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2016年1月 4日 (月)

2016年頭所感

明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願い致します。 2016年が到来し、21世紀に入ってからちょうど15年がたった計算になります。 もうそんなに経つのかという感覚の方が多いかと思いますが、そのたった15年で呉服業界も大きく変わりました。

2001年当時の呉服小売市場は約6400億円ありましたが、2015年度は2895億円(矢野経済研究所予測値)と半分以下の市場にたった15年でなってしまいました。 15年前、私はNCのバイヤーでしたが、呉服小売市場は当時から「ピークの半分まで落ち込んだ」と言われていましたし、当時から色々な業界の方々がこうすべきだなどというもっともらしい意見が飛び交っていましたが15年経った結果はそこから更に半分まで落ち込むという状況になっています。

しかしながら、15年前と異なる兆しも見え始めています。それは素材別小売規模推移が正絹と綿、合繊、麻などの正絹以外の素材の割合が15年前の2001年は8:2だったのが、現在6:4まで急激に変化してきています。 これは浴衣の1990年代以降の普及による伸びが要因と言えますが、ここ数年はきもの消費の仕方が変化してきて、「所有」から「使用」へ大きく変わってきていることからその傾向は更に強まっています。

「きものを着たい」と思っている人たちは様々な情報を様々な手段で取得し、様々な形でその欲求を満たそうとします。それによって消費者によって選択されるもの、選択される価格、それに加えて創りだされる表現が出てくることでいわゆる新たな価値が創造されて文化が変革されていきます。

いまあらためて「きもの」が少しずつですが再び認識されてきているという現象はその入口の幅が広がってきていることでもあると思います。その答えが2013年の市場規模がわずかながら30数年ぶりに前年比を超えたということだと思います。2014年度は増税反動減で再び減少しましたが、2015年度はたった1.4%ですが回復傾向にあると予測されています。大切なのはここで我々の世代がいかにすべきか?ということだと思います。

ビジネスの根底には客数✕客単価という絶対定義があり、正絹素材の消費が正絹以外の素材消費と拮抗すれば、絶対購買数という客数が必要になります。いままで呉服業界は市場を保つために正絹素材中心の商品供給をしてきました。それによって客単価を保持し、客数減少をカバーしてきました。ですが、売上が減少する前に客数が落ちるということに気づかず、どんどん減っていく客数に対してさらなる客単価を追求し、商品と価格の整合性という「価格の信用」を呉服業界は1990年代後半から2000年にかけて失っていきました。

また、いつの間にか売場は商品を売る場所ではなく、減った客数を何とか集客するための場となり、きものと全く関係のないもので釣るような集客手法が蔓延していき、愛知のあづまやの柴川さんの言葉を借りれば「呉服店は怖い場所」になり、「売り方の信用」まで失うことで新たな顧客獲得も困難になっていきました。 それによって呉服店は「背に腹は代えられない」から「店を維持するため」、「生きていくため」の考え方により強くなっていき、消費者不在の状況がより強くなることで、いつしかその必死の商売が死に至るための商売になっていってしまったのは皆さんがよく知っていることだと思います。

当然その結果ものづくりは更に疲弊し、手頃な価格で購入できる正絹商品の供給が出来なくなることで流通在庫の鮮度は落ち、絶対流通量も確保できなくなり、呉服小売店の催事販売も減少の一途をたどっています。 きものを着たいという消費者がリサイクルや手頃に求められる正絹以外の素材に目が行くことは当然のことですし、それをしっかりと販売できる小売店に客数が集中することは当り前のことです。また呉服屋が魅力がなければ今の時代ネットショップを利用する方に行くのが自然な流れであり、ネットショップの絶対数の増加とネットショップの呉服小売市場構成比がきもの専門店シェアに追いつき、追い越すのは時間の問題でしょう。

