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2010年5月11日 (火)

きものメンテナンスビジネスの重要性

5月に入りやっと気温も上がってきた。
4月の天候不順でシーズン物の出鼻をくじかれ、アパレルも着物も夏物販売が出遅れたが、ここへ来て持ち直しているとのことだ。とはいえ、売上の良いところと悪いところがはっきりしており、当然悪いところが多い分、4月の衣料全体の売上は厳しいとの情報が入っている。


しかしながら5月に入りGWは晴天が続き、気温も上がったことから行楽地は大賑わい。観光地の収入も一時的に回復しているとのことであり、衣料自体もこのまま「鰻上り」とは言わないまでも、なんとか回復して欲しいものである。


そして梅雨に入れば高温多湿の日本の気候がきものに様々な形で襲いかかる。
昔の家屋は通気性もよく、日本の気候の特徴に合わせて作られていた。しかし、現在は戸建てにせよ、マンションなどの集合住宅にせよ「密閉型家屋」である。そうなると湿気の逃げ場がなく、今では虫喰い以上に「カビ」「黄変」などで着物を傷める可能性が高い。

また汗をかく時期は汗シミも頻繁に起きる。特に背中や帯び回りなどは沢山の汗を吸っている。一見乾いているよう見えても実は多くの汗を吸っている場合がほとんどで、放っておくとあとからカビや変色という形で着物が蝕まれていくのだ。


だからできれば、着物のメンテナンスは多少の出費とはいえども、後で大変な出費にならないよう、ケアに出しておくとよい。特に着物は畳んで仕舞うものだから尚更なのである。


実はこういう着物メンテナンス関連の要望が前にも増して、消費者からの要望が強くなっている。その理由はいくつかある。まずは絶対的にメンテナンスをしてくれる呉服店自体が少なくなっていること。ご時世ではあるが、非常に辛いことだ。特に地方の「街の呉服店」が大幅に減少傾向に有り、消費者が自分の着物をどこにメンテナンスに出したら良いかがわからない状態だ。


次に、リサイクル着物ブームで母親や祖母から譲り受けた着物を自分の寸法に仕立て直したり、長年しまっていた影響で汚れや湿気によるカビや黄変、裏地の取替などが近年非常に増えているという。


第三には着物ネットショップの普及により、メンテナンスは実店舗に依頼するケースが非常に増え、特にクリーニング店の着物受注が少しずつ増えているようである。最近はネットでも着物メンテナンスを扱うところは増えては来ているが、顔が見えない分、そのトラブル自体も非常に多いと聞く。特にネットの場合はカードの先払いによる決済であり、消費者はどんな汚れでも落ちると思い込んでいる場合が多く、やむを得ず落ちなかった場合に「約定違反」という認識を持ってしまうからだそうだ。そういう意味ではネット上の着物メンテナンスは非常にリスクを伴うため、まだまだ少数派だ。


とはいえ、呉服店にとって着物メンテナンスビジネスは、消費者視点から考えても非常に重要なメニューだと思う。また店頭営業や新規顧客の創造においても大きな有効手段であるため、私としても小売店コンサルティングをするときには必ず、どのくらいそれに取り組んでいるかを、商品をチェックする以上に着物メンテナンスメニューをチェックする。


着物メンテナンスのメニューは出来るだけあった方が良い。例えば、仕立てに関する「縫製メニュー」。あまり布を草履、バッグに有効利用する「残布加工メニュー」、京洗いやガード加工などの「洗いメニュー」、染み抜き、黄変落とし、汚れ除去、色ヤケ直しなどの「染色補正メニュー」、着物自体を他のインテリアなどにする「着物リフォームメニュー」、その他カケハギや柄足しなどの「修正メニュー」など着物には様々なメンテナンスメニューが存在する。


ところが現在ほとんどの呉服店が行っているのは「洗い」「ガード加工」「染み抜き」「仕立て直し」などでまとめてしまっている。もちろんお客様からの預かりものの管理はリスクを伴うし、それぞれの加工先も減ってきているため、メニューを増やしづらいというのも現状だ。また、収益率の問題も有り、それなら単価のとれる着物を苦労してでも1枚売った方が効率的だという考え方もある。それも一理ある。

ただ、ここで考えて欲しいのは、呉服の中で恐らく小物と同じくらいに顧客ニーズが高いのが着物メンテナンスである。また、直しに出すお客様は小物客以上に着物を着ているお客様だ。着物を仕舞うためにメンテナンスするという動機よりその着物を再び着るためにメンテナンスに出すお客様が圧倒的に多い訳で、着物に対してHotなお客様なのである。

