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2017年2月

2017年2月18日 (土)

第9回呉服業界若手経営者の会で伝えたかったもう一つのこと

1月31日に行った第9回目の呉服業界若手経営者の会では最終的に参加者139名、名物の大懇親会では109名という過去最大の規模となった。北は北海道から南は宮崎まで呉服業界の全ての分野の従事者やメディア、国会議員、経済産業省、京都市長、京都市まで政官民のマルチステークホルダーという形になったことは、非常に大きな意味を持つものとなった。

最初のパネルディスカッションは民法の一部改正法案の1つである成人年齢引き下げにおける、各地方自治体での成人式対象年齢が同様に引き下げになった場合にどのようなことが市場や業界のすべてに至るまで起きるのか?という議題であり、非常に重い問題であったが、行政、小売、流通、ものづくりのそれぞれの立場で真剣な議論になった。また会場の参加者の皆さんも大きな危機感と問題意識を持っていただいたことだと感じる。

この問題については法案提出が予想される今国会での動向に注目し、情報収集を密にしながら段階的に様々な方法で働きかけていきたいと思っている。

さて、そのあとに私の講義の中で伝えたかったもう一つのことがある。

非常に重要な内容であったが、あまりに振袖問題がインパクトが強すぎたせいか、参加者の皆様の話題として今ひとつ触れられていないような気がしたのであえてこの場で要点を押さえて記しておきたい。

①時代は既に変わり、次の時代に入っている

 会議の中ではIoTを中心に話したが、「デジタル革命」と言われるものはつい最近のことではなく、1950年~1979年までに当時の通信を中心とした情報伝達の発達のスピードを示した言葉として使われ、同時期に情報とコミニュケーションとテクノロジーの一体化によって急速に発展したICT革命とほぼ同じ意味で使われることが多いが、その頃から既にIT、いわゆるinformation technologyは始まっていたのである。

それがPCの普及によって各個人の情報量が膨大に増え、さらに2007年に発表されたアップル社のiPhoneが圧倒的なプレファレンスとディストリビューションによってスマートフォン含む携帯電話の普及率をあっという間に世界人口カバー率の9割以上まで押し上げた。

情報量も2007年あたりからガラッと変わった。人間が生まれてから数千年の歴史に刻まれた文章やフィルム写真などを含む全てのアナログデータ量よりもデジタルデータ量が上回った。2000年当時のデジタルデータ量は5%くらいでアナログデータ量が95%くらいだったのが、たった10年足らずでデジタルデータ量が99.9%以上でアナログデータ量は現在でも増え続けていてもその割合は0.01%以下という割合だそうだ。

そうなると必然的にその膨大な量の情報の使い方が変わる。いわゆるビッグデータの活用だ。これによって経済もライフスタイルも、全てのインフラも全ておいて変わってくる。時代は既に変わり、完全に新しい時代に移り変わっているのだ。

②呉服小売店の情報活用と経営の現状
 

呉服業界、特に小売店の経営について話を戻そう。

現在の呉服小売市場は2015年時点で2805億円(矢野経済研究所調べ)であり、予測される各チャネル別構成比は大きく分ければチェーン店が3割、専門店が2割、eコマース2割、リサイクル2割、百貨店1割といったところで、2016年は恐らくだがeコマースが専門店の割合を数%抜く形になるかもしれない。eコマースの割合が増えた要因としては単純に店舗数が増加したこともあるが、やはり、データマイニングによるマーケティングと各店舗の独自性にあるだろう。もちろん価格優位性もその要因であることは間違いない。

一方でリアル店舗の小売店はどうだろうか。確かに以前よりWeb活用はHP、SNSなどを中心にある程度積極的になってきてはいるものの、高いレベルで活用できているところはほんの一握りである。多くのスタイルはほとんどが昭和60年~平成初頭までの営業方法と変わらない。その大きな要因は経営者と従業員の平均年齢が圧倒的に高いことにあるだろう。とはいえ、チェーン店などは若い経営者、若い人材が増えてきているが、何れにしても情報活用が有効に行われているとはお世辞にも言い難い。

今は大規模でなく小規模店舗でもPOSを導入して顧客の購買データ等の蓄積はされているが、そのデータを次の営業に生かすためのデータ解析力が残念ながら低い。もちろん催事売り上げや店頭売上のデータは今では労せずしていとも簡単に出るが、そのデータが何を示しているかをあらゆる角度から解析することをせず、単純に出た結果を経験と勘と思い込みでこじつけているのが現実である。

結果分析は単なる現象分析に過ぎないということに気づいていないのだ。

基礎中の基礎になるが、誰に?何が?どのように?売れたのか?そしてなぜそうなったか?を徹底的に深く掘り下げていかないと根本的な対策の種にならないのだ。

これを話すと一冊の本が書けるくらい記さねばならなくなるが、「データは単なる現象に過ぎない」ということをまず全ての小売店経営者が認識し、それらを過去のデータ、販促データ、顧客データ、日々の営業データ、社員の行動データ、そして市場データ、地域経済分析データなどありとあらゆる角度からその現象データを見ることによって「現象が現状に変わり、現実が見えてくる」のである。

兼ねてから呉服業界にはデータアナリストが必要であり、数字を画像にできる存在が必要であると言ってきたがこれからは特にそう感じる。

③世の中には必ず法則が存在する

時代は変わっても唯一変わらないのは「人間」という生体である。

その人間が時代は変わっても経済活動の中で考えることはほとんど同じであるという。こういうと①で述べたことと矛盾するように思えるがそうではない。様々な思想、道具、システムなど時代とともに知識と知恵を使って生きるためのものを作り上げてきた。それによって生体以外の全てのことは進化し続けていることは確かであるが、それでも人間はほぼ同じことを繰り返している。