暗い話を振り返るようにたどりましたが、ここからが前向きな姿勢を示したいと思います。 とはいえ、上記のような流れがあってもここ数年できものを着たいという人がどんどん増え続けています。またそういう人たちがどういうウォンツを持ち、どういう店を利用したいのか?ということを我々供給側がしっかりと把握して提案していかねばなりません。 そこで小売店に最も必要なことはセグメント化だと思います。簡単にいえば自分はどんな着物屋であるか?ということです。
すべての商品やそれを司るビジネスにセグメント化は存在します。 小売のカテゴリもSC(ショッピングセンター)、SS(スペシャリティストア)、 DS(ディスカウントストア)、Dpt(デパートメントストア)などにわかれていますし、それぞれの特徴に応じて消費者が選択をします。これはアパレルでもファニチャーでも食品などもそれぞれのカテゴリで同じです。 ですが、まだ呉服店はほとんどセグメント化されていません。高級呉服店と普段着呉服店とどう違いが出せているのか?それをどう消費者にプレゼンテーションできているのか?まったくもってわかりません。消費者はたださえわかりにくいと思っている着物を更にわからない小売店に行ったり利用するわけがありません。

これから小売店は自分の店はこうですということをしっかりと位置づけて、それに沿った品揃えとプレゼンテーション、そして知識を身につけ、販売という技術も含め構築していかねば絶対に淘汰されていくことでしょう。 高級なものは売れない?そうではありません。高級なものは売れます。自店に見合った商品を責任ある仕入れで品揃えした上で適正価格を付け、日々知識を修得しきちんとした販売をする。そういう店がまた売れてきています。私もクライアントと一緒に数店舗そういう店を作ってきています。それは経営者がしっかりとその意志を持ち、覚悟を決めることで現実に出来ることなのです。 小売店は絶対に変われます。但しすぐには変われない分、早いうちから革めなければなりません。平成29年4月1日の増税から我々のような業界の消費者からの大選別は大きく変わることでしょう。それまでにどうすべきかを今から考えるべきだと思います。

モノづくりに関しても今年からより一層取り組んでいきます。 職人の高齢化と後継者不足の問題は周知の通り深刻さを増してきています。何故そうなったかは様々な事由がありますが、売りは売りで変えていく必要があるとして、後継者がいないのではなく、後継者を作れないような環境や慣習になっているのではないかと考えています。 これに関しては伝統技術といわれる分野においては染織のみならずでしょうが、若い人でいわゆる伝統技術と言われるモノづくりをしたいという人は山ほどいます。なのに後継者不足が叫ばれるということはどこかに大きなギャップがあると思います。

そういう問題に対し、藤井絞の藤井社長と以前から何回も議論を重ねており、今後行政と民間が連動した染織の未来を考える協議会を作っていくことを検討しており、また日本が現在誇る先進技術の分野での次世代育成の仕方のオペレーションも学び、良い部分を取り入れていきたいと思っています。 また呉服業界への新しく若い人材登用の強化をいかに進めていくかを、全国の和装事業者と各教育機関、きもの専門学校などと連携し、以前から少しずつ進んできている「きものハローワーク構想」をより強化して行きたいと思っています。

そしてそれと同時にきものも含め、日本の染織技術(伝統技術と先進技術の両面)を使用して世界に日本のモノづくりの良さをPRすべく、世界市場創出にも注力していく予定です。 まずはきものアルチザン京都のニューヨークファッションウィークへの世界初のきもの出展、同じくアルチザンのシンガポールデコールショーでの染織技術を使用したテーブルコーディネートによる世界市場ニーズのリサーチ及びビジネス創出、そして今後ヨーロッパでの市場創出に向けての活動も積極的にしていきます。

色々と年頭から長く書きましたが、今まで何度も言ってきたように、現在の情報化社会の中での市場創出は、呉服業界のように村社会的な対策の建て方では何も変わりません。 また今後色々と動けば動くほど抵抗勢力も出てくるでしょうし、大先輩たちからの批判もたくさん受けるでしょう。ですが結果的に業界が良い時に何もしてこなかったツケが回ってきたわけですから、それを「我々の世代が背負って立つ」くらいの気概がなければ何も出来ませんし、何も変われません。幸いなことに素晴らしい仲間に恵まれ、そして素晴らしい応援団がたくさん出来ています。その期待に応えるべく、2015年のキッカケの1年から2016年の実行の年にしていきたいと思います。

小さな業界で真剣にもがく姿をどうぞ笑いながら見守って頂ければ幸いです。 今年もどうぞよろしくお願いいたします。

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