特に地方の地域密着型営業になると、一番苦しむのが集客である。お得意様ならまだしも新しいお客様を増やすのは本当に容易ではない。だからこそ着物メンテナンスの充実は新しいお客様がその呉服店を利用するキッカケ作りとしての大きな武器になるのだ。また、それらを受けることによってお客様の相談に乗ったり、じっくりと話すことでコミュニケーションが生まれ、しっかり対応すれば信頼関係も生まれる。そうすれば、新商品が入った時やその店の一番の自慢の商品などを提案する機会も出来るだろう。


また呉服店側の視点で言えば、常に新鮮な品揃えをするにはコストが掛かる。また在庫リスクも生まれる。しかし着物メンテナンスはお客様の大切な着物をお預かりするという大きな責任はあるが、仕入れコストはほとんど掛からない。また在庫リスクもない。店頭商品としては非常に安全で有ると同時に、お客様から喜ばれるというサービス的店頭商品企画なのである。


着物メンテナンスメニューの構築は、新規顧客の創造、集客、お客様満足度の向上、客数増、売上増などに大いに役立つことがわかって頂けたかと思う。確かにそれを作り上げるためには加工先などの取引先を新たに開拓する必要が有るため、最初は非常に労力がいるが、今後とくに小規模小売店に関しては今以上に注力することで、必ずプラスに働いてくると確信している。


お客様とのWin-Winの関係を作れる着物メンテナンスビジネスへの取り組みは、集客や売上に苦しむ呉服店こそ真剣に取り組むべきと思う。

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コメント

>顔が見えない分、そのトラブル自体も非常に多いと聞く。

相手の顔が見えなくても、こちらの顔を十分に見せられると、のちのちの説明を受け入れてもらいやすくなるものですかね?

注文する側からすると、十分な信頼感を発注するタイミングで持っていると、苦情が言いにくいというか「落ちないものは落ちない」と言われたときに受け入れやすいというか。。

投稿: 西川伸一 | 2010年5月11日 (火) 09時14分

to西川様
コメントありがとうございます。
確かにデメリット表示は必要ですね。さらに通常の商品と違いweb上での判りやすい説明も必要です。
実際、シミ抜きなどの場合はそのものを見てからの判断が必要で、実店舗では決済前にどのくらい落ちるかなどをお客様に理解をしてもらった上で受注することが一般的なのです。
その問題をどうクリアするかもこれからの課題です。

いま一つの方法としては、Ustreamなどをうまく使えないかを模索しています。そういう意味でのお客様との見える関係をwebで構築することは着物メンテナンスビジネスの未来に大きな可能性を秘めているのではないかと思っています。

今後ともご指導宜しくお願いします。

投稿: 石崎 | 2010年5月11日 (火) 09時55分

コメントに対しての感想ですが、私はネットだと事前に見積もりがしてもらえて、実店舗はしてもらえない。と思います。
実際、何も言わずに持って言ったときに見積無しでシミ抜きされたことがあります(その後、要見積と言うと見積してくれるようになりました)
別のところでは、やってみないといくらかわからないと言われたこともあります。
ネットショップでは、いちいち「見積してください」といわなくても見積して、完全に落ちそうかどうかも教えてくれるし、高額の場合は遠慮なく処置を断わることができるので楽だと思います。

投稿: しょう | 2010年5月28日 (金) 16時37分

最近、趣味で着物を着始めたももんがと申します。
着物業界について、どうしてこんなに洋服と違うんだろう、もっとこうすればよいのに…と思うことが多くなってきた矢先にこのブログを見つけました。
非常に興味深く読ませていただいています。

さて、メンテナンスについては、ぜひやってほしいです。
骨董市などで安く手に入れた反物の仕立てや、洗い張りなどがしたいのですが、近所のファッションビルに入っているチェーン系呉服屋さんに問い合わせたところ、「やってない、むしろ古着なんて買うもんじゃない」ということを言われてしまいました。
そうは言っても新品は遊び着としては非常に高くなるし、自分の好みもはっきりしないので、失敗を考えるとそうそう手がだせないので困っています。
仕立を含むメンテナンスさえクリアできれば、もっと普段から着られるのになぁと思っています。
私としては、気軽に入れる(→ここが重要!)チェーン店にこそ、そういったサービスの窓口となってほしいです。

長くなってしまいましたが、これからのきもの(メンテナンス)ビジネスに期待しています。

投稿: ももんが | 2010年6月30日 (水) 12時56分

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