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2017年5月

2017年5月26日 (金)

年商2785億円の株式会社呉服業界という考え方

きものサローネ事務局からアンケートが来た。今年のサローネ会期中に「きもの未来会議」を再び開催するらしい。そういえばその第一回目は私がコーディネーターをしたような気がする。

アンケートの質問の中に新しいカジュアル市場への対応についてどのように考えるかとあった。
正直カジュアルきもの市場はこの6〜7年で大きく変化した。そして様々な企業や人が様々な取り組みやビジネスモデルをあらゆる形で構築してきたことで、ある意味「新しい市場」はすでに生まれていると私は感じているし、それこそ皆真剣に着物の振興やきものファン作りに努力していると感じる。

ただし、その新しい市場がきもの市場全体を押し上げた形になっているかというとそうではない。確かに一瞬だけ2015年のきもの市場は30年ぶりに前年を上回ったが翌年度から再度下降線をたどっている。

着物市場を押し下げている大きな原因の1つに50代の市場の落ち込みだ。昨年だけでも300億円強、きもの市場全体の11%もの割合を占める消費額を失っている。それだけ50代のきもの消費は市場の底支えをしてきたが50代を中心として60代、そして40代も市場減退の数的な要因となっている。
着物産業としては「工芸」と「ファッション」というカテゴリの両輪を回すことは、「ものづくり」と「消費」の両輪回すことに繋がることは間違い無いと思うが、その中で近年の新しいカジュアル市場の多様化はまさに変化への対応によって「所有から使用へ」の消費価値観を顕在化させた。 しかしながら市場の大きな構成要素である40代〜60代のきもの消費は、残念ながら市場創造すべき考えや変化が全く無いまま現在に至り、それらのターゲットからほぼ見放された状態にあると言っても過言では無い。 もちろんその中でも自社の方向性やターゲットが誰か?が明確で、そこからブレず、商品構成においても顧客作りにおいてもしっかりとした取り組みをしているところは、たとえ扱い商品が高額なものであっても、消費者の支持を得ながら堅調に業績を維持または向上させているが、残念ながらそういう企業は圧倒的少数である。 一方で新たなカジュアル市場がこのまま広がっていくかというと私にはどうもそうには思えない。例えばあくまで私見ではあるが、様々なイベントが開催されているが、残念ながらある一定のきものファンでの間でのものというイメージが徐々に強くなってきているように感じるのだ。
私の友人で最近着物に興味を持ち始めた人の何人かと話しても着物のイベントがあるということ自体を知らなかったり、知っていても「着物を着ていかないと相手にされなさそう」というイメージを持っているようだ。
なんの世界でもそうだが、1つのセグメントがある一定数の支持数を獲得すると志向性が同質化し、あるべき多様性を鈍化させる。私は近いうちにそれが起きるのではないかと感じ始めている。せっかく着物をより広めたいという強いビジョンを持った人たちが努力し、行動して動かし始めたのだから、ここからの新たな未来創造をいかにすべきかを考える段階に入ったと思われる。
業界全体の動きとして様々な問題提議が行政や業界団体などで行われているが、流通の問題、価格の問題、トレーサビリティの問題、販売方法問題などを議論しておきながら、結果的には世界遺産申請だの2020何とかだのと全くもってよくわからないランディングポイントを模索していて、現場と現実を本当にの意味で捉えられていないことが多く残念でならない。
まず大切なのは呉服小売市場は日本の小売市場規模全体のたった0.6%しかなく、さらに下降線をたどっているということを現実的に思えるかどうかだ。 私の以前からの持論であるが、「年商2785億円の株式会社呉服業界」という考え方を非常に難しいことではあるが各業界従事者、特に経営者が持てるかどうかだと思う(持てる訳ないと思えばそれまでだが 笑)。30年前は2兆円近くの年商があった企業が今や6分の1以下になったのだ。そんな状況の会社なのに、営業部だけの利益確保のために製造部や加工部を追い詰めるような会社組織は持つはずがないし、マーケットやターゲットを無視した商品政策や意味不明な価格設定が通用するわけがない。また選択と集中がより重要な時代に嗜好性の強い商品を扱う店がごった煮のような商品構成で売り上げと顧客を獲得できるわけがない。
今目の前の世界は小さな小さな小宇宙であって、その小宇宙は成長するためにどうすべきかを考え行動し続けなければ、飽和状態になったり、あるべき方向に進めず別の引力に引っ張られたり、あるいはブラックホールに飲み込まれたりする。 理想的なのはそれぞれの小宇宙が明確にセグメント化されていて、それらが異なる発展の仕方をしていくにしても互いが引力によって関連性が保たれるという形だ。 確かに都合の良い理想論かもしれないが何も理想を持たないより何千倍も良いし、自慢じゃないが今まで実際に色々とやってきた自負がある。 だからこそ次のギアを入れて自分の出来ることをしていこうと強く思うし、活動の場をさらに広げたいと思っている。

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