妻の質問に考えさせられたこと
先ほど妻から鋭い意見を聞かれました。
「着物が世界無形文化遺産になったとしたら、どんな意味があるのか?」
私は即答しました。
「なんの意味もない」
着物文化という意味ですでに本場結城紬や小千谷縮、越後上布がすでに登録されています。もちろんそれぞれに日本の宝である織物文化であり失くしてはいけない技術であり表現であると思います。
ですが世界無形文化遺産になって何が変わったのでしょうか?
一部の業者が世界無形文化遺産という言葉を傘に法外な値をつけたり、売るための方法として使われれたりと本来の世界無形文化遺産の定義とはかけ離れた結果になっているのが現状です。これは文化庁指定の重要無形文化財指定においての捉え方も同様です。
未だに「無形文化」の意味自体を理解していない人が大多数でもあり、それが現実です。
もし仮に着物が世界無形文化遺産に認定されるとしたら、全てのものが分け隔てなく判断されるのでしょうか?
たとえその意味が「着物」という着装文化を指すものであっても、「無形文化」を意味を捉えられない状況ではすべてが一緒くたんにされることは目に見えてますし、とてもこれからの着物文化や着物自体の啓蒙につながっていくようには思えません。
同じく世界無形文化遺産に早くから認定されている文楽は国立文楽劇場まで存続が危ぶまれるような状況にあります。日本のかけがえのない文化の1つである文楽でさえその状況です。
そんな世界無形文化遺産になんの意味があるのかを私は若輩者で知恵も経験も浅い人間であるがゆえかもしれませんが全く理解できません。
だから現実の中でその状況を考えた場合に、売るためセールストークになることしか想像できません。
なので前述した妻への答えとして「なんの意味もない」にもう1つ付け加えました。
「世界無形文化遺産認定を仕掛けた人たちの自己満足や箔をつけることになるだろうけど・・・」
私はこれから着物を無くさないために尽力している若手の人たちと色々な取り組みや活動を通して、少しずつ少しずつでも針のような光を「見える光」にする道筋が見えてきている状況になってきています。
それらを通して思うことは「根本的なことを地道に積み上げる」という大切さを改めて痛感しています。
確かにものづくりの現状は厳しいものであり、継続するための方策を考えることは急務であることは間違いありません。ですが、世界無形文化遺産認定がそれらの解決の糸口になるとは少なくとも私には全く思えませんし理解できません。
私は毎日、この業界の川上から川中、そして川下の現実の中で仕事をしています。そして全くもって現状に対してネガティブではありません。いえ、バカみたいにポジティブです。
ですからその現実の中で、あくまでも私見として「着物が世界無形文化遺産認定になることの意味」が見いだせません。
だから「何も意味が無い」と答えた次第です。
そして私達が着物を本当に無くさないために、もっとしなければならないことが山ほどあると思っています。
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コメント
着物が文化遺産として「定義される」という部分がポイントではないでしょうか。ならいっそのこと新しい「定義」を現代の感覚に合わせた形で「定義し直す」ということも一つのアイデアだと思います。大正あたりの人がワイシャツに着物を着てブーツを履き、「書生さん」と呼ばれたように。基本的な組み合わせを決めておいてそれに合わせて色や柄を考えていくというアイデアです。闇雲に努力するよりも現実的だと思うのですが、いかがでしょうか。
投稿: 大和 | 2014年3月25日 (火) 09時02分
大いに同感です。
投稿: 成願義夫 | 2014年8月10日 (日) 09時09分