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2012年3月 2日 (金)

室町きものテーマパーク構想への想い

先の2月14日に行われた第2回呉服業界若手経営者の会は主催者の私が驚く程の内容の濃いものになった。Ust中継をご覧になった方々は非公開部分が多くあるため、もしかしたら「あれで?」という思いを持たれるかもしれないが、流通の壁を越えたディスカッションや業界への提案などは様々な意見もあるだろうが、その意見を声として出しあえたことが大きい。

さてその若手経営者の会の中で特別講演なさったきくちいまさんは開口一番業界人がきものを着ていなくてどうする!という言葉を投げかけたことはかなりのインパクトになったことは言うまでもないし、ぐうの音も出ない。
これの考え方に対して外からは色々な反応や批判があるのも認識している。
「幼稚な考え方」とも批判されている。
しかしながら私はこの時代だからこそあえて非常に大切なことだと思っている。

それは何故か?をここで話したい。

今日までの呉服ビジネスの変遷は3つある。
1つは戦前から戦後、しかも昭和の30年代までの時期。

洋装主流になっていたとは言え「きもの」というものがまだ生活の中に多少なりともあった時代だ。
しかしながら、戦争というものと高度成長期の入口の時代は呉服産業の復興期にあたる。
もちろん普段のきものも当たり前のように存在していた。絹はもちろんのこと、太物と呼ばれた綿物も麻もウールもあった。ただ戦争を境にそれまであった日本の経済システムが崩壊し、呉服産業としても戦争によって大打撃を受け、一時的にきもの自体を作る、売るが出来なくなっていた。
それから高度成長期を迎え、急激な近代化の流れの中で呉服産業が時代に合わせて成長するための大きな方向性を作った。それが「フォーマルきものビジネス」の確立である。

高度成長における近代化はある意味、衣食住文化の欧米化であったため、生活スタイルが変化していった時代でもある。創刊間もない「美しいきもの」を見るとコート1つとっても洋装コートのデザインが多く取り入られているものが非常に多い。
その中でその時代でまだ根付いていたのが「冠婚葬祭」というセレモニーだ。成人式の振袖着用文化はまだその時代にはなかったが、祝儀、不祝儀などは家ごとにまだまだきちんとやっていた。
だからこそ私達の大先輩は呉服産業の復興のために「フォーマル中心のビジネスモデル」を根付かせた。それによって呉服産業は活性化したことは事実であり、今日までの礎を作ったこと間違いない。私はその世代を第一次変革世代と勝手に名付けている。

2つめはそのその後の世代。私達からすると1つ前の世代は40年代から平成のつい再最近まで活躍した世代である。もちろんまだ現役で頑張っている方々も多くいらっしゃる世代だ。この方達はもっともいい時代を過ごした。私も駆け出しの頃にはその恩恵に預かった経験がある。
先人達が作り上げたビジネスモデルを維持しながら伸ばしてきた。80年代前半には1兆8000億円までの市場に押し上げた。
ところが売れている時はどうしても新しいことがし難いというか受け入れ難い。実は好調時は不調への入口であるのだが、殆どがそれに気づかない。だから「新しい売り方」という断片的なものは生まれるが、次世代に受け継ぐ為の思い切った改革が出来ないという弱点もある。
ただし、売れることによって要求が強まり、もの作りの方は新しいものが生まれたり、一般的に「いいもの」や「本物」が消費された面もあるので悪いことばかりではない。ただその反面コスト削減とそれに量が動いた時代だけに高効率大量生産の為の仕組みが伝統技術の妨げになった面もあることは周知の通りだ。

ただ売れることによって様々な潤いが業界に生まれたことは間違いないし、まだ業界として機能出来るだけの状況を努力して作った世代である。ただ残念ながら明確な次の一手を創りだすことが出来なかった時代である。
その世代を私は大変失礼だが「売上至上主義世代」と言っている。もちろん私見だ。

そして3つめである次の世代を含む私達の世代がどうしていくべきなのか?
このままでは何も出来ず「業界崩壊世代」」と呼ばれかねない。

「情報化社会」という言葉が死語になるほど恐ろしいスピードで時間が流れている。そして冠婚葬祭はより簡素化しフォーマル着物はレンタル市場へと移行し始めている。
小売店の展示会でも始めに訪問着ありきの売り方が崩壊し始め、振袖自体もレンタル比率が過半数を超えている。そのうち振袖は呉服店ではなくフォトスタジオやブライダルの分野の商材となりかねないいう実感を現場にいると感じる。

これからのきものビジネスは「間口を広げて着る人をいかに増やすか?」という部分が重視されると考える。そのためには「着物の楽しさ」や「着物を持つ豊かさ」から提案していかねば未来は開けないとさえ考える。
であるならば、私達業界に携わる人間が着物の楽しさや着物を持つ豊かさを本当に語れるのだろうかという疑問を持たずにはいられない。

おそらく着物を着るという部分1つにしても業界従事者よりも着物消費者の方が意識レベルは遥か彼方にいるとしか思えない。非常に残念であるが現実だ。
ならば、これからのきものビジネスの肝がそこにあるならば、少なくとも業界人が着物を楽しむ意識を持ってもらうしか無いというのが私の考えであるし、幼稚と言われようと業界人に「着物を着よう」と投げ掛けることから始めねば何もコトが起こらないのだ。

