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2011年3月24日 (木)

破壊と創造

まずはこの度の東北太平洋沖大震災の被害に遭われた方々へのお見舞いと残念ながら尊い命を奪われた方々へのご冥福を心からお祈り申し上げます。

今月のブログを書く上で避けることの出来ない大きな出来事が起きたのが3月11日の14時46分。
その時私は愛知県の碧南市のある呉服店で社員研修会をしていた。地震大国日本に住んでいる以上は生まれてから数えきれないほどの地震を経験してきているが、初めてといってもいいくらい長く嫌な揺れであった。そして直感的にどこかで大きな地震が起きているのではないかと感の悪い私でも感じた次第だ。
しかしその悪い予感が遥かに予想を超える自体になろうとは思いもしなかった。

基本的に人間は自然の猛威には無力であるが、その高い知能と技術によって被害を最小限に止める能力と経験を兼ね備えている。しかしながらそれを無惨にも粉々にする考えられない力が押し寄せてきたことは、不運以外の何ものでもない。たとえば釜石のスーパー堤防は6m。いままでの災害経験と今ある技術と頭脳を結集して設置した日本最大の防護壁であり、多くの科学者でさえ大津波が来てもあの堤防を超えることは無いと思っていた。
それがいとも簡単に・・・・。

日本人はこれまで幾多の天災から見事に復活してきた

地震でいえば古くは関東大震災、新潟地震、阪神淡路大震災。大津波よる悲しい過去もある。奥尻の津波被害。火山噴火でいえば有珠山の大噴火、雲仙普賢岳の噴火による土石流被害、三宅島の三原山噴火被害。つい最近の新燃岳の噴火。台風では伊勢湾台風、最近では奄美の洪水及び土砂災害。例を挙げればキリがないほどの天災を見事克服してきた。

そして第二次世界大戦という戦争という名の憎むべき人災。

その都度多くの尊い人命が失われ、堪え難い被害を被り、深く刻み込まれた心の傷など生きとし生けるもの全てに何らかの影響を与えてきた災害の繰り返しの歴史であったが、誇るべき日本人はいつもそれを復興という名の下に見事克服してきた偉大なる民族であることは間違いない。

そして今新たな災害に立ち向かおうと日本が1つになりつつある。大震災と大津波というとてつもない天災とそれが引き金となった福島原発事故という災害がまとめてやってきた。
しかしそれでも誇り高き日本人は必ず克服することは明白であるし、信じて疑わない。

呉服業界も同じく幾多の試練の連続を乗り越えてきた生命力の強い産業である。奈良時代に「店(たな)」という文化が入ってきて以来、今と形は異なるとはいえ「作る」と「売る」を商売として発展させ、それを連動するための仕組みを作りながら独自の「流通」というビジネスモデルを構築してきた。

その間には戦乱の世もあれば、泰平の世もあり、江戸時代中期の奢侈禁止令による政治的弾圧にもオイルショックやバブル崩壊、その後押し寄せる平成大不況、リーマンショックにみるような経済の混乱にまで規模は縮小しながらも耐えてきた。だから今回の震災においても負けないという期待と決意に近い自信をもっている。

ただ不安がないわけではない。

こういう状況の場合、被害の形は2通りある。
直接的被害」と「間接的被害」だ。

直接的被害とは今回の震災で言えば地震や津波といった天災によって店舗を破壊されたり、商品がダメになったりという営業自体が全く不可能といった状態である。
北関東から東北は呉服小売店は業界にとって大きな市場であり、その売上シェアは非常に高い。よって呉服業界にとっての売上損失は非常に大きいのである。
実際の被害では、建物自体は大丈夫でもスプリンクラーの作動によって商品がすべて水浸しとなってダメになってしまったという所も数多く存在する。また、当然の如く建物の倒壊や津波による被害は大きい。

これから復興するにあたっての資金は非常に厳しい。ダメになってしまった商品は地震保険や火災保険に加入していればある程度の保険金はおりる手はずになっているが、その他の建物自体の建て直し、改装などの費用、従業員などへの給与、営業開始に当たっての広告宣伝費、商品調達などなど営業再開させるためには膨大な費用が発生する。

もちろん災害における中小企業助成金制度は存在し、今回の甚大な被害にあった被災地に対しては消防署の罹災証明があれば、比較的に低い金利にて借り入れ出来る。ただ借入金の上限はあるためにすべて足りる訳ではない。これからの売上予測などを考えるとこれを機にやむなく廃業を考える店も当然あり得るだろう。
もちろん小売だけではない。地方問屋もその直接的被害は尋常ではない。地方問屋とは京都などの集散地における大手問屋だけでは距離的にタイムリーな商品調達が出来難いために大手問屋からその地域への流通を請け負う問屋であり、小売店にとっては非常に重宝する存在だ。ここも同じように被害を受けている。

