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2010年8月11日 (水)

世代交代という風

私が尊敬する大手呉服小売チェーンの社長が退任なされた。もちろん会長職へ就任なされたが、革新的でなおかつコンプライアンスを遵守し、なにより呉服販売における店頭の重要性を早くから提唱なされた。もちろん良い意味で呉服業界に多大な影響を及ぼした最大の功労者であると個人的には思っている。

浴衣が今日のような広がりを見せたのも、長羽織というリバイバルアイテムを広めたのも、呉服にVMDを初めて導入したのも、きもの産地の若手の活性化に尽力したのもすべて同社長であり、常に先を見据えた呉服小売のあり方を業界に提唱してきた。

かつて私がその会社の社員であった頃は、その凄さや誠実さは認識していたものの、やはり本質的にそれを捉えきれなかった。しかしながら独立し、今の自分が少なからずとも呉服業界で仕事が出来ているのも同社長の考え方がしっかりと根付いているからである。

新社長に就任なされた方ももちろん私が在職中にお世話になった方であり、よく存じ上げているが、今まで同様、またはそれ以上に間違いなくこれからの呉服小売のモデルとなる道を切り開き、改めて新創業という形で良い方向に向かうと心から信じている。また川中、川上の位置にいる業界の方々も改めて期待なされていいと思うし、少なくとも私はそう信じている。


世代交代といえば、専門店の経営者や卸、メーカー、産地においても徐々に若い世代に変わりつつあることはなんとなくお気づきであろう。私も仕事柄、数多くの業界の経営者と仕事をさせて頂いているが、間違いなく若返っている。これは素晴らしいことだと思う。

なぜなら、ここまで縮小した呉服業界にあえて経営を受け継ぎチャレンジするという決断は並大抵の覚悟ではない。下手をすれば、そこそこの安定した企業で会社員として働いている方が、精神的にも経済的にも楽であり、安定した生活が出来るかもしれないからだ。しかしそれをあえて引き受けるのだから正直凄いことである。


そしてその若き経営者達に共通することは皆高い志を持っている。自分の会社を、店を「こうしたい」という強い意志を持っている。皆今の状況を脱却したい、新たな道を模索していきたいという志と意欲に満ちあふれている。そしてそのために「どうする」を常に考え、飢えている。これは恐らく呉服業界にとって今後絶対にプラスになると確信する。またそうした方々に、これからの小売、卸業の考え方や具体的方法を一緒になってお手伝いさせて頂いていることが私にとってもなによりの幸せである。

また世代交代していくうえで欠かせないのは人材の育成である。

私は呉服業界を再度活性化していく上で必要なのは、まず小売店の売上活性化であると考える。正しく販売して、しかも消費者から支持される呉服店の再構築が「モノ」「コト」の流れを生み出す。それによって正しい「カネ」の流れをつくり出せ、結果的に上流をダムのように塞き止めなくて済む。

そしてその全ての流れをつくるのは「ヒト」である。

なぜならこれから世代交代していくのはなにも経営者だけではない。そこで働く社員やスタッフ、技術者も世代交代していくからだ。このブログの読者の方はご存知の通り、私はきもの関連の教育機関での講師もしている。その生徒達は将来物づくりをしたい人、メーカーなどで商品企画をしたい人、和裁という分野で活躍したい人、小売や卸業などで営業に携わりたい人など様々である。

私はこれからの業界で活躍するためには他の業種以上に総合力が必要なってくると授業で話している。先日の繊維業界向けセミナーで日本テキスタイルデザイン協会の副理事長である坂口昌章氏が「日本の流通システムは色々と問題視されるが、逆にその多段階流通こそが日本の物づくりのレベルを高めていることも確かである」と述べていた。確かに日本の流通は複雑で取引条件や物の流れなど様々な問題点は存在するが、1つのプロダクトに対して様々な企業が多段階流通の中で関わるからこそ、世界有数の製織技術や染色技術の進化が図れたのだともいえる。