私達がもし第2次変革世代ならばまずは自分の足元から革めていかねば、消費者からの信頼や支持どころか、着物ファンの間口はどんどん狭まっていくしかない。

この考え方に対して批判されようが何を言われようが構わない。
ただ、確実に「そこそこ世代」といわれる次世代顧客層が中心となる時代がやってくる。バブル経済崩壊後に生まれた世代はそこそこの暮らしが出来れば背伸びはしないという超堅実世代だ。
世界のトヨタが何億もかけて「免許を取ろう」というCMを流さないと車にでさえ関心を示さないような時代に呉服業界がどんなに素晴らしい過去の成功例を羅列しても通用しない時代がやってくるのだ。いやすでにもうやってきたのだ。

だからこそ私達はまず幼稚な発想と言われようが何だろうが私達からまず着物を着る、着物を楽しむ、着物を学ぶ、から始めねばという意識を業界従事者にもってもらうことが重要だと思っている。

そしてそのためにどうするか?に向けて動いている。
それが室町きものテーマパーク構想だ。
5/29を語呂よく呉服の日と呼びかけ、まずは室町界隈の呉服関連企業に着物着用を呼びかける。もちろん、関連組合団体、マスコミ、行政にも呼びかける。
理想は室町界隈の通りが「きもの通り」と言われるような着物にあふれた地区にしていきたいとも考えている。願わくば公共交通機関も区間限定で着物着用者はその日は無料などとかになれば、もっと盛り上がるかもしれない。

それから想像してみて欲しい。皆さんが5月29日に京都駅の新幹線ホームからエスカレーターを下がって構内にでると、沢山の着物が展示してあって着物都市京都を演出していたら、一気にムードは高まるだろう。そんなことも考えてみたりする。
とにかく業界人だけでなく観光客も着物を着て雰囲気を楽しめる通りでもあって欲しい。だからこそ業界従事者の着物姿でその空気を作ることが絶対的に必要なのだ。

私は毎日小売の現場にいて「店のスタッフが着物を着ている店は客数が増える」という現実を目の当たりにしている。これを大きく捉えれば、室町界隈に着物姿が溢れることで、少なくとも活気が出ることは間違いない。

こんな夢のようなことを描き、実際にどこまで出来るのかわからないが動いている。もしかしたらただの夢物語で終わるかもしれない。でも私は評論家ではないので、やらずにあきらめるよりやって失敗する方がまだマシだ。

色々と並びたてたが、ともかくまずは私達がすべきことは次世代の着物ファン作りである。そこから始めなければ何も始まらない。
そしてまずやってみる。結果的にどうであれそこから何かが導きだされる。
少なくとも私はそう信じて動いている。

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コメント

テーマパーク大賛成!

着物が日常の世界を楽しめるって素敵です!

コスプレみたいw

テーマパークというフォーマットに当てはめていれば様式美を守りつつ新しいスタイルを取り込んで次の着物文化へ発展しちゃうかも

投稿: m | 2012年3月 4日 (日) 09時43分

次世代のきものファン作りって本当に大事だと日々感じます。「室町きものテーマパーク」構想。本来のきもの文化を守りつつ堅い事言わないでファッショントレンドを取り入れたきもの。室町きもの通りにはそんな雰囲気とお店の中には一杯詰め込まれた楽しい商品。こだわりのショップSPAが集まれる敷居の低さも有ればより集まりやすいですよね!

投稿: 廣田真知子 | 2012年3月 5日 (月) 14時50分

きものを着ていると無料だけでなく和装でないと立入り禁止区域とか通りそのものとかね。絶対いきたい蕎屋があるのに半天でも羽織らないと行けないとか笑。和で溢れる通りができそ

投稿: 山本きもの | 2012年3月12日 (月) 10時23分

着物が好きな会社員です。仕事では着物を着られないので、もっぱら週末に楽しんでいます。
そんな私も着物屋(リサイクル含む)に行っていやだなぁと思うことがあります。それは、押し売り。「このぐらい、買ってくださいよ」という態度が透けて見える接客がほとんどです。確かに安いですが、(着物にしては安い時も、本当に安い時も)ほしいかほしくないか、必要かそうでないかは、買い手である消費者が決めるべきところを、店側が握ろうとする。おそらくそのような商売態度が、若い人だけでなく世間一般の着物離れを相当に誘発していることとお見受けします。
もう一つは、晴れ着の着物が跋扈するようになった結果、着物は手間がかかりお金がかかり、何をするのもものすごく大変というイメージが定着してしまったことによる着物離れです。儲けは少ないでしょうが、木綿やウールなどの通常のクリーニングや家での洗濯が可能であるものや、よくできたポリエステルの着物でしゃれたものをどんどん出せば、嫌でも着物は売れるだろうに、と思います。

投稿: | 2012年3月15日 (木) 12時57分

20代女、着物が好きです。廣田さまの「堅い事言わないでファッショントレンドを取り入れたきもの」に100票です(笑)

着物の普及に尽力している方々でさえ、「流行りのレースや変わった着物はいただけない」という発言をしているのを拝見し、あーあ、これは着物の再興はないね、と思ったことがあります。若者が着たいと思うものを否定して何をつくるのでしょうか、今後も引き続きお年を召された方がターゲットですか?こだわりを捨てないと革新もありませんよね。

若者の感性を受け入れない業界に若者は見向きもしません。
それに古来の美しさを見る目、まだ日本の若者の体や心の中に残っていると思います。

年配者や知識者ではなく若者がファッションリーダーなのが本来健康な市場のはずです。
若者に着物を教えるのではありません。普通の業界は若者に「次に売れるもの」を教えてもらうのに懸命です。

かなり厳しいことは承知ですが、一般の感覚で
「一式一万円・洗濯機OK(アイロンなし)・つけ帯普及・柄もいい」これが実現すれば町に着物姿があふれるかと。

投稿: あや子 | 2012年3月16日 (金) 21時28分

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