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2011年6月

2011年6月25日 (土)

コンサルティング手法の変換「コンテンツからプロセスへ」

最近読む本の量が増えてきている。
なにも速読が出来る訳でもないが、1日に2冊も読んでしまうことがある。もちろんじっくり腰を据えて読む時間がある訳ではない。もっぱら移動中、特に空港や飛行機や新幹線が私の図書室となっている。

最近読んだ本は宮城谷昌光の「香乱記」だ。全4巻で秦〜漢の時代、始皇帝死後、劉邦と項羽が天下を争う中、真の王者といわれる斉の国の田横というヒーローを描いた古代中国の歴史小説である。

日本の戦国時代、とりわけ織田信長、豊臣秀吉、徳川家康などの活躍を描いたものも大好きではあるもののやはり、古代中国の兵法や政治などはとりわけ興味深いものがある。日本の歴史偉人たちも古代中国から学んだ点は多々あるが、その古代中国の偉人達は経験則もあるがほとんどが無から作り上げた政治観であるから凄いことである。

読んでいると不思議な共通点があるのが「人」をどう大切にしていくかということである。当時は今と違い、封建的であり、階級で人を分けていたり、大殺戮なども当たり前のように繰り返され、人を大切にしていたとは思えないことも多々あるのだが、それでも偉人といわれる皇帝や将軍は兵やその国の民を大切にしていたように思われる。

私はご存知の通りきものビジネスコンサルタントとして小売店をはじめとする多くの呉服関連企業のコンサルティングをしているが、今では営業戦略だけではなく、経営はもちろんのこと、労務管理、人材教育、経理、財務管理などバックヤード的なものも守備範囲に入ってきており、かなり深くその企業に入り込んだ形へと変化してきている。これは非常に責任が重いが全てが連動し関連している以上は営業だけ、商品だけなどの断片的なコンサルティングは反って難しいことなのであるから、外部の人間である私を信用してそこまで深く仕事を依頼してくれることは非常に有り難いことである。


そうなってくると、自然にコンサルティングとしての考え方も変化してくる。呉服業界にありがちなコンサルタントの手法は、「問題点の抽出」「打開策の立案」「営業手法の提案」といった順序で進めていく形が多く、最も多いパターンは「このやり方をやって下さい」という成功事例集を片手に「こうすれば売れる」的なコンテンツコンサルティングである。

確かにこれは経営者にとっては楽だ。どこかで成功したやり方をその店に合うようにアレンジして、組み立てて、あとは成功するはずだからやって下さいと言えばいい。コンサルタントも楽である。プラモデルで言えば、既に部品は揃っていて、その人好みの色に塗り直して、「あとは組み立てて下さい」と言えばいいだけの作業である。
これだけのことで月に何十万も報酬をもらうのだから羨ましいとしか言いようがない。

ただこれには弱点がある。
経営者もそこで働く社員も「自ら考える」ということをしなくなっていくからだ。
言われた通りにやっていれば、とりあえずは大丈夫だろうなどという方向に行ってしまう危険性をはらんでいる。
「自ら考える」という力は小売業には絶対必要なスキルである。何度も私はブログに記しているが、「どこ」「なぜ」「どう」を常に考え、修正、改善、発展していくことが、会社を強くしていく。それは経営者はもちろんのこと、社員にも必要なスキルである。だから「自ら考える」ことのできる店や企業はやはり強い。

しかしながら、いまだ成功例の寄せ集めをアレンジするだけのコンサルタントが多く、うまくいかないとその企業の体質や能力のせいにする輩が多いのも現実である。
このブログを読まれている小売店のオーナーや呉服関連企業の経営者の方々は「V字回復」「劇的業績改善」などと叫んでいるコンサルタントには慎重に接した方がいいとご忠告申し上げる。私の知る限りそれを実行した多くのお店の結末がほぼ例外なく同じであるからだ。V字回復や劇的回復は短期間であり、麻薬効果でしかないのである。


これからのコンサルティングは「プロセス」を重視することが重要であると私個人は考えている。その店や企業の問題に対してどうすれば改善の方向へいくのかを経営者をはじめ、そこで働く全ての人達が自ら考え、仮説を導き出すようにしていくことがコンサルタントとして重要であると思う。そのためには、その店や企業のヒト、モノ、カネ、そしてそこから生まれるコトまでも、ありとあらゆる方向から見て考えられるように導いていくようにすべきだと考える。
しかしながらこれは尋常ではない。それにはパターンや成功事例を当てはめることは出来ないからだ。それぞれが全くといっていいほど環境も状況も経緯も異なるからである。

とはいえ、それを考え続けるのがコンサルタントであり、それで初めてその報酬に見合った、またはそれ以上の仕事ができるのである。

私はいま、経営者や社員の方々に念仏のように繰り返し言っていることがある。
それは
「小売仕事とは何か?小売の仕事とはお客様に喜んで頂くことである」

お店の接客、店の陳列、商品構成及び管理、社員の身だしなみ、経理、労務管理、財務管理、人事、資金調達、管理まですべてお客様に喜んでもらうためにあると話している。であるならば、1つ1つを担当する社員や全てを網羅する経営者はどうすべきか?を常に考えることが必要であると言っている。

そしてもうひとつがその発想を基本とした「ミッションとポジション」である。

お店や企業のミッションとはなにか?をそこに関わる全ての人が共通認識を持っていなければいけない。
それからその店のお客様から見たポジションとはどこにあるのか?
価格の安さなのか?どこにも負けないサービスなのか?、品質の良さなのか?それとも最高のホスピタリティとセンスなのか?etc…
お客様からどのポジションで見られているのかが明確であればあるほど、一定以上の評価は得られる。ポジションの不明確な店や企業にはお客様はつかない。

しかしながらこれらも経営者や社員が自ら考えるというスキルが絶対条件だ。どこかの成功事例の踏襲の繰り返しでは、ミッションやポジションは生まれない。
だが、呉服業界はまだまだ成功事例踏襲型経営が多すぎる。こっちの水は甘いぞなどと言ってばかりいるから、業績が上がらない理由を外にもっていく。

少なくとも私がお手伝いをしている企業にはこのプロセスコンサルティングを徹底して実行しているつもりだ。確かに時間が掛かるし、即効性はない。だが、決して悪い方向には向かない。段差の低い階段を上るがごとくの経営をしていくことが、その企業の安定と永続に繋がると確信している。

そしてそれをやる上でやはり大切にしなければいけないのが「人」だ。

お客様という「人」。社員という「人」。経営者という「人」だ。この「人」たちを大切にし、自ら考える力を向上させ、自分のしている仕事は楽しいと思ってもらうことが、小売の使命であるお客様に喜んでもらうことに繋がり、その対価として売上という評価を頂く。

こうなっていくためのコンサルティングという仕事を私はしていきたい。

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