染織版コネクテッド・インダストリーズ
コネクテッド・インダストリーズは「企業と企業、機械と機械、人と人などがデータを介してつながる世界」として経済産業省の世耕大臣がドイツのインダストリー4.0に対して打ち出したこれからの日本の産業ビジョンだ。
日本のサプライチェーンは一見横軸でしっかりと繋がっているかに見えるが、実は各段階でデータなどの多くの情報や技術がバラバラである事が多く、それが結果的にグローバル視点での競争力で劣ってしまう大きな要因になっているようだ。
この経産省が打ち出したコネクテッド・インダストリーズはデータが繋がり、有効活用によって技術革新や生産向上、技能伝承などを通じて課題を解決し、勝ち筋を見出すという戦略だ。
これを呉服業界に当てはめてみると、呉服の流通は各段階における様々なデータや情報の活用は極めて劣っており、流通における企業間連携は言葉は悪いが「切った張ったの世界」である。
また99%競争領域のロジックで構成されているので、協調領域のロジックはほとんど存在せず、そこからなかなか新しいコトやモノが生まれないし、ましてや勝ち筋は当然の如く全く見えてこない。
呉服業界の流通が機能していた時代は、多段階流通におけるメリットとしてまさに末端の情報がある程度共有され、各問屋もある程度セグメントされていたこともあり、まさに技術革新や生産向上などによって勝ち筋を見出していた。それが市場減少とともにそれが崩れていき、目の前の継続性のない「売れる」「儲かる」手法に多くが画一化していったために現在のような状況になっていった。
私は元々呉服小売業出身であることから独立してから小売店を中心とした経営コンサルティングを主としてきたが、現在ではそれ以外に産地ブランディングや商品企画、海外市場創出などのプロデュースやディレクションなどが多くなってきている。
その中で、今まで全く交流もなく知り合うチャンスさえなかった様々な分野の企業経営者、プロデューサー、アートディレクター、デザイナーなどなど自分でも驚くほど急激にそういった方々との人脈が不思議なことに広がってきている。その多くが伝統工芸を通した地方の活性化や価値創造などで眩しいくらいの、そして私にとって心から羨むような実績と成果を出し続けている社会的にも名実ともに著名な方々なので、多くの気づきや視点の置き方など多くのことをこの歳になってかなり高いレベルで学ぶ環境が広がっている。
そういった中で、ある非常に重要な着物産地の復興のプロデュースのオファーが現地の自治体からきており、受けることになりそうだ。
全国の着物産地はご存知の通り非常に厳しい状況にあり、着物としてのものづくりは高齢化と次世代への伝承がもっとも危惧されている分野である。またその復興策は今まで多くの取り組みはあったものの、知る限りの成功例は認識できていない。もちろん「染め」や「織り」としての技術の単体で見た場合の産地活性化の成功例はここへきて先に述べた方々の素晴らしい力によって輝き始めている事例は確かにあるが、「着物」を主とした産地活性化の成功事例は目に見えての成果はまだ認識できていない。
多くの問題は産地は産地の中での流通上の慣習が長い歴史の中で深く強く根づいており、よそ者がなかなか踏み込めていけない独特の空気感が呉服業界には存在する。またある程度受け入れたとしても着物という商材の回転速度は非常に遅く、また新たなものづくりは大きなコスト上のリスクが伴うため、冷え込んでいる市場の中で時間をかけて育てていくということが極めて出来にくいという状況にある。
もちろん産地には産地の流儀があり、既得権益も存在するので、それを一気にスクラップしてイノベーションを起こそう!などと言っても、「何も知らんくせにそんなことに協力できるか!」と言う空気感になることは必至だ。ちなみに私が京都に移って来た時も多くの業界人からは冷ややかな目で見られていたし、ビジネス提案など誰も受け入れてくれなかったし、それどころか口さえも聞いてもらえないことが多かった。今ではとても考えられないが京都といえども真正面からなんども諦めずにぶつかっていけばなんとかなるものだ(笑)
その中でどのように今回のオファーを受け、復興策のフローチャートを組み立てていくかが私自身としても大きな挑戦となっていくだろう。また取り組んだことが仮に成果が出たとしても、それが一時的なものでなく産地自体の自助力によって継続していくものでなくてはならない。よそ者がわかった顔して勝手に弄って、その期間だけ最大瞬間風速を吹かせて、報酬もらっていなくなるなんてことは絶対にしてはいけないのだ。その産地の自治体からのオファーということはその地元の人たちの血税を使うわけだから、私も血を流す覚悟で取り組まねばならない。
今私が考えていることは(多くは言えないが、、、)キーワードとして
「分解と編集と共有」の3つである。それ以上はここでは言わないが、意味合いが違うかもしれないが、個人的には「染織版コネクテッド・インダストリーズ」と銘打って考え、文字通り命を削ってでも責任を持って取り組んでいく覚悟だ。
私の勝手な夢と志である 「染織で世界を変えたい」を行動に移していく。
そして多分私の家族にはさらに迷惑をかけることだろう。。。。(苦笑)
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