« 2013年5月 | トップページ | 2014年3月 »

2013年10月

2013年10月10日 (木)

きもの小売店のこれからの形とは?

久しぶりのブログ更新となる。

 

最近はフェイスブックでの投稿が主で、ブログはすっかりサボってしまっている形であったが、先日某小売店組合の講演で参加していた小売店の若い跡継ぎの方から「前からファンで特にブログは凄く勉強になっています。最近更新がないのでどうしたのかなと思っていました」と言われ言い訳をしている自分が恥ずかしかった。

今回は久々の更新であるのに長編である。ご興味がある方は最後まで読み進んで頂ければ幸いである。

 

予想通り消費税増税も決まり、市場は来春4月からの動向に戦々恐々としている。

 

大手流通業は利益の確保と売上向上のためにとる対策は、PBの再強化を掲げている。あるシンクタンクのアンケート調査でも消費税増税後の消費動向として、まずは価格の高い安いよりも「品質に見合った価格のものを吟味する」という傾向が強くなると言っている。また、収入の変化がなければ、「外食を控える」「衣服や趣味への支出を減らさざるを得ない」という意見が男女とも上位を占めているとのことだ。

アベノミクス効果は現在為替差益による日本の輸出産業の一時的な営業利益向上やそれに伴う関係企業の株価の上昇により、一部のステークホルダーに恩恵をもたらしていることは確かである。また東京オリンピックの開催決定による、オリンピック株と言われる関連企業への効果もこれまた空気としての景況感をもたらし、いかにも経済の動きが活性化しているかのような実感のない景気指数となってきている。

百貨店に関しても8月は全体で前年比104.3%と伸び、2013年に入ってからは特に美術・時計・宝飾部門などの高級品は18月前年比較で115%と大きく伸びている。額にすれば300億円弱伸びている。

ただし、伸びているのは高級商材であり、食品は18月比較で99.5%、衣料品においては99.9%とほぼ横ばいと見るかあるいは微減とも見られるが、いずれにしても伸びていない。高級商材の15%増が全体を押し上げるといういびつな数字となっていることは事実である。これに関しても、一部の富裕層が増税前に購入していると言ってしまえばそれまでだが、売り場自体の努力もしていることは確かであると感じる。

消費税増税によって私達呉服業界もかなりのダメージを受けるのではないかという声が多く聞かれるが、当然のことながら今のままでは苦戦必至であると言わざるを得ない。しかしながらこの言葉はたとえ消費税増税がされてなくとも起こりうることだということを付け加えたいところだ。

これは今の呉服店自体の営業のあり方が本当に着物ファン層の拡大に繋がっているかどうかを考える方がもっとも適切な考え方と思われるからだ。

私達呉服業界は戦後まだ着物が意識的に身近だったころに、様々なチャレンジをしている。素材、デザイン、着方などあらゆる面でファッションとしての着物として進もうとしていた。これは創刊間もない当時の「美しいキモノ」をみるとそれが非常によく感じられる。

ところが、本格的に高度成長期に差し掛かった頃からライフスタイルが恐ろしいスピードで変化してきた。「文化住宅」といわれる住スタイルの変化、パン食の増加や欧米メニューの多様化による食スタイルの変化、そして洋ファッションの進化スピードの加速による、衣スタイルの変化がだんだんに着物との距離を遠くさせていった。

 

しかしながらかろうじて冠婚葬祭などのセレモニーに関しては着物という選択肢がまだあり、呉服業界は「フォーマル」への道をより強化させていった。訪問着、振袖、留袖、黒紋付(喪服)、色無地、袋帯などの提案販売が呉服店のスタイルとなった。
そして「着る機会」という言葉がTPOという概念で表現され、「着物を着ることは何かがある時」という風潮になっていった。もちろん当時を時流を考えればこの流れの選択は間違いではなかった。ある意味産地から小売までは仕事を維持することが出来、潤うことも出来た。

 

しかしながらそのまま現在を迎えてしまった形となった。元来着るものであった着物は「売り物」としてしか捉えられなくなり、「買い方、売り方」中心の販売は、着物が持つ本来素晴らしさや楽しさを現場は伝えられなくなってしまったのである。
今でも、問屋やメーカーで小売店が「今何が売れているか?」といった質問をしていたり、商品にはあまり手を触れず、値段ばかりを気にする光景を目にする。まさに「売り物」としてしか見えていない残念な光景でもある。

 

ただし、暗いことばかりではない。

 

着物を楽しみたいという人達が老若男女を問わず絶対数がここ数年でまた増えてきた。着物ファンのカリスマで私の友人でもある「きくちいま」さんが着物の楽しさを実体験からの執筆やイラスト、またリアルな活動により広めたり、森田空美さんがシンプルモダンというスタイルを確立したりと着物ファンに多大な影響を与えるカリスマがよりその着物への入口を広げ、多様化させていることも確かである。着物関連の書物も書店でコーナー取りするほど増えてきた。

 

また呉服業界も産地、メーカーなどの若手が積極的なチャレンジをし、流通を見る目からユーザーを見る目に変化してきている。

小売店も若手経営者が着物ファン創造のための取り組みを様々な形で活発に行っている。またナショナルチェーンの大型小売店も新たな商品の取り組みや情報発信、イベントなどを積極的に取り入れどんどん進化してきていることが伺える。