1700年代後半に活躍したドイツの哲学者ヘーゲルはドイツ観念論を基礎とした弁証法的論理を生み出し、その中で「事物の螺旋的発展の法則」という考え方を提言している。

わかりやすく例えれば、螺旋階段を想像して見ると良い。螺旋階段は横から見ると上に上昇しているが、真上から見ると円に見え、ぐるぐる回っているように見える。

この原理で言えば、「事物は同じことを繰り返すが、繰り返し巡ってくるときは1段も2段もレベルが上がって繰り返される」ということになる。

考えて見るとその法則は様々なビジネスモデルに当てはまる。例えばレンタルビジネス。これは近代にできたビジネスではなく、日本では既に江戸時代に存在した。「損料屋」と呼ばれる商売があり、旅用品や洗濯道具、褌に至るまで貸すことで当時の庶民に利用されていた。これが今ではあらゆるものがビジネス、プライベート問わずそのレンタルの仕方も多様化され、またはセレクトの仕方もあらゆる方法でアプローチできる。

もう一つ例を挙げれば、eラーニング。自分が学びたいものをより専門的に、いつでもどこでもインターネットメディアを通じて利用できる。これも今に始まったことでなく、そのルーツは「寺子屋」だ。当時の寺子屋は身分も様々、状況も様々であり、封建社会の中では生まれた時からある程度将来が見えていた時代だけに、今の学校教育のように全てが同じカリキュラムを学ぶというものではない。それが今の時代に学びたいものを学びたいときに好きなだけ学べるというeラーニングは寺子屋の形がレベルアップし今の時代に合わせた形で再び巡ってきたと言える。

そう言った意味で呉服小売店がその方向性を考えるときに、この「事物の螺旋的発展の法則」のように、昔存在した良いものを今の時代にマッチングさせた形でできるものはないか?という視点で考えることは非常に合理的であるのだ。もちろん自店のデータを深く掘り下げてデータアナリシスをした上でのことは大前提である。

④秩序あるコミュニティ経済による自由流通の必然性

呉服業界は多段階流通によって商品の拡散性を生み出し、それをもってモノづくりを安定させ、各段階での利益創造を確立してきた。また多段階流通は川下から川上への段階的な消費者ニーズの情報伝達の逆流によってそのモノづくりや技術の発達にも役立ってきた。この形はごく最近まで最も機能的な流通構造として維持されてきたことも事実である。

ところが①で述べたように、根本的に消費者の購買行動が大きく変化し、個々の情報量と欲求の形が全くといっていいほど変化したことでこの多段階流通が機能不全状態に陥りつつあるのも残念ながら認めざるを得ない。

筆者は以前から流通と小売の協業論者ではあるし、問屋が不要であるとは微塵も思っていない。それは今でも変わらない。

では購買行動が多様化している中で、いかに流通を機能させるかということがこれからの大きな課題である。着物の絶対量が売れなくなった時代とは言え、問屋のディストリビューション機能はモノづくりを維持させるためには大きな生命線の1つであり、その機能が無くなってしまったら幅広い商品の絶対供給量が低下し、モノづくりの衰退に拍車をかけることは間違いない。

しかしながら、小売店の売上数量の大幅減少と催事偏重型販売による委託中心の取引が、問屋のメーカーに対する委託取引への割合拡大を誘引させ、結果的にメーカーの商品生産の蛇口を閉めてしまっていることに繋がっていることは残念ながら現実である。

これを新しい時代に対応した流通の形を現実的に考えるとしたら、やはり「自由流通」である。ただし勘違いしてはいけないのは「直販の奨励ではない」というである。

市場は高度成長期の「売り手市場」から人口オーナス期に変わったことで起こる消費価値観が左右する「買い手市場」に変化した。そして全ての消費者が全ての情報を自由に取得できる時代になったことで、消費の形は「価値共創市場」に変化したと言える。

価値共創市場とはコミニュケーションによって人々の物の見方や信念を変えて特定の行動へのインセンティブを埋め込んだサービスや仕掛けをするという市場である。これによって近年多くの小売業が取り組み始めたのが「コト消費」と言われるものだ。

売り手と買い手が価値を共有するだけではなく、共に創造する「価値共創」という新しい消費意識が生まれているのだ。それに対応するための形として私は「コミニュティ経済による自由流通構造の強化」が必然的に強まってくると考えている。

そのときに考えるべきは消費者コミニュケーション、小売店コミニュケーション、問屋コミュニケーション、メーカーコミニュケーションという各段階との相互コミニュティの構築と、必要性や各段階のニーズによって段階的取引、直取引の自由流通構造がより進化して、全ての流通が共創と競争によって進化して、結果的に消費者ニーズとものづくりも進化するという流れを作ることが私の考えている流通進化論であり、螺旋的発展の法則に当てはめて言えば、新しい多段階流通の形でもあると考えている。

そしてこれは現に流れとして出来つつあることも必然的な現象であるといえよう。ただし、絶対条件としてはコンプライアンス(法令遵守)に則った形での進化していかねば、今度こそ市場から排除されるということも強く申し上げたい。

「秩序あるコミニュティ経済による自由流通の進化」これが呉服業界若手経営者の会で伝えたかったもう一つのことである。

次回は会期は未定であるが、ざまざまな状況がさらに変化すると思われるので、早い段階で第10回を開催したいと考える。

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