« 破壊と創造 | トップページ | コンサルティング手法の変換「コンテンツからプロセスへ」 »

2011年3月24日 (木)

担う人

昨日のブログは沢山の業界の方に読んでいただいたようで、「元気が出た」「下を向いている場合ではない」などなど多くの言葉を頂き、あんな乱文でも少しは業界のためになったかもしれないと思うと非常に嬉しい。

今日は静岡県の沼津市を代表する大きな呉服店へ昨日のブログ内容のごとく、短期計画の立て直しと営業対策等を一日かけてやってきた。
沼津は東京電力圏内であり何度か計画停電を実施されている地域である。漁港が近く海の幸が豊富で港の近くは風光明媚な素晴らしい地域である一方で、機械工業の会社なども多く、港町ながら産業も盛んな活気のある町である。

しかしながら今回の震災において津波の恐怖を報道で目の当たりにし、最近ではお隣の富士宮市を震源とする震度6弱の地震があったり、最近の計画停電においてすっかりと活気と消費が冷え込んでいる状況であるという。

また、卒業式、卒園式などが相次いで中止となる他、式は開催するけれども着物は着ないで欲しいという残念なお達しが出て、袴レンタルやお母さん方の訪問着などの着付けなどの大量のキャンセルが出て意気消沈していた。余談ではあるが着物着用自粛の理由を聞いて驚いたというか飽きれたというか、半分笑えてしまった。

「着物を着ていると万が一地震があったら逃げ遅れる」

こんな馬鹿げた屁理屈のような理由があるだろうか?こんなことを言ってはいけないが、学業の中で当然のことながら日本の文化や歴史を教育する機関が、こんな馬鹿げた理由を掲げて着物着用を自粛させるなど教育者としてあっていいのかと悲しくなる。
その呉服店の社長といざという時は裾をまくって草履を脱ぎ捨てれば洋服なんかよりもよほど早く逃げられると笑い話をして怒りを抑えたくらいだ。

それよりも可哀想なのは晴れの日に袴やいっしょに着物を着て思い出に残すことを楽しみにしていた方達だ。キャンセルに来たときのお嬢さんの悲しそうな顔と楽しみにしていたお母様の表情はかける言葉もないほどだと社長が仰っていた。こんなことまで考えて学校側は今回のことを決めたのだろうか?
被災地で物理的に無理ならばそれは逆に気の毒であるし、仕方が無い。しかしながら普通に式が出来る状況で、しかも日本が大変な中でもこの一日だけは笑顔で晴れの日を迎えさせてあげて最高の思い出にしてあげることを教育者として優先させてあげられなかったのかと疑問に思う。これは過剰な自粛としか言いようが無いように思えるのは私だけだろうか?

今日その店で卒業式の写真の出来上がりを取りにこられたお嬢様が来店された。そのお嬢様はあの死亡者を出した卒業式での天井落下事故の前日にその式場で卒業を迎えられた方だそうだ。「亡くなられた方には申し訳ないけど前日で良かったですね?」とお声をかけたら、笑顔で「本当にそうですね。幸運だと思ってこれから頑張ります」と仰られた。運命とはいえ何とも美しい言葉だろうと関心してしまった。

そういった意味でも何かを修業するということは本当に素晴らしいことである。
私も着物専門学校で非常勤講師としてきものビジネスや商品企画などを指導しており、その学校からも数名の卒業生が呉服業界に旅立っていく。

私の考え方として、着物を学ぶ上で和裁や染色、織といった技能を学ぶことは大変良いことであるが、呉服業界に進む上で「商いの基礎」というものも学ぶ必要が絶対にあると考えている。
多くの着物専門学校の生徒は心の底から着物が好きな人である。好きだからこそ専門的な知識と技能を学ぶのだが、その多くが呉服業界の独特の空気やその商売の流れについていけず悩み苦しむ。

専門知識は知っていても業界独特の慣習や異国語のような専門用語は理解出来ず、着物が好きで夢を持って業界に飛び込んだにもかかわらず途中で挫折してしまうことが非常に多いことも事実である。そういった部分を少しでも学んでもらい次世代の業界を担う人になってもらえたらと着物業界の人材育成事業にも注力しているのである。

「仕事は難しい。でも難しいことは少しでも分かると楽しくなる。そして次の難しいことを分かろうとする。これがモチベーションだ」

これが私の持論である。だからこそ様々な自分の経験をもとに教鞭をとっている。

今日のブログの最後に、今年卒業する学生の方々が私の授業に対してのレポートを書いてくださり、その内容に感激し、喜びの涙をこぼしてしまった
自己満足ではあるが、恥ずかしながら紹介させて頂きたい。

〜学生Aさんのレポートより〜

マーケティングの講義では、着物の流通について過去から現在までの経緯や業界の仕組みなどを始めに教えていただきました。
大原学園に入学する以前から知りたいと思っていた内容で、でも自分の力で調べる突破口も見つけられずにいたので、マーケティングの講義が始まった時はとても嬉しかったです。

着物が売れなくなっている理由や、業界が抱える課題の答えがまさに「マーケティング」なのだとわかりました。生産から小売りに至るまで「いかに顧客の心を満たせるか、喜ばせるか」を貫く姿勢が大切だと思いました。

石崎先生がプレゼンのお話の時におっしゃっていた
「恋人へのプレゼントを渡す演出をするつもりで」という事も、とても納得出来ました。好きな人を喜ばせたいという気持ちと同じくらい熱意を持って相手の立場や気持ちを考えて、様々な作戦や仕掛けを行う企画や商品としてユーザーに届ける。一歩につながっていくのだと思いました。

ただ、実際に少し商品企画をやってみて難しいと感じた点もたくさんありました。しっかりとターゲットを絞り、そのターゲットが欲しくなるような商品を考えるその段階でつまずきがありました。

ターゲットは自分近い20代〜30代前半と決めました。しかし、情報収集が足りず、作る商品がどうしても「自分が欲しいと思うもの」に傾いてきてしまいました。

自分本位や独りよがりでは商品企画にはなりません。多くの人の心をつかむ商品が売れる商品となり、企業の利益につながる。そして企業はまた魅力的な商品を世に送り出す。

以前は、利益を求める事と顧客を優先に考えることは反対のことのように思っていました。まさにかつての着物業界のようにです。
でもマーケティングを受講してそうではないと分かりました。

企業にとっても、顧客にとっても利益がある関係が理想だと今では思っています。
まだまだ勉強不足な点がたくさんありますが、マーケティングで習った事を思い出しながら社会で更に学び、経験を積みたいと思います。
                        〜以上〜


学生は学んだ事が「知識」となり、社会人は経験した事だけが「智慧」となります。

明日の呉服業界はこのような若い力が失敗を恐れず、チャレンジしていく事で確実に新たな道を進んでいける事と信じています。

ご卒業おめでとうございます!
そしてこれから同じ呉服業界の同志としてよろしくお願い致します!

|

« 破壊と創造 | トップページ | コンサルティング手法の変換「コンテンツからプロセスへ」 »

ファッション・アクセサリ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1284655/39354373

この記事へのトラックバック一覧です: 担う人:

« 破壊と創造 | トップページ | コンサルティング手法の変換「コンテンツからプロセスへ」 »