« 2014年4月 | トップページ | 2015年9月 »

2015年8月

2015年8月15日 (土)

これから起こりうる呉服業界の未来現実を考える

久しぶりのブログ更新となった。最近はもっぱらFacebookが中心となり、じっくりと自分の考えを文章にすることから離れていたような気がする。ここで再度初心の戻りブログを書く頻度を増やしていきたいと思う。毎日とはいかないまでも意識して更新していきたいと思う。

さて、ここ最近になって自分の仕事の内容が大きく変化してきている。元々は呉服業界に恩返しするという目的で独立し、どちらかというと小売店の経営支援を中心にしてきたが、呉服業界若手経営者の会の発足を機にありとあらゆる業界カテゴリの人たちと仕事をするようになり、各組合団体、メーカー、産地などとも商品企画やプロデュース、マーケティングディレクションなどを数多く手がけるようになってきた。そして経済産業省という国との仕事、そこから更に広がりきものアルチザン京都のマーケティングディレクターとして、いまではヨーロッパ、アメリカ、アジアなどなど世界との仕事をしようとしている。自分でも予想だにしなかったスピードでの展開だ。

★未来現実という観点がまだまだ持てない呉服業界

ご存知の通り私は以前より「未来現実」といういまの延長線上に何が起こるかという考え方で多くの業界の仲間たちと情報交換をしたり、講演活動などをしている。

何もこれは難しいことではない。深く考えれば誰もが当たり前のように考え付くことだ。しかしながら、呉服関連企業の経営者の多くは現在の和装の消費状況から目の前のことに忙殺されており、なかなか先のことを考える余裕も時間ないのは無理もないことである。また中にはあえて考えない、あえて目をそらす人もいる。それもまた無理のないことである。

特にこの業界は過去の成功体験が自己を支えているといった年代も多く、時代の変化と既存の概念との乖離に気づかないまたは気づいても認めないといったケースも多々見られる。その多くが一見合理的な利潤追求型の商売であるように見えるが、その実「経験型経営論」が支配していて、「結果型経営論」になっていない。もっと簡単に言えば「記録より記憶」になっており、「見えない未来への投資よりも、過去の成功例に経営資源を費やす」という体質から抜けられていないと未だに感じる。

★これから起こりうる社会的な現象と市場の状況から考えるべきこと

昨年度の呉服小売市場として矢野経済研究所は2855億円という発表をしている。これは市場調査とそこからくる統計学上の計算から割り出すものであり、多くの着物専門店が呉服売上と非呉服売上を正確に分けられていないのでなんとも言えない。もしかすると純粋な着物売上はもっと少ないかもしれない。とはいえ1つの重要な数的指標になることは間違いない。

私がいま最も着目しているのは日本の人口だ。現在の日本の人口は1億2700万人で世界第10位、国土面積は世界第61位で人口密度は世界第21位、国内総生産である名目上のGDPは世界第3位という経済と人口の面から見れば世界有数の大国である。

ところが出生率は世界第173位でありながら平均寿命は世界第2位という状況であり、人口減にして高齢化の国にすごいスピードでなっていっていることも事実である。ということは年金受給者と年金支払者のバランスが大きく崩れたときに、国内での消費自体が大きく弱体化する可能性が考えられる。

また総人口推移も現時点で4年連続減少しており、2050年には1億を切り、65歳以上の年代構成比が4割に達すると予測されている。

現在の着物購買人口が多く見積もって仮に100万人として考えると総人口の0.7%であり、今後呉服業界が努力をし、そのシェアを維持したとしても絶対人口減から着物購買人口の総数は減少することになるのだ。そうなると着物自体は一部のファッションとして残ったとしても、間違いなく、現状かろうじて残っている伝統的な染織技術は着物製作だけの市場では絶対に維持できない。これを「経験型経営論」や「根拠なき日本文化推進論」ではこれらの考えは否定されるかもしれないが、現実的には今までさえそこに何もしなかった訳だから、現実的に残る訳がない。

ただ残る可能性はあると私が考えているのが、世界のニーズに合わせたものづくりへの転換だ。染織技術、道具、素材などはそのままにマテリアルを創造し、世界のニーズに合わせたものづくりや、世界のウォンツを生み出すことが日本のモノづくりの継続や後継者増の可能性を残しているし、すでに大きな成功例がいくつも出始めている。

私が世界市場開拓のプロデュースやディレクションをし始めていることも目的はそこだ。もちろんそう簡単にはいかない。だがそれを開拓する仕事をするのは私の大きなミッションの1つとなってきている。