またきもの産地として東北は比較的日本海側に集まっているが、それでも岩手の南部古代染め、南部菱刺、宮城の仙台平、藍染め、最近復興した福島県昭和村のからむし織などがある。少なからずとも影響は受けている。
それ以上に素材関連がかなり影響をうけている。特に福島は養蚕が盛んであったが、とくに撚糸(撚りをかけた糸。様々な撚り方で豊富な素材を作ることが出来る)は非常に精密な機械であるが今回の震災によってかなりの狂いが生じて操業出来ないようだ。

もう一方で私がもっとも恐れていること。それは間接的被害だ

まずは多くの犠牲や避難状態にある人々や原発事故の緊張感や放射能物質による汚染などの多くの被害の報道が連日流されることで、被災地以外の人々に「自粛」や何をやるにも不謹慎に感じる」などから起こる消費抑制だ。

特に生活必需品においても消費が抑制されていたり、関東では停電によってショッピングセンターやその他店舗が昼間でも暗く、ガソリンなども被災地が不足しているために使用を制限する。そういう状況の中で、嗜好品である呉服はいうまでもなく消費すること自体が不謹慎だと思われてしまう。この全国民に流れる自粛被害ともいえる消費抑制は経済に大きなブレーキをかける。

現に4月の被災地以外の呉服店の殆どが催事や売り出しなどを中止しており、小売店、問屋、メーカー、そして産地が過去に無いダメージを受けることになる。

そして私が最も恐れているのが資金ショートである。
通常商品仕入れの取引は売掛取引(現金)と手形取引が使用されるが、呉服のような原価の一品単価が高く商品回転率の低い商材は手形取引が慣習となっている。もちろん資金力のあるところは、より取引上の好条件を考えて売掛取引を多用する場合が多いが、殆どの場合手形取引である。

しかしながら呉服業界は現在も手形サイト(支払期日)が長いことで知られている。90日手形であれば短い方だが、多いのは120日〜180日であり、中ではそれ以上の長さを設定している所も珍しくない。

仮に120日とすれば手形を振り出してから4ヶ月後であるから、4月末が支払期日の手形とすれば12月の売上分が支払われることになる。12月はどの呉服店も歳末売り出しの催事や振袖セール、宝飾品の売り出しなどを多くやっており、売上額も大きい。売上額も大きければ仕入れ先への支払金額も比例して大きくなる。通常であればこの4月に割れる手形の決済分は3月から4月初旬における営業で賄う場合が多いが、それがこの状況である。

ブログ読者の方々はご存知かと思うが、手形支払期日までに振り込むことが出来なければ「不渡り事故」となる。これを2回してしまうと銀行取引停止となるため事実上の倒産となる。資金的にある程度の余裕のあるところならば数ヶ月は耐えられるとは思うが、そうでないところは大きな問題である。

また、その受取手形をもっている川中、川上の業者も同様である。

私は経営のお手伝いをしている小売店に対しては営業できるならば止まってはいけないと3月も4月も積極的営業をするように呼びかけている。もちろんお客様の気持ちを逆なでするような手法はしない。しかしながら、被災地ならともかく、それ以外の場所で通常通り営業出来る立地であるならば「攻め」は必要である。

これからの3ヶ月の短期計画を再度練り直し、いかに売上確保と顧客創造を行っていくかを指導している。もちろんそのためのやり方も対策もある。ようは状況をキチンと把握し、出来ることを模索しながら営業戦略を立てていくことは絶対的に必要だ。

もしブログ読者の方々で呉服関連企業の経営をなさっている方がいるならばあえてこうエールを送りたい。

「大変な状況を大変だと傷の舐め合いをして傷口を更に拡げるよりも、大変な状況だからこそ小さな創造を積み上げていきましょう。」

「小さな創造」とは出来る範囲でのアイディアと戦術で営業をしていく。もし結果が出なくてもそれを続けていく。振り返ると大変だと騒いでいるだけよりも意外に売上額という積み木は積み上がっているはずである。ということだ。

そして被災地外の着物ファンの方々。是非とも今まで通りの消費をして頂きたい。確かに被災地の方々は大変だし気の毒な状況だ。しかしその方々が復興する時に経済自体が崩壊してしまっていたら、復興することも出来なくなる。

被災地の呉服関連業者に夢を持たせて下さい!まだまだ呉服もやれるんだと思えるようにしてください!それが最大の励みなります!

そして今回の悲しく無情な破壊は必ず新しい創造へと繋がると信じている。

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コメント

その通りです。言いたい事をいってくれて気持ち良かったです!
今月末で退職し、京都に帰ります。お忙しそうですがお時間あれば食事でもしましょう。

投稿: 宇佐美 | 2011年3月27日 (日) 18時40分

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