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2013年3月 3日 (日)

「振袖」を通した第62回京都染色美術展への期待

2月が終わり、小売店の振袖の状況を見ると1月は例年並み、2月は大きく伸びたというお店が私のクライアント先も含め多かった。

残念ながら振袖はレンタル比率が高まり、ご購入のお客様が激減しているのも現実である。特徴的なのはお母様のお振袖をお嬢様に着せたいという方が年々増えてきていること。これは純粋にお母様の思い出の着物を娘に着せたいという理由と、お母様も成人式後ほとんど袖を通していないからもったいないという理由があり、後者の理由が大きい。

 

今の営業方法が続けば、「購入の割合は3割以下になる」と約3年ほど前に言ったがその通りどころか3割を割り込むばかりの勢いである。これは今までの商いがあまりにも成人式の制服的発想と成約特典競争のような振袖ビジネスが招いた当然の結果ではないかと感じている。

 

再来年の平成27年度の女性の成人人口は全国で57.7万人。そのうちの70%がいずれかの形で振袖を着用し、更にそのうちの30%が振袖を購入するとして考え、矢野経済の調査上の振袖購入平均単価40万で考えると振袖購入市場は約480億円という試算になる。正直この額のマーケットは現時点での流通在庫で十分まかなえてしまい、振袖の産地である京都や十日町の振袖のモノ作りにおいてはかなり深刻な状況であると考えざるを得ない。

 

もちろんレンタルを全否定することは出来ない。様々な理由から振袖は購入することは出来ないがレンタルなら着せてあげることが出来るということもあるだろう。写真だけでも残してあげたいという方々もいらっしゃる。そういう方にとってはレンタルという手段は十分に思い出作りの役に立つ。

ただ振袖というものへの思いが提供する側があまりにも安易に考えすぎる気がしてならない。そして振袖自体の生産減の大要因でもある。
また振袖価格は全盛期の半分以下になったが、今叫ばれつつある価格と購買率の因果関係さえも成立していない状況である。

 

振袖の歴史をくどくどと述べるつもりはないが、振袖はもともと女性だけでなく男性も着ていた。といっても子供の正装という言い方が正しいが、15世紀(室町時代)の身分の高い家の子供は男女とも正装は振袖であり、江戸に入ってからも中期くらいまでは男子は18歳くらいまで、女子は20歳くらいまで正装に振袖を着用していたという記録もある。1700年代初頭に書かれた近松門左衛門の「日本振袖始」などにもそれが垣間見える。

いまの振袖に近い形になったのは明治になってからだが、どちらにしても振袖には親が子を思う気持ちが詰まっているし、日本独特の「家」という文化もこの振袖には詰まっており、その家々によって意味のある色柄を誂えたりもしていたことから、振袖における着物としての服飾文化の意味合いは非常に大きい。

そして更に振袖を成人式に着る習慣は戦後の話であるから「振袖=成人式」ではないということも改めて知って頂けると幸いである。

もちろんきものビジネスの観点からいくと「振袖レンタル」は残念ながら切り離して考えることは小売店として既に出来なくなっている。
しかしながら、それでも購入のお客様を増やすという可能性は大いにある。

それは小売店自体の「振袖を新調して頂きたい」という意志と提案だ。

クライアント先で振袖が落ち込む中、ある試みをした。それは一切レンタルをPRしない。レンタルが無いのではなくレンタルを宣伝しないということである。
また割引や特典競争を意識せず、最低限のお手伝いが出来れば良いというものである。勇気のいる試みであったが、その結果全体の成約数は大きく減ったがご購入率は60%以上となり、売上金額としては前年を大きく上回った。簡単に言えば客数減の売上増、及び過剰なサービスを控えた経費減による営業利益増である。

誤解しないで頂きたいのはレンタルやお母様の振袖を着るというお客様を排除した訳ではなく、レンタルのPRをしなかったということである。

小売店の振袖を「お嬢様の振袖をご購入頂きたい」という意志はたとえお客様の数自体が減ったとしても、人生の中での短い期間の一生の思い出を振袖という形で残すことが出来るご提案ができることで、結果的に売上金額自体をカバーできるということを思いとしても商売としても確認できた。

 

そして今年、京都の若手で維持継続された、素晴らしい作り手たちの歴史ある京都染色美術協会が年1回京都市美術館で開く染色美術の祭典「第62回京都染色美術展」が3月20日、21日にいよいよ開催される。

しかも今回の総合テーマは何を隠そう「振袖」である。


振袖という染めのキャンバスは構図の表現力、地色や挿し色と柄の配色バランス、それを細部まで支える技術力など一切ごまかしが利かない非常に難しい題材であることは、それを観るものにとっては最高の機会であると言っていい。

だからこそ今一度「振袖の素晴らしさ」「振袖の意味」そして「着物にとっての振袖の大切さ」を皆さんに知ってほしいし、この京都染色美術展を通してそれを感じて頂きたいと心から思う。

 

そして来年も含め、これから成人式を迎える方たちには是非とも振袖の素晴らしさを今回の京都染色美術展で知って頂きたいと思う。

 

 

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