★民法上の成人年齢引き下げの大きな危機感

すでに公職選挙法の改正により投票年齢は18歳となり、特に来年夏に行われる参議院選挙は18歳から投票できるようになる。それに合わせて民法上の成人年齢引き下げも検討されており、自民党の特命委員会では民法上の成人年齢引き下げは合意され、国会へ提言の準備に入っているし、民主党政権時から言われていたことであることと、野党の合意も得やすい案件であるため、国会審議に入れば可決は早いであろう。

そうなると成人式はどうなるのか?ということである。

成人式は1月に成人の日という国民の祝日はあるものの、成人式自体は地方自治体管轄である。財政が未だ安定しない地方自治体は20歳でも問題が各地起きている成人式をさらに年齢を引き下げた上でリスクを負って開催する意味があるのか?という考え方も出ているということも確かではあるが、先に述べた投票年齢引き下げというものは県議、市議などにとっては自己PRの大きな好機であるとも言える。

また国政も含めた多くの政治家は、18歳への対策を打てていないのも現実である。18歳で突然選挙権を持てるようになった訳だから、当然支持政党を持っている割合は少ないし、特定の議員の応援をしているということもほんのひと握りだろう。いくら若い世代の投票率が低いとはいえ、各地方での18歳票は住民票がまだその地方に残っている割合も多いことから強力な票数になり得る可能性高いと誰もが判断している。

そういう観点からすると、成人式を18歳で実施し、地元政治家が顔を売るための絶好の場であるということも考えられる。

そこで我々が考えねばならないのは、仮にもし18歳で成人式を実施するということに変わった場合に何が起こるか??

下記のまとめてみた

*18歳成人式は入試があるために1月実施は困難になる。

*18歳の進学率はH25年調べでは49.9%であり、特に女性の進学率が毎年上昇傾向にあり、同年の調べでは45.6%であることから、学生で下宿先などの地域で住民票を移す割合は低く、大半は選挙時には地元で投票することになる。そのため成人式開催時期は帰省時期を狙う。

*帰省時期として1月以外で考えられるのは5月の大型連休時と8月~9月の夏季休業時期が高い。

*もし夏季休業時に成人式を実施するとしたら振袖着用での出席は現実的ではなくなる。

*もし夏季の成人式になった場合には、呉服店の振袖市場は大きな影響を受ける

*またフォトスタジオなどでの記念写真のみという形が増えて、レンタル比率がさらに拡大し、京都、十日町などの振袖生産量は大打撃となる可能性も高い。

*呉服市場の3分の1は振袖市場と言われており、その市場のさらなる縮小は振袖生産産地のみならず、流通、縫製、加工など着物産地全体に大きな影響を及ぼす。

これらの予測はできれば取り越し苦労であって欲しいし、外れて欲しい。だが、私は独立した6年前から「振袖市場のレンタルと販売の二極化の激化」や「フォトスタジオのさらなる成長による振袖ビジネスの変化」、「成人対象名簿情報の信憑性の低下」や、それによる「振袖ターゲットのふた年度に渡る販促期間の長期化」、「ふりそで産地の生産数の急激な落ち込み」などを「未来現実」として提唱してきたが全てその通りになった。
今回のこの私の未来予測だけは外れて欲しいが、現実的には考えられるので不安視している。

私はクライアント先にはこれらの未来現実予測から常に準備をし、変化への対応を実行し、多くのクライアント先がその変化の中でも業績を伸ばしてきたという自負がある。この問題についてもすでに取り組みを始めているが、正直これが現実になったら非常に厳しい現実が待っているかもしれない。

★未来現実から考えることの重要性が増してきた

この社会全体でさえも、どんどん変化してきている。絶対不変と思われた日本国憲法でさえ大きく変わろうとしているし、集団的自衛権の行使、安保、公選法の年齢引き下げ、そしてこの民法自体の成人年齢引き下げなどがめまぐるしく変わってくる。これからもっと様々なことが変わるだろう。しかし、それを憂いたり批判しているだけでは何も変わらない。

私たちにとって一番重要なのは自助努力によって変化の対応をしていくことだ。今の延長線上をたどることで何が起こるのか?今の市場のままで良いのか?あるいは市場が作れないか?そういったことを考えて「まずアクションを何かしら起こしてみる」ことが重要なのではないかと私自身は思っている。

すべてが変わることを前提に考える時代にすでになっていることを我々の業界は再度意識しなければならない。少なくとも私はそう思っているし、超現実論者でもあるのでその中から結果を出して導いていく。

| | コメント (1) | トラックバック (0)

« 2014年4月 | トップページ | 2015年9月 »