古上布などが有名)や八重山上布に代表される「太麻上布」などが挙げられる。もちろんその他にも多数の夏生地が存在するが、世界に目を向けると無数といっていいほどの夏生地、または夏物組織が存在するのは言うまでもない。

それらの夏生地は古来からその風土、あるいは他国からの伝来などによって、その土地々で深化してきた。ただし夏物自体が庶民に広く伝わり一般的になったのは江戸中期のことであり、いまの夏着物の多くは身分が上位の人たちの間で進化を遂げてきた物である。それまでの一般庶民は、暑ければ出来る限り薄着をするといった簡素な着方であった。

現代多くの人が、夏着物はいいけれども薄物とはいえ、着ると暑いという意見が圧倒的に多い。考えてみれば確かにその通りだ。生地自体は透け感があったり、薄かったり、素材も夏に適していると言われているものではあるものの、着方自体は合わせと何ら変わりはない。肌襦袢、裾よけ、長襦袢、着物、帯、各小物と多くの布を重ね着していることには変わりないからである。真夏に着る半袖の洋服とは体感温度は比較すれば違うことは明白である。

では夏着物とはなんなのか?
先ほども言ったように、今の夏着物の流れは昔の上位階級の間で着られてきた文化による影響が最も大きい。そして日本人の美意識の1つに「周りに対してどう思われるか?」がある。現代のように自分が着てどうか?自分が着て暑いのか否かという意識ではない。ここが根本的に違うのだ。

自分自身が夏着物を着て涼しくいられることに越したことは無いが、それよりももっと大切なことは、夏着物をきている自分の姿を周りが見た時に、その人が自分の着姿を見て、涼しく感じてくれるか?夏らしさを感じてくれているか?こういった自分の着姿によって涼感をイメージしてもらうという文化であり、自分が涼しいかどうかは実は二の次なのである。


四季がはっきりしている日本では、季節毎に衣食住を工夫し、その季節に調和するという独特の美意識を誰もが兼ね備えているのである。食であればその季節の旬の物を、住であれば様々な季節に合わせたインテリア装飾、そして衣であれば、夏着物。といった具合にだ。だからこそ、自分よりもまず相手にどう感じてもらうかという、機能性よりも美を意識したものなのである。

これから夏に向けて夏着物を着る方たちには、やはり楽しく、気持ちよく着て頂きたい。その一方で周りに美しい清涼感を与えて欲しいと思っている。

三渓園でおこなわれる日本の夏じたく展は、その構成そのものが日本の夏の美しさをと日本人の季節に対する感受性の豊かさを再認識出来る場でもあると思う。そして各作家たちが夏の「楽しみ方」、「過ごし方」、「感じ方」を改めて提案しようとしているに違いない。是非とも夏とは何か?をそこで感じ取ってもらえたらと心から思う次第であり、私も楽しみしている。


夏きものの真意とは「季節のおすそ分け」なのである。


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