またそれらの前向きな従事者たちが志を同じくし、着物ファン創造のために「着物カーニバル」や「きものサローネ」、あるいは着物ファンたちが着物を通して交流を楽しむ「キモノでジャック」「キモノ日和」「キダオレ」「黒留ナイト」など数多くのイベントがここ数年で発生してきたことは何とも心強いことである。

 

しかしながら、まだまだ多くのきもの小売店や流通が根本的に変われていない。もちろん商売である以上呉服業界の全ては売上なくしては成り立たない。ただでも厳しい現実である以上は目の前の実質的な売上や利益を追い求めることが第一優先になることは全くもって否定できない。

 

だが、私達呉服業界は伝統産業でもあり、ファッション産業でもある。私が今でも尊敬する株式会社やまとの矢嶋孝敏会長には「私達呉服の商売は文化性と経済性の両立なくして維持は出来ない。経済性が主になっても文化性が主になってもダメだ」と以前よく教えられていた。今は特にそれを痛感している。

ではこれからのきもの小売店の形とはどういう方向性が必要なのか?を私なりに考えてみた。

 

例えるには私事過ぎて大変恐縮ではあるが、今私は趣味と仕事へ活かすためにカメラにかなりハマっている。しかも一眼レフといわれる非常に奥深い世界。しかもカメラ本体以上にレンズや周辺機器などお金も着物と同じくらいかかる。レンズだけで10万円、20万円はざらで、なかには50万、100万といったものも普通に存在する。もちろんそうそうは気軽に買えるものではない。ところが、人間の欲求とは恐ろしいもので、一度ハマると買ったばかりでも次は何が欲しいかを考え、夢を膨らませる。また各メーカーは撮影講座やワークショップ、イベントなどを積極的に開催する。

たとえば、風景の写真を教えてくれる講座に参加するとプロのしかも有名な写真家に直接レクチャーしてもらえる。自分が持っているカメラとレンズでプロから教えられた通りにするのだが、どうもプロと同じように撮れない。設定も構図も教えられた通りにしているのに何か違う。

そして気づくのである。「レンズが違うのだと」

 

それでまたそのように撮れるレンズが欲しくなる。これは悩むことでもありそれがまた楽しいことでもあり、結局大枚をはたいて購入への道に進んでいくのである。まさに楽しさや学びの提案と欲求の更なる創出である。

 

これはもしかすると着物が好きな人と何ら変わらない感情なのではないか?

ところが、そんな感情をしらけさすような販売や提案が多いのが、残念ながら大多数で、挙げ句の果てに「着物屋は怖い、入りにくい、買わされる」という敬遠されることになるのだ。

消費者の消費価値観や欲求の創出の形は様々であり、それを売る側がコントロールすることは非常に困難である。ただし、その方向へ向いてもらえるキッカケ作りや環境づくりは可能なのではないかと考える。
冒頭に述べた消費税増税で変わるかもしれない消費動向の変化はまさに「価値創造」は個人のライフスタイルによっても大きく変わってくる。そのライフスタイルの中に「着物」という選択肢に気づいてもらえるような努力がより必要になってくる。

 

おそらく私がきもの小売店のこれからの形として未来現実のキーワードとして「集う」「交わる」「憩う」「学ぶ」「楽しむ」という5つの言葉は非常に必要になってくる。現在の店売上の絶対的なキーワードは「集客」であるが、これとは少々異なる。いかに店に足を運んでもらえるか?と同時にいかに店そのものを楽しんでもらえるか?である。それが発見となり、欲求に変わり、購入という満足に変わる。その繰り返しである。

 

お店自体にお客様が集い、お客様同志や店員が交わり、店にいることで憩うことができ、着物を通して学びがありそこから発見があり、そして楽しみが生まれる。そしてそこには間違いなく「売上」というお客様の評価が生まれてくる。

 

いうなれば、小売店のサロン化である。

 

「そんなの理想論だ」と思われる方も多いだろう。「そんな悠長なことを言ってられない」という方も沢山いるだろう。

ただ、いつの時代でもそういう理想を掲げる人がいる中で、逆にそういうことを言って変化をせずに来た結末が10年間で更に市場を半分にさせたのだとは思えないだろうか?

 

そして今、もしかするとモノ作り的にも、消費者へのきもの提案という意味でも最後のチャンスが訪れていると思われる。そこでどう自店が変化への対応をするかという覚悟が試されているのかもしれない。

 

ではこの小売店のサロン化はどうすればいいのか?

色々なことが考えられるし、色々なことが既に実施されている。これがまた非常に興味深いし、しかも本当にお店のファンを増やしている。しかもどんな店でもどんな環境でも出来ることが多いのだ。

ここだと更に文章が長くなるので来年2月2日に開催する第6回呉服業界若手経営者の会で様々な実例や最新の取り組みや考え方を様々な角度で紹介と情報交換をしていきたい(笑)

 

まずは久々のブログ更新は今回はここまでとしたい。



| | コメント (0)

« 2013年5月 | トップページ | 2014年3月 »