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2014年4月

2014年4月28日 (月)

モノづくりのモラルと法律

美術的な要素と工芸的な要素のあるものは万国共通で時の権力者や富裕層などのパトロンによって 支えられてきた部分が強い。これに関しては美術や工芸だけでなく、芸術全般で言えることだと思われる。 ダ・ヴィンチ、ラファエロ、ミケランジェロなどのルネサンス期を不動のものにした巨匠も、日本では 狩野永徳や俵屋宗達、尾形光琳などもパトロンの存在によってその才能を開花させ、支えられてきたといえる。

当時はそれぞれの一派に認められるかまたは様々な繋がりを模索し権力者に自分を買ってもらうかなどしながら 生きるための創作していたようだが、特に江戸時代中期以降「模倣」や「贋作」などの今で言うコピーが数多く世に出始めたと言われている。 芸術の世界はまず模倣から始まると言われているようだが、それらの目的は「最高」と言われる作品を自らの表現力や技術を磨き、それに 少しでも近づけるための1つの修練であった。
現代において著作権法や商標権法、意匠法、不正競争防止法など様々な方が整備されて、特に日本においては知的財産という権利意識は 当たり前のようにここに浸透している。しかしながら有名ブランドのコピーや報道などで周知のような中国などを始めとしたアジア圏に 見られるような滑稽な姿を目の当たりすると「コピー」というものが世界中で今でも平然と行われている。
とは言え、日本においても知的財産の意識は他国より強いとはいえ、やはり安易なモノマネで安易に収益を上げようとする考えは無数に存在する。 マーケティング的にもある意味「二番煎じ」的なモノづくりは存在し、上記した知的財産に関連する法律に抵触していなければ、最初に作り上げた 企業が不快感を示しても全く問題無いことになるので複雑である。
きもの業界に関しても他の業界と同様、コピー的または類似品的な商品は無数に存在する。一時期中国生産がピークを迎えていた頃は、ブローカーと共に 中国の工場の人間が来日し、展示会や小売店で写真を撮りまくり、それを元にして色柄、生地、織組織などを完全に真似て日本に出回り、 商品のみならず価格なども荒らしまくられた。当時は景品表示法の産地表示等の意識も規制もそう厳しくない頃であったからまさに無法地帯であった。 厳密言えば現在も、日本工業規格上は最終加工地を生産地として表示して良いために数はかなり減ったにせよ、本当は外国産であっても国産表示されているものは多い。 考えてみれば、「日本の絹」表示も国産糸を使用しすべて国内で製織、染色している「純国産」と書いてあるものと、原料は輸入糸でも日本で製織しかつ染色したものの 2種類存在するので、消費者はよく見ないとわかりにくい。もちろんトレサビリティを含めた日本のモラルと品質の明確化を意識しているとは思うのだが、 その現実は消費者にとって結果的に紛らわしいものになってしまっている。
 
 先日も知り合いのメーカーがコピー被害にあった。その商品はきものファンなら誰もが知っている人気メーカーであり、人気商品だ。コピーの経緯の詳細は 私はわからないが、以前にも同様のことがあった。逆に言えばそれだけ魅力的な商品であるということだが、苦心してその商品を作り上げた側からすれば 腸が煮えくり返り思いだろう。しかも今回のコピー事件は、商品そのものもさる事ながら堂々とそれをSNSに掲載して自慢気にユーザーにPRしているのだ。 こうなるとモラルや意識の欠如としか言い様がない。私自身もそれを見て呆れるしかなかった。
法律上どうにかならないかと思われるだろうが、今回コピーされた商品は意匠法上「意匠登録」は認められないものであり、意匠法が改正されて、全体の 形状が意匠登録適応外であっても部分意匠として認められうかどうかというものであるから企業間のやりとりしかない。
またこういったコピー商法は不正競争防止法の適用範囲ではあるものの、この法律は非常に荒いもので、商品という1つの物権法的概念にないものまでも 差止請求権を行使できるようなものなので、仮に提訴したとしてもその商品の知名度や集客性またはそれによってオリジナルメーカーに発生する金銭的及び 商品価値的な実質的な損害を立証するのは非常に困難であるのだ。 「それでは知的財産とはなんなのだ?」という疑問になってしまうのだが、根本的に知的財産は物権法定主義で構成されている以上、著作権、商標権、意匠権といった 中で法律上認定されない商品は残念ながら個々のモラルという非常に心情的な概念によってでしか守ることができないのが現状であるのだ。
世の中には無数の商品が存在し、明らかにコピーや模倣であっても上質なものも存在する。その一方で悪意のあるコピーや模倣がオリジナル商品の価値を陥落させ 価格価値観さえも狂わせ、名品を貶めていく。 あらゆる製品を売るものとしては、絶対的なモラルは必要であるし、仮にそれが違法行為でなくとも商道徳あるいは企業倫理の問題である。 そして何よりも消費者が良い物を選択する目もこれからは重要であると思う。
最後に、今回コピーされたメーカーの社長は強い志を持ち、財を投げ打って良い製品づくりとユーザーのきものライフに心から貢献し続けている素晴らしい方である。 こういうモノづくりをしているメーカーや企業をどうか、消費者の方々は見極めてほしいと切に願うしかない。(Hさん頑張れ!)

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