であるからこそ、どの業態に進むにしろこれからの人材に欠かせなくなってくるのは「総合力」なのだ。そういう意味でも、この世代交代の波は我々呉服業界にとってどの段階においても活性化への大きなチャンスになると信じて疑わない。

もう一方でこれから意識して取り組んでいこうとしているのは、産地ブランディングだ。これも世代交代が着実に進みつつある産地をどう活性化していくかである。これについては、すでに持論があり、これから各方面へ働きかけをしていき、行政やさらには異業種などありとあらゆる知恵を注ぎ込んで取り組んでいきたいと思っている。

もちろんまだ発想の段階であるから多くを語れないが、産地の活性化はもっと別視点から取り組むべきであり、それは内需的視点だけに捕われず、かといって安易な世界発信でもない。日本の伝統産業の認知度と独自の技術力を内外に高め、地域経済連動型の発展方法を構築していくことでブランディングしていくという巻き込み型の考え方だ。

こういったことも世代交代によって生まれる考え方の柔軟性や個の力だけに固執しない経営や運営が新たな道を切り開く大きな可能性を持っているということを是非ともここでアピールしたいと思う。

いずれにせよ世代交代は苦難がつきまとう茨の道であるのも事実であるが、それを高い志と実行力で新たな力や文化を生み出す希望の道であることも間違いない。呉服業界の未来のためになるなら喜んでその「茨の道」に私も是非ともお付き合いしたいと思う。

各業界の偉大な功労者が勇退したとき、必ずと言っていいいほど世代交代の風が吹く。
それを好機としてポジティブに捉えるか、どうせ何も変わらないとネガティブに捉えるかで業界の未来が決まってしまう。


今回勇退なされた私の尊敬する社長の就任から一貫してきた取り組み姿勢が何故か私を今でも動かしている。心から敬意と感謝の意を表しそれを今日のブログの締めの言葉にしたい。

「 WILL CAN DO 」


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コメント

ツイッターからこちら拝見させていただきました。

ニット、カットソー婦人服アパレルメーカーの企画をしています。今の現状では服の企画をする以前に、ニットに関して言えば、生地となる編地を編む国内工場が、廃業して行く流れです。編む技術を持つ方はご高齢であり、仕事が少ないので本業の他に、パートにでている話も聞きます。私個人がデザイナー職を辞めてものづくりの現場に入る事も考えますが、最終的に残るのは、日本でしか出来ない日本固有の素材づくり、ものづくりだと思います。デザイナーとして出来る事を考えるならば日本固有の素材を使って、服をつくる。浴衣を日本固有の柄から外れたものでつくる。でも作ったとして、売り先は国内だけでは無く海外も。良いものの価値を認めてくれる消費者に向けて作る。一個人が出来ることでその為にまず何をしたら良いのか模索中です。
いつか、是非直接お話伺いたいです。

投稿: ワタナベ | 2010年8月11日 (水) 10時41分

toワタナベさま
コメントありがとうございます。
お返事が遅くなって済みません。
アパレルにせよ呉服にせよ、日本でしか出来ないものづくりという考え方では同感です。ただし、呉服の場合意匠を変えてそのまま海外に発信するのは非常に難しいと思います。
私が考えているのは戦略的互恵という考え方です。
この場でなかなかうまく表現できませんが、機会があればお話し出来れば良いですね。
中途半端なお返事で申し訳ございません。

投稿: from 石崎 | 2010年8月18日 (水) 01時43分

 渡辺先生、貴重な情報ありがとうございます。大原和服専門学園の生徒でございます。

 少し長文になりますが失礼いたします。只今最終学年で、進路を決めかねているのですか、ずっと織りを続けられるところ、つまり、手ばたで商品、作品、を作っていきたいという思いがあります。そうなると、織りもとさんになると思いますが、織り子を志す物をほしいと思うところはあるんでしょうか?

  この世界に就職活動という言葉はなさそうなので、こうしてひとづてで探している次第です。

 産地は厳しいですが、少数派ですが、ものづくりをやろうという人はいます。

 この時代できものを生かし続けるのは大変です。でも、それを模索するのも楽しいです。

投稿: みちえ | 2010年8月25日 (水) 00時